更新日:2025年08月04日
「生理が始まるとお腹が痛い」「生理痛を和らげる方法が分からない」と悩んでいる方もいるでしょう。生理痛の原因としてプロスタグランジンの過剰生成が挙げられ、痛みを緩和するには身体を温めたり薬を服用したりするのが有効です。
この記事では、生理中の腹痛の原因やお腹が痛いときに効果的な5つのセルフケア、症状がつらいときに有効な薬などについて解説します。
生理前や生理中に、お腹が痛いと悩んでいる方もいるでしょう。生理前や生理中にお腹が痛くなるのは、プロスタグランジンという物質の過剰生成が原因だと考えられます。
プロスタグランジンによってお腹が痛いと感じるのは、子宮の収縮作用や胃腸への作用があるためです。ここではまず、それぞれの痛みが発生するメカニズムを確認しましょう。
生理前や生理中は、子宮の収縮作用によってお腹が痛いと感じることがあります。生理における下腹部痛は、不要になった子宮内膜を体外に排出するために、プロスタグランジンが生成されることで引き起こされます。
プロスタグランジンは、妊娠が成立しなかったときに子宮内をリセットするために重要な役割を果たす物質です。しかし、ホルモンバランスの乱れによりプロスタグランジンが過剰に生成されると、子宮の収縮作用が強くなり、下腹部痛が発生します。
プロスタグランジンには血管を収縮させる作用もあるため、血管の収縮により腰回りの血流が悪化すると、下腹部全体のだるさや鈍痛、腰痛につながります。
生理前や生理中は、お腹が痛いと感じるほか、胃や腸が不調になり下痢や吐き気を催すこともあるでしょう。これは、プロスタグランジンが子宮だけでなく胃や腸にも作用するからです。
プロスタグランジンによって胃や腸が収縮すると、不快感のほか吐き気や下痢が起こることがあります。
風邪や食中毒などに心当たりがなく、生理前や生理中にいつもお腹が痛いと感じたり胃腸の調子が悪くなったりする方は、プロスタグランジンによる不調の可能性があることを覚えておきましょう。
生理中にお腹が痛い場合、以下の5つのセルフケアで改善する可能性があります。
それぞれのセルフケア方法を確認し、実践できることから取り入れましょう。
生理中にお腹が痛い場合、身体を温めることで血流が改善し、下腹部のだるさや痛みを軽減できると考えられます。
身体を温める方法は、以下のとおりです。
日ごろから身体を冷やさない生活を心がけ、生理前や生理中のお腹の痛みを予防しましょう。
胃腸に負担がかかると、下痢や吐き気を催しやすくなります。胃腸の調子を崩しやすい生理前や生理中は、消化のよい温かい食べ物をとるようにしましょう。
生理中にお腹が痛いと感じる状況になるのを防ぐため、生理中に避けたほうがよい食事・飲み物は以下のとおりです。
食事内容に気を付けるほか、食べすぎないよう注意することも、胃腸の調子を整えるために大切です。
生活習慣の乱れにより身体が疲れていると、生理前や生理中に現れる不快症状が悪化する可能性があります。生活習慣を整えるために、以下を心がけましょう。
生活習慣を改善することで、自律神経を整えられます。自律神経は女性ホルモンの分泌に関わっているため、睡眠不足や偏った食事などによって自律神経が乱れると、生理中や生理前の身体の不調が悪化する恐れがあります。
自律神経が正常に働く生活を心がけ、ホルモンバランスの安定と生理痛の軽減を目指しましょう。
ストレスも、自律神経の乱れを引き起こす原因の1つといわれています。そのため、心身に強いストレスがかかると、生理中の腹痛がひどくなる可能性があります。
生理中は心身ともに無理をしない生活を心掛け、お腹が痛いときは休息をとりましょう。ストレス解消のために趣味の時間をとるなど、リラックスして過ごすことも大切です。
生理中にお腹が痛い場合、腹痛を軽減できるとされる姿勢の一例を、以下に紹介します。
そのほか、長時間同じ姿勢でいると血流の悪化を招き、お腹の痛みが強くなる可能性があります。動くことが少ない立ち仕事やデスクワークでお腹の痛みが悪化したときは、ストレッチなどで軽く身体を動かし、血流を改善することが大切です。
なお、お腹の痛みが軽減する姿勢は人によって異なります。ここで紹介した例を参考に、自分に合う姿勢を見つけてみてください。
セルフケアをしてもお腹が痛い、日常生活に影響が出るほど痛みが強いといった場合は、薬の服用も選択肢です。
生理中のお腹の痛みは、市販薬でもある程度の効果は期待できます。ただし、症状に合わせてより効果的に治療したい場合は、病院を受診して医師に処方された薬を飲むのが得策です。
ここでは、生理でお腹が痛いときの鎮痛剤・下痢止めの選び方や、低用量ピルについて解説します。
鎮痛剤は、生理中の下腹部痛を緩和する効果があります。ただし、一口に鎮痛剤といっても、痛みの症状や体質によって選ぶ成分が変わります。症状に合った薬を選んで服用することで、より効果的に症状を緩和できるでしょう。
生理中にお腹が痛いとき、症状や体質別におすすめの成分の種類は、以下のとおりです。
症状・体質 | 主な成分 | 特徴 |
---|---|---|
下腹部痛のみ | ・イブプロフェン | ・痛みのもとであるプロスタグランジンの発生を抑制し、下腹部痛を抑える ・子宮への移行性が高いため、生理痛への効果が高い |
胃が弱い | ・アセトアミノフェン | ・胃が弱い方は、胃腸への影響が少ないアセトアミノフェンを選ぶ ・イブプロフェンやロキソプロフェンは、胃腸障害の原因になるため注意が必要 |
吐き気がある | ・イブプロフェン ・ロキソプロフェン | ・プロスタグランジンが胃腸に作用して吐き気が出ているときは、プロスタグランジンの発生を抑えるイブプロフェンやロキソプロフェンが効果的 ・イブプロフェンやロキソプロフェンは胃腸障害の原因となるため、胃粘膜の保護成分を含む薬を飲むとよい |
生理前や生理中にお腹が痛いと感じており、下痢の症状があるときは、下痢止めの服用も選択肢です。生理中の下痢には、ブチルスコポラミン臭化物が含まれる薬が効果的とされています。
ブチルスコポラミン臭化物には、子宮や腸管の過度な収縮を抑える作用があるため、生理中の下痢への効果が期待できるでしょう。
なお、生理中に下痢が止まらないとき、内科の受診を検討する方もいるかもしれませんが、生理中や生理前のみに症状が出る場合は、婦人科・産婦人科で相談してもよいでしょう。
低用量ピルも、生理中のお腹の痛みを軽減する薬の1つです。低用量ピルには、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が配合されています。
鎮痛剤や下痢止めは、発生した症状を軽くするためのものです。一方、低用量ピルは服用により女性ホルモンの分泌を抑制することで、排卵を抑えて子宮内膜が厚くなるのを防ぎます。そのため、腹痛の原因となるプロスタグランジンの分泌を抑えられます。
低用量ピルは市販されておらず医師の処方が必要な医療用医薬品のため、服用を希望する方は医療機関で受診しましょう。
病院に直接足を運ぶほか、オンライン診療サービスの活用により、低用量ピルを処方してもらえます。オンライン診療であれば、場所や時間にとらわれず、ビデオチャットや電話で診察を受けられます。忙しくて通院する時間がとれない方は、ぜひ利用を検討しましょう。
生理中にお腹の痛み以外にも気になる症状が出ている、セルフケアをしてもお腹が痛い状況が改善しないといったときは、病気が隠れているかもしれません。
生理痛がつらい方や生理中に起こる症状に不安を感じる方は、医師に相談してみましょう。
生理中に鎮痛剤を飲んでも腹痛が改善しないときや、日常生活に支障が出るほどお腹が痛いときは、月経困難症の可能性があります。月経困難症は、子宮や卵巣などに病気がない機能性月経困難症と、原因となる病気がある器質性月経困難症の2つに大別されます。
ここでは、器質性月経困難症の原因となる主な病気を3つ紹介します。
子宮内膜症とは、子宮の内側以外の場所に子宮内膜が発生する病気です。20~30代で発生することが多く、ピークは30~34歳頃といわれています。症状は生理のたびに進行し、生理がある間は完治することはありません。
子宮内膜症は、不妊の原因にもなります。ひどい生理痛のほか、生理時以外の腰痛や下腹部痛、排便痛、性交痛などがみられる場合は、速やかに医師の診察を受けましょう。
子宮腺筋症とは、子宮内膜によく似た組織が子宮筋層内にできる病気です。発症する原因は解明されていませんが、帝王切開や筋腫の手術などの経験がある方に多くみられるようです。
子宮腺筋症は不妊や流産、早産の原因となります。強い月経痛のほか、月経過多、貧血、月経期以外の腹痛、排便痛、性交痛などの症状があらわれます。
子宮筋腫とは、子宮にできる良性の腫瘍のことです。30歳以上の女性の約20~30%にみられるとされ、決して珍しい病気ではありません。子宮筋腫は複数できることが多く、数や大きさは人によって異なります。
子宮筋腫は、不妊や流産の原因になります。ひどい月経痛以外にも月経過多、不正出血、貧血、頻尿、腰痛などの症状が出ることがあります。
生理中のお腹の痛みで病院を受診する目安は、以下のとおりです。
これらの症状がみられるときは、早めに病院を受診し、医師に相談しましょう。
医師に相談したいものの、仕事や家事、育児などで忙しく、婦人科の病院に行く時間がとれない方もいるでしょう。ビデオチャットや電話で診察を受けられるオンライン診療であれば、時間がない方もスムーズに医師に相談できます。忙しくて通院の時間がとれない方は、ぜひ利用を検討しましょう。
生理前や生理中にお腹が痛いのは、プロスタグランジンの過剰生成が原因だと考えられます。プロスタグランジンの分泌により子宮や胃腸が収縮することで、下腹部痛や下痢を伴う腹痛を引き起こします。
生理中のお腹の痛みを軽減するには、身体を温めたり痛みが軽減する姿勢をとったりするセルフケアが有効です。セルフケアを行ってもお腹が痛いときは、薬の服用も検討しましょう。
市販薬を飲んでも腹痛が改善しない、生理の日数が著しく長い・短いといった場合は、子宮の病気が隠れている場合もあります。症状に不安を感じるときは、医師の診察を受けると安心です。
オンライン診療サービスを提供するレバクリでは、低用量ピルのオンライン処方を行っています。場所や時間にとらわれず、ビデオチャットや電話で診察が受けられ、処方された薬は自宅など好きな場所に届きます。忙しくて通院する時間がとれない方は、ぜひ利用をご検討ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました