更新日:2025年05月26日
「生理に備えて鉄分をたくさん摂ると、摂りすぎになることはある?」と気になっている方もいるかもしれません。生理のある女性は鉄分不足になりやすく、基本的に普段の食事で摂りすぎになることはあまりないと考えられます。
この記事では、生理中に鉄分の摂りすぎになることはあるか解説します。鉄分不足や過剰摂取による影響のほか、1日の鉄分摂取の推奨量についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
生理のある女性は、鉄分不足になりやすいとされています。体内の鉄分が、生理による出血とともに体の外に排出されてしまうためです。
生理のある女性の場合、以下で解説するように鉄分の摂りすぎはあまり起こらないと考えられるでしょう。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)(p.345)」によると、生理のある成人女性の鉄分摂取の推奨量は、1日あたり10.0~10.5mgです。
しかし、厚生労働省「第1部 栄養素等摂取状況調査の結果(p.29)」によると、日本人女性(20歳以上65歳未満)の1日あたりの鉄分摂取量の平均値は7.2mgで、推奨量を下回っています。
生理のときは鉄分が失われやすいほか、人は生活しているだけで1日約1mgの鉄分が失われるとされています。意識的に鉄分の多い食品を摂らないと、鉄分の推奨量を摂取することは容易ではないでしょう。
生理のある女性は鉄分不足になるリスクが高く、基本的に鉄分の摂りすぎは起こりづらいと考えられます。
参考:
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
厚生労働省「第1部 栄養素等摂取状況調査の結果」
生理のある女性は鉄分不足になりやすいと紹介しましたが、閉経後の女性の場合は摂りすぎないよう注意が必要です。閉経後の女性が鉄分を多く摂りすぎると鉄分の過剰摂取になることがあり、体内の酸化反応を促進させて動脈硬化などが進行する恐れがあります。
後述する年齢別の1日あたりの推奨量を把握して、鉄分の摂取量に気を付けましょう。
ここでは、鉄分不足による身体への主な影響について解説します。
鉄分が不足すると、体が疲れやすくなったりだるくなったりします。鉄分不足によって赤血球の縮小やヘモグロビンの減少が引き起こされ、体内への酸素供給量が減るためです。筋肉に十分な酸素を届けられないため、疲れやすい・だるいといった症状につながります。
鉄分不足による貧血状態では、体内の酸素運搬能が低下しているため、心臓に負荷がかかり、動悸や息切れが生じる恐れがあります。なかには、頭が重く感じる人や、胸に痛みが生じる人もいます。
鉄分不足による貧血は、ゆっくりと進行する特徴があるため、動悸や息切れの症状も少しずつ進行します。
鉄分不足は、睡眠に影響を及ぼす恐れもあります。眠れない、起きられないという症状がある場合は、鉄分不足を疑いましょう。
鉄分は、睡眠に関係するメラトニンという神経物質の合成に必要です。メラトニンが十分に作用しないと、入眠や目覚めを妨げる原因になります。
鉄分が不足すると、爪が変形することがあります。さじ状爪やスプーンネイルといわれるもので、爪の中央がへこみ、先が反り返ってスプーン状になるのが特徴です。
そのほか、鉄分不足の場合、爪の先端が薄くはがれる二枚爪の症状が現れることもあります。
貧血状態を放置すると心臓に負担がかかるため、心不全につながる恐れがあります。
心臓は、貧血でヘモグロビンが少ない状態でも体に酸素を運搬しなければなりません。そして、ヘモグロビンが不足している場合、心臓は心拍数を上げて心拍出量を上げ、血液量を増やそうとします。
心拍数を上げるには、心臓の活動量を増やすことになります。つまり、心臓に負担がかかっている状態で、ひどい場合は心不全になってしまうケースもあるため注意しましょう。
甲状腺ホルモンがしっかりと機能するためには、鉄分が必要です。そのため、鉄分不足が続くと甲状腺機能が低下し、体の新陳代謝が低下したり、不妊や流産・早産につながったりすることがあります。
鉄分不足によって舌の味蕾(みらい)に影響を及ぼし、味覚障害を招く恐れがあるため注意しましょう。
舌の表面にはツブツブの膨らみがあり、その膨らみが味蕾です。味蕾には味覚受容器があり、甘味や塩味、酸味、うま味、苦味などを感知する役割があります。
しかし、鉄分不足になると味蕾が減少するため、味を感じづらくなるとされています。
鉄分不足により体の不調を招くことがありますが、鉄分を摂りすぎても体に悪影響を及ぼすため注意しましょう。
鉄分を摂りすぎると、消化器系に影響を与え、便秘や吐き気、嘔吐などの症状を引き起こす恐れがあります。
鉄過剰症とは、体内に鉄が過剰に溜まり、肝障害や関節の痛みなどの症状が出ることです。鉄分が心臓や肝臓、膵臓、性腺、下垂体などに蓄積されると、臓器障害や下垂体系の機能低下など引き起こす恐れがあるため注意しましょう。
鉄分不足や鉄分の摂りすぎを防ぐために、1日あたりの鉄分摂取量の目安を把握しておきましょう。
耐容上限量は、過剰摂取による健康被害を避けるために設けられた摂取基準です。耐容上限量を超えて栄養素を摂取すると、健康被害が起こるリスクが高まるため注意しましょう。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)(p.366)」では、鉄分の耐容上限量が成人男性の場合50mg、成人女性で40mgとなっていましたが、「日本人の食事摂取基準(2025年版)(p.298))」ではいずれの年齢層においても耐容上限量の設定が見合わせられています。しかし、推奨量を大きく超える鉄分摂取は合理性がなく、健康障害を生じる可能性があるとされています。
参考:
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)(p.345)」によると、1日あたりの鉄分摂取の推奨量は、以下のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性※()内は月経ありの推奨量 |
---|---|---|
6~11か月 | 4.5mg | 4.5mg |
1~2歳 | 4.0mg | 4.0mg |
3~5歳 | 5.0mg | 5.0mg |
6~7歳 | 6.0mg | 6.0mg |
8~9歳 | 7.5mg | 8.0mg |
10~11歳 | 9.5mg | 9.0mg(12.5mg) |
12~14歳 | 9.0mg | 8.0mg(12.5mg) |
15~17歳 | 9.0mg | 6.5mg(11.0mg) |
18~29歳 | 7.0mg | 6.0mg(10.0mg) |
30~49歳 | 7.5mg | 6.0mg(10.5mg) |
50~64歳 | 7.0mg | 6.0mg(10.5mg) |
65~74歳 | 7.0mg | 6.0mg |
75歳以上 | 6.5mg | 5.5mg |
先述のとおり、日本人女性(20歳以上65歳未満)の平均的な鉄分の摂取量は1日あたり7.2mgのため、生理がある場合は、普段の生活で意識的に鉄分を摂取するとよいでしょう。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
鉄分は、食べ物から摂る方法とサプリから摂る方法があります。それぞれ見ていきましょう。
食品に含まれる鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。ヘム鉄は赤身の魚・肉に多く、非ヘム鉄は野菜や穀類、海藻類、豆腐などに多く含まれます。食べ物から鉄分を摂取するにあたって、ヘム鉄と非ヘム鉄の違いを把握しておきましょう。
ヘム鉄は、非ヘム鉄より吸収されやすいとされています。ヘム鉄が多く含まれる食べ物は、次のとおりです。
「レバーはあまり好きではない」という人は、牛肉やかつお、まぐろなどを毎日の献立にバランスよく取り入れて、積極的にヘム鉄を摂取しましょう。
非ヘム鉄は、小豆や枝豆、納豆、ほうれん草、小松菜などに多く含まれます。
非ヘム鉄は体内に吸収されにくい栄養素ですが、ビタミンCやクエン酸、タンパク質などと一緒に摂ると吸収率を上げることが可能です。
鉄分は、サプリメントを活用して補給するのも一つの方法です。鉄分のサプリメントは、ドラッグストアや薬局などで販売されています。
サプリメントはあくまで補助的なものとして捉え、まずは食事から摂取することを心掛けましょう。
生理中の貧血対策として、低用量ピルの服用も有効です。低用量ピルは、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを配合した薬です。
女性の体は、通常、排卵に合わせてエストロゲンの影響で子宮内膜が厚くなります。低用量ピルの服用により脳がエストロゲンを分泌しなくてよいと判断すると、子宮内膜の増殖が抑制され、子宮内膜が薄く保たれて生理の経血量が減ります。経血量が減ることで、生理に伴う貧血が改善されるでしょう。
低用量ピルは、産婦人科や婦人科で処方してもらえます。貧血対策以外にも、生理痛をやわらげる効果もあるため、生理による貧血や月経痛などでお悩みの場合は、病院で相談するとよいでしょう。
忙しくて病院に行く時間がとれない場合は、オンライン診療をご検討ください。オンライン診療のメリットは、次のような点です。
時間がない人や病院で知り合いに会わないか心配な人は、オンライン診療も検討してみましょう。
生理のある女性は、鉄分不足になりやすいとされています。日本人女性(20歳以上65歳未満)の1日あたりの鉄分摂取量の平均値は推奨量を下回っており、普段の食事で鉄分の摂りすぎになることはあまりないと考えられるでしょう。
なお、鉄分不足や摂りすぎは体に影響を及ぼすため、注意が必要です。1日の鉄分の推奨量を把握して、適切な量を摂取することを心がけましょう。
根本的な生理中の貧血対策を行いたい場合は、低用量ピルの服用も有効です。
通院する時間がない、人目を気にせず受診したいという場合は、オンライン診療も検討してみてはいかがでしょうか。
レバクリでは、ピルのオンライン処方を行っています。場所や時間にとらわれずにビデオチャットや電話で診察を受けられ、処方された薬は自宅など好きな場所に届きます。診察料は無料なので、ぜひご予約ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました