更新日:2025年08月04日
「生理前に筋肉痛のような痛みがある」「生理前の下腹部痛がいつもより痛い」と感じている人もいるかもしれません。生理前に感じる下腹部や子宮の痛みは、排卵期に起こる「排卵痛」や、「月経前症候群(PMS)」に関連していると考えられます。生理前の痛みは一時的なものもあれば、重症化する場合もあるため、痛みの原因を考え、状況に応じて受診することが大切です。
本記事では、生理前の痛みの原因や生理以外で考えられる下腹部痛の原因、生理前の痛みの緩和方法などについて解説します。
生理前の痛みは、排卵痛の可能性があります。排卵痛は生理周期における自然な現象で、症状の有無や痛みの強さには個人差があります。ただし、注意が必要な痛みもあるため、日頃から自分の症状を把握しておくことが大切です。排卵痛の主な症状や痛みが生じる原因について、見ていきましょう。
排卵痛とは、排卵期に生じる痛みのことを指します。排卵痛は病名ではなく、あくまでも痛みの呼び名です。生理周期は卵胞期・排卵期・黄体期・月経期の4つの期間に分けられます。
排卵時は、卵巣の壁を突き破って卵子が卵管に放出されます。その際に感じるのが、排卵痛です。排卵は左右の卵巣のどちらかで行われるため、片側だけ痛みやすくなります。
なお、排卵痛と生理痛は、別の原因で起こる痛みです。生理痛は、子宮内膜を体外に押し出すために生成される、プロスタグランジンという物質の影響で引き起こされます。
生理前の痛みとして考えられる排卵痛の代表的な症状は、下腹部や腰周辺で感じるチクチクとした痛みです。特に、子宮や卵巣部分に張りを伴う痛みが生じることがあります。場合によっては、ズキズキとした痛みを感じることもあるでしょう。
生理前の痛みの症状の現れ方には個人差があり、腹痛に加えて腰痛を覚える人もいます。また、排卵痛に伴って出血・むくみ・冷え・吐き気・めまいなどが起こるケースもあるようです。
生理前の痛みで注意が必要なものには、いくつか特徴があります。排卵痛が強い、生理前の痛みが年々強くなっている、生理痛もひどいといった場合は、子宮内膜症などの病気が考えられます。
子宮内膜症は、子宮の内側以外の場所で子宮内膜に似た組織が発生する疾患です。卵巣やダグラス窩(子宮後壁と直腸前壁の間に形成された窪み)、卵管などに発生しやすいとされています。子宮内膜症は、不妊の原因となることがあります。
まれに、排卵時の卵巣からの出血が過剰になり、お腹の中で大量出血を引き起こすことがあります。「生理前の痛みがあるときに痛み止めを飲んでも効かない」「生理前の痛みで気分が悪くなる」「ふらつきが生じる」といった場合は、速やかに医療機関で診察を受けましょう。
生理に関連する症状のひとつに、PMS(月経前症候群)があります。PMSは、生理の3〜10日ほど前から生理開始にかけて不快症状が生じる状態を指します。身体的な症状には、下腹部痛や胸の張り、腰痛、むくみなどがあり、精神的な症状にはイライラや落ち込み、集中力の低下などがあります。
PMSの症状の有無や程度には個人差があり、同じ人でも年齢やライフステージによって変化します。20代では憂鬱・気分の落ち込みといった症状が現れやすく、30代ではイライラ感や身体的な症状が出やすくなるのが特徴です。
PMSの原因は完全には解明されていませんが、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの急激な変動が影響しているとされています。また、セロトニンの低下も関与していると考えられており、気分の落ち込みや不安感などを引き起こすとされています。
生理痛は、月経期間中に下腹部の痛みとして現れ、吐き気や頭痛、倦怠感などの症状を伴うことがあります。ここでは、生理痛の原因と主な症状について解説します。
月経期間中に下腹部痛や腰痛として現れる生理痛は、子宮内膜で生成されたプロスタグランジンという物質が関係しています。プロスタグランジンは、子宮を収縮させる作用がある物質です。
生理期間中には、妊娠準備のために厚くなった子宮内膜がはがれ落ち、血液とともに排出されます。その過程で、経血をスムーズに排出するために子宮が収縮運動をします。プロスタグランジンの分泌量が過剰になると子宮収縮が強くなり、痛みが増します。
生理痛は下腹部の痛みや腰痛が主な症状です。生理痛に伴い、吐き気・めまい・倦怠感などの不快な症状が現れることもあります。また、下痢や便秘、多汗、むくみ、イライラといった症状が出る場合もあるでしょう。症状が出るタイミングには個人差があるものの、とくに生理の始まる前日から生理2〜3日目にかけて現れやすい傾向があります。
生理痛が強く学業や仕事など日常生活に支障をきたす場合は、「月経困難症」の可能性があります。月経困難症とは、生理期間中の下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気などにより、日常生活に支障をきたす状態です。「生理痛があるときに鎮痛剤を飲んでも効かない」「生理のたびに痛みがひどくなる」「生理痛がつらくて毎回寝込んでしまう」といった場合は、我慢せず婦人科を受診しましょう。
下腹部痛や子宮の痛みは、生理痛以外にもさまざまな原因が考えられます。主に、消化器系の病気や尿路疾患、婦人科疾患です。ここではそれぞれの疾患について見ていきましょう。
腸と子宮は体内で隣接しているため、下腹部痛や子宮の痛みと感じても、実際には消化器系の病気が原因の場合もあります。「便秘」「虫垂炎」「大腸憩室炎」「急性腸炎」が代表的な例です。生理前や生理期間中以外にも腹部の痛みを感じる場合、消化器系の病気の可能性があるため、消化器内科で受診しましょう。
便秘とは、排便回数が少ない・便が硬い・残便感があるといった状態を指します。大腸に便やガスが溜まることで腸が圧迫され、痛みや張りを引き起こします。不規則な生活や運動不足、ストレスが主な原因ですが、大腸がんや腸閉塞といった深刻な疾患が潜んでいるケースもあります。
虫垂炎は、盲腸の先端にある虫垂が炎症を起こす疾患です。みぞおちやおへその周辺で始まった痛みが、数時間で右下腹部に移動する特徴があります。放置すると炎症が広がり、重篤な状態を招くため、初期の段階で医療機関を受診することが重要です。
大腸憩室炎は、大腸壁の一部が袋状に突出した「憩室」で炎症が起きる疾患です。憩室内で便が溜まることで細菌が増殖し、強い腹痛や発熱が起こります。進行すると腸管に穴が空く危険性もあるため、早期治療が大切です。
急性腸炎は、ウイルスや細菌、食品中の毒素などが原因で小腸や大腸に炎症を引き起こす疾患です。刺すような痛みや下痢、嘔吐が主な症状として挙げられます。痛みや嘔吐の症状が続いている、脱水症の疑いがあるといったときは、受診しましょう。
下腹部のチクチクとした痛みや排尿時の不快感がある場合、尿路疾患が原因の可能性もあります。なかでも、細菌性膀胱炎は女性によく見られる疾患です。女性の尿道は男性よりも短く、細菌が膀胱内に侵入しやすい構造です。
細菌性膀胱炎では、頻尿や排尿時の痛み、下腹部の不快感が現れ、進行すると残尿感や焼け付く痛み、血尿が伴うこともあります。また、尿を我慢したり、疲労で免疫力が低下したりすると発症リスクが高まるため、注意しましょう。
生理以外で考えられる下腹部痛や子宮の痛みの原因として、子宮頸管炎や子宮筋腫などの婦人科疾患が考えられます。婦人科疾患による痛みは、放置すると悪化する恐れがあります。痛みがあるときは我慢せずに婦人科を受診することが大切です。
子宮頸管炎は、性交時の痛みや腰痛のほか、膿のようなおりものや下腹部の張りが生じる疾患です。炎症が進行すると、高熱や激しい腹痛を伴うこともあります。
子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍で、30代以上の女性に多く見られます。鈍い圧迫感や、時間の経過とともに痛みが強くなる点が特徴です。不正出血や頻尿、貧血などの症状を伴うことがあります。子宮筋腫の大きさやできた場所により、症状が異なる点も特徴です。
生理前の痛みや生理痛を和らげる方法は、以下のとおりです。
ここでは、それぞれについて解説します。
生理前の痛みや生理痛を和らげるためには、身体を温めることが効果的です。身体が冷えると、生理前の痛みや生理痛が悪化する恐れがあります。カイロや腹巻き、ひざ掛けなどを使ってお腹や骨盤周辺を温めることで、血流が改善され、痛みが緩和されるでしょう。
また、入浴の際は、シャワーで済ませるのではなく湯船に浸かったり足湯をしたりすることで、血行が促進されて冷えにくい体づくりにつながります。
生理前の痛みや生理痛を予防するためには、冷たい飲み物や食事を避け、夏場は冷房を控えめにすることも大切です。普段から体を冷やさないことを意識し、症状の軽減を図りましょう。
適度な運動は、生理前の痛みや生理痛の緩和に効果的です。運動によって血流が改善されると体温が上昇し、筋肉の緊張がほぐれることで生理前の痛みや生理痛の緩和につながるでしょう。生理前の痛みや生理痛があるときにおすすめの運動は、ストレッチや軽いウォーキング、ヨガなどです。
適度な運動は、ストレス発散にもつながり、PMSの精神的な症状の軽減にも役立ちます。ただし、生理前の痛みや生理痛があるときの運動は決して無理をせず、体調が悪いときは休むことを優先しましょう。
食生活の改善は、生理前の痛みや生理痛の症状を和らげる効果が期待できます。冷たい飲み物や砂糖を多く含むお菓子、カフェイン・アルコール飲料などは、体を冷やしたり血流を悪化させたりする原因となるため、過度な摂取は控えましょう。
一方で、青魚やナッツ類を積極的に取り入れることがおすすめです。青魚に含まれるDHA・EPAは痛みの原因となるプロスタグランジンの作用を減少させる効果があるといわれています。また、ナッツ類に豊富なマグネシウムはセロトニンの生成に必要で、摂取することで気分の落ち込みや倦怠感の緩和に役立ちます。バランスのよい食生活を意識しつつ、これらの栄養素・食材を取り入れ、症状の軽減につなげましょう。
生理前の痛みや生理痛を軽減するためには、リラックスして過ごすことが大切です。ストレスは症状を悪化させる原因となるため、アロマテラピーやハーブティーなどを取り入れ、心身を落ち着かせるための工夫をしましょう。
例えば、ラベンダーやクラリセージのエッセンシャルオイルを使ったアロマテラピーは、リラックス効果が期待できます。そのほか、趣味の時間を楽しむことや、質のよい睡眠を心がけることも効果的です。自分に合った方法でリラックスする時間をつくりましょう。
生理前の痛みや生理痛がつらい場合、市販の鎮痛薬を服用することで、痛みを一時的に緩和できるでしょう。ただし、鎮痛薬は症状を和らげるためのものであり、根本的に治療できるわけではありません。
生理前の痛みや生理痛がつらい場合は、低用量ピルの服用がおすすめです。低用量ピルには女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが配合されており、服用することでホルモンバランスを整えられ、生理前の痛みや生理痛、PMSの症状軽減を図れます。
忙しい人は、オンラインクリニックの活用を検討してみてはいかがでしょうか。自宅にいながら診察を受けられ、症状に応じた治療法を検討できます。医療機関によっては処方された薬が自宅に配送され、薬局に行く手間を省ける点もメリットです。
生理前の痛みは、排卵痛の可能性があります。また、PMSにより、生理前の痛みが生じている場合もあるでしょう。生理に関係なく腹部に痛みがある場合、消化器系疾患や尿路疾患、婦人科疾患などが原因の場合もあります。痛みが続いているときは症状に応じて診療科を選び、受診しましょう。
生理前の痛みや生理痛がつらい場合、低用量ピルの服用がおすすめです。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました