更新日:2025年09月03日
「生理中に下痢になるのはなぜ?」と、疑問を抱えている方もいるかもしれません。生理中の下痢は、プロスタグランジンという物質によって引き起こされている可能性があります。下痢の症状が出た際は適切に対処するとともに、日ごろから予防策をとることで、症状の悪化を防げるでしょう。
本記事では、生理中に下痢になる原因について解説します。また、生理中の下痢への対処法や予防法、生理中の下痢がひどい場合に疑われる病気も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
生理中の下痢は、プロスタグランジンという物質が関係していると考えられています。
プロスタグランジンは、子宮を収縮させ、不要になった子宮内膜を体外に排出する働きがあります。プロスタグランジンには腸を収縮させる働きもあるため、過剰に分泌されると下痢の症状が出ることがあるでしょう。
生理中に下痢になったときは、腸への刺激を抑えることが大切です。また、脱水症にならないよう、こまめに水分補給するとよいでしょう。
ここでは、生理中に下痢になったときの対処法をご紹介します。
生理中に下痢が起きた場合、腸の負担を減らすために消化のよい食べ物を摂取しましょう。胃腸に優しい食事を心がけることで、腸の過剰な動きを抑えられ、症状の緩和につながります。
主食には、おかゆやうどんがおすすめです。とくに、おかゆは水分が多く、脱水症を防ぐ効果も期待できます。
おかずには、卵や豆腐、白身魚、鶏のささみなど、消化のよいタンパク質を中心に選びましょう。また、にんじんやジャガイモ、大根などの根菜類を使った煮込み料理は、火を通すことで食物繊維が柔らかくなり、腸への負担が少なくなります。さらに、りんごやバナナは消化のよい果物で、生理中の下痢による栄養不足を補うのにおすすめです。
一方で、食物繊維の多い食事や脂肪分の多い食べ物は腸を刺激し、症状を悪化させる可能性があるため、下痢を起こしている間は控えたほうがよいでしょう。
生理中に下痢が続くと、体内から多くの水分が排出され、脱水症のリスクが高まります。 とくに、下痢による脱水症は短時間で起こることがあるため、早めの対策が必要です。
下痢によって失われた水分と電解質を効率的に補給するなら、経口補水液がおすすめです。経口補水液は、体に必要なナトリウムやカリウムをバランスよく含んでおり、水分をスムーズに吸収できます。そのほか、具材を細かくしたスープや糖分の少ないジュース、スポーツ飲料なども水分補給に役立つでしょう。
ただし、一度に大量の水分を摂取すると、腸が刺激されて下痢を悪化させる可能性があるため、少量をこまめに飲むことが大切です。また、アルコールやカフェインを含む飲み物は腸の動きを活発にする恐れがあるため、下痢の間は摂取を控えたほうがよいでしょう。
通勤や通学など外出中の下痢が心配な場合は、下痢止め薬を携帯しておくとよいでしょう。とくに水なしでも服用できる下痢止め薬であれば、症状が表れたときにすみやかに対処できます。
生理中に起こる腹痛・胃痛・吐き気・下痢などの症状は、「プロスタグランジン」によって引き起こされていると考えられています。そのため下痢止めを選ぶ際は、プロスタグランジンの分泌を抑制する成分が配合される薬を選びましょう。
生理中の下痢を予防するには、以下の方法が効果的です。
冷え対策や低用量ピルの服用は、生理痛など下痢以外の症状緩和にも役立つため、積極的に取り入れるとよいでしょう。
生理中の下痢を予防するためには、腸への刺激が強い食べ物を控えることが大切です。とくに、辛いものや冷たい飲食物は腸に刺激を与えて下痢を引き起こしやすいため、生理中以外もできる限り控えるようにしましょう。
生理中の下痢予防には、冷え対策も効果的です。生理中はホルモンバランスの影響で体温が下がりやすく、とくにお腹や腰回りが冷えると腸の働きが鈍くなり、下痢を引き起こしやすくなります。
冷え対策として、使い捨てカイロや腹巻き、毛布などを活用してお腹や骨盤周辺を温めることで、血流が促進され、腸の働きを促進できます。
また、ゆっくり入浴して体を芯から温めるのもおすすめです。ぬるめのお湯にじっくり浸かることで全身の血流が良くなり、冷えの解消に役立ちます。とくに夏場はシャワーだけで済ませる人もいるかもしれませんが、生理中はできるだけ湯船に浸かり、体の内側から温めることを意識しましょう。
生理中の下痢を予防する方法の1つとして、低用量ピルの服用が挙げられます。低用量ピルは、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンを配合した薬です。
低用量ピルを服用すると、ホルモンバランスが一定に保たれ、排卵が抑制されます。排卵が止まることで子宮内膜が厚くならないため、生理直前から生理中にかけて増加するプロスタグランジンの生成を抑えられ、下痢の症状が和らぐと考えられます。
低用量ピルは、医療機関を受診し、処方を受けることで服用できます。
生理のたびに下痢の症状が出たり、腹痛を伴ったりする場合には、病気が隠れている可能性があるため、医療機関の受診を検討しましょう。
ここからは、生理中の下痢がひどい場合に疑われる病気について解説します。
生理中に下腹部痛や腰痛、頭痛、悪心、嘔吐などの症状が強く表れ、生理が終わると症状が軽減または消失する場合、月経困難症が疑われます。月経困難症は、「器質性月経困難症」と「機能性月経困難症」に分類されます。
器質性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの疾患に伴って引き起こされます。器質性月経困難症の場合、原則として原因となっている疾患の治療を行います。
原因となる疾患がない場合は、機能性月経困難症です。治療法としては、痛みを和らげる鎮痛薬や子宮の過度な収縮を抑える子宮収縮抑制薬、ホルモンバランスを整える低用量ピル、体質改善を目的とした漢方薬などが使用されます。
生理中にひどい下痢が続く場合は、子宮内膜症が原因となっている場合があります。
子宮内膜症とは、子宮で発育するはずの内膜組織が、骨盤の中など子宮以外の臓器で発育してしまう病気です。主な症状は、生理中の下痢以外に、排卵痛や生理痛、性交痛、過多月経など多岐にわたります。
子宮内膜症は不妊症の原因にもなるため、早期発見・早期治療が重要です。重症度や年齢、妊娠の希望などに応じて、ホルモン治療や外科手術などが行われます。
生理中に下痢が続く場合、その原因として過敏性腸症候群の可能性もあります。過敏性腸症候群は、腸に明らかな病変や内分泌異常が見られないにもかかわらず、下腹部痛や腹部膨満感、便秘、下痢などの症状が数か月以上続く病気のことです。
主な症状として、腹痛や腹部の不快感、便通異常が挙げられます。便通異常には、下痢が続くタイプや便秘が続くタイプ、下痢と便秘が交互に表れるタイプがあり、生理中に症状が悪化するケースも少なくありません。
過敏性腸症候群はストレスや自律神経の乱れと関係が深いため、リラックスできる環境づくりや生活習慣の見直しが大切です。また、薬物治療による改善も期待できるため、下痢の症状が続く場合には胃腸科や消化器内科へ相談してみるのもよいでしょう。
生理中の下痢には、プロスタグランジンの分泌が関係していると考えられています。生理中の下痢を予防するためには、刺激の強い食べ物を控えたり、冷え対策を行ったりするとよいでしょう。加えて、低用量ピルの服用によってホルモンバランスを一定に保ち、プロスタグランジンの過剰分泌を抑えるのも効果的です。ただし、生理中の下痢には病気が隠れている可能性もあるため、下痢が続く場合には医療機関の受診を検討しましょう。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました