更新日:2025年09月03日
生理前に水っぽいおりものが増えると、不安に感じる人も多いでしょう。生理前のおりものは一般的に白濁しており、粘り気があるとされています。しかし、おりもの色や量、形状には個人差があるため、身体の異変に気づけるよう、日頃からおりものの状態を観察しておくことが大切です。
本記事では、生理前や妊娠初期のおりものの特徴と、水っぽいおりものが出る原因について解説します。
おりものとは、腟や子宮から出る分泌物のことです。古い細胞や細菌などが混ざり合っています。腟内を清潔に保ち、病原菌の侵入を防ぐほか、受精をサポートする役割も担っています。
おりものの量や形状は、女性ホルモンの影響を受けて変化します。特に、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が増減することで、おりものの状態は生理周期に応じて変わるのが特徴です。
ここでは、生理直後から排卵期、黄体期にかけてのおりものの変化について解説します。それぞれの時期の特徴を理解し、体調管理に役立てましょう。
生理直後から卵胞期にかけて、おりものは少量でさらさらとした状態です。この時期のおりものは、透明または乳白色ですが、生理直後は腟内に残った経血と混ざり、茶色っぽく見える場合もあります。
排卵期が近づくにつれて、エストロゲンの分泌量が増加していきます。おりものは半透明で粘り気を帯び、量が次第に増加します。
排卵期のおりものは、量が多くよく伸びるのが特徴です。
排卵日が近づくとエストロゲンの分泌が盛んになるため、卵白のようにトロっとした透明なおりものが多くなります。指で広げると、糸を引くほどよく伸びることがあるでしょう。
排卵日を過ぎると、おりものの粘り気や量は減少します。また、色は透明から白っぽい色へと変化します。
黄体期に入ると、プロゲステロンの分泌が増え、おりものの状態や量が変化します。
黄体期前半は、おりものの分泌が減り、白く濁った粘り気のある状態に変わります。下着に付くと黄色っぽくなることがあり、不快に思う人もいるでしょう。
黄体期後半は、おりものが再び増える傾向があります。白く濁った状態が続き、酸味のあるにおいが強まることもあるでしょう。生理直前のおりものは、ごく少量の血が混じってピンク色になることもあります。
おりものの変化は生理周期に伴う自然な現象ですが、水っぽいおりものが続く場合や普段と異なる変化が見られる場合は、妊娠の初期症状や病気の可能性も考慮することが大切です。以下では、妊娠の初期症状と、水っぽいおりものが出る場合の病気の可能性について解説します。
妊娠初期には、女性ホルモンの分泌が続くため、おりものの量が増えます。
生理前のおりものとは異なり、妊娠初期のおりものは水っぽくサラッとした状態であることが特徴です。ただし、乳白色やクリーム色、黄色っぽい色になることもあります。また、着床出血が混ざると、ピンクや茶色っぽく見えることもあるため、生理直前のおりものと思うこともあるかもしれません。妊娠初期の場合も酸っぱいにおいを感じる場合があり、ほかの体調の変化も踏まえて妊娠の初期症状であるか考えることが大切です。
生理周期に関係なく水っぽいおりものが続く場合や、量・におい・色などの変化を伴う場合は、細菌性膣炎やクラミジア感染症、悪性腫瘍などが考えられます。気になる症状があるときは、早めに医師に相談しましょう。
細菌性膣炎は、腟内の細菌のバランスが崩れることで起こる症状です。通常、腟内は乳酸菌によって酸性に保たれており、腟の健康を維持しています。しかし、何らかの原因によって乳酸菌が減少し、他の細菌が異常に増殖すると、膣炎を引き起こすことがあります。
細菌性膣炎の発症の原因としては、性交渉や腟の洗いすぎ、ストレスなどです。細菌性膣炎のおりものは通常と異なり、魚が腐ったような強い生臭さを伴うことが特徴です。また、色が灰色になることがあります。予防のためには、腟内の自浄作用を損なわないよう、過度な膣の洗浄を避けることが大切です。
クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチス菌によって引き起こされる性感染症です。感染すると、黄緑色や黄色の水っぽいおりものが出ることがあります。
クラミジア感染症は、自覚症状がほとんどないまま進行することもあります。しかし、治療せずにいると膣から子宮、卵管へと炎症が広がり、膿がたまることで下腹部痛や性交痛を引き起こすことがあります。
症状が悪化すると、不妊症や子宮外妊娠の原因となる可能性があるため、定期的に性感染症の検査を受けることが大切です。
水っぽいおりものが長く続く場合、悪性腫瘍の可能性も考慮する必要があるでしょう。子宮頸がんや子宮体がん、卵管がん、卵巣がんなどの婦人科系のがんでは、初期症状の1つとして水っぽいおりものが見られることがあります。
これらの悪性腫瘍では、不正出血を伴うことがあり、その影響で茶色っぽいおりものが出る場合もあります。進行すると他の臓器に転移するリスクもあるため、定期的に検診を受けるとともに、体調に異変を感じた際には早めに医療機関を受診することが大切です。
おりものは体の状態を反映しており、健康のバロメーターとして役立ちます。通常と異なるおりものが見られた場合、何らかの病気が関与している可能性も考えられます。ここでは、注意が必要なおりものの特徴について解説します。
白くカッテージチーズのようにポロポロとした塊状のおりものが見られる場合、カンジダ膣炎の可能性があります。カンジダ膣炎は、カビの一種であるカンジダ菌が増殖し、膣内で炎症を引き起こすことにより発症する病気です。
カンジダ膣炎では、かゆみやヒリヒリ感を伴い、白い酒かす状のおりものが増加します。性交時に痛みを感じることもあります。発症の主な原因は、免疫力の低下や抗生剤の服用、糖尿病などです。
カンジダ膣炎を予防するには、陰部を清潔に保ち、通気性のよい綿素材の下着を着用するとよいでしょう。洗いすぎると膣内の常在菌が減少し、かえって膣内環境が乱れるため、注意が必要です。
カンジダ膣炎の症状が現れた場合は、早めに婦人科を受診しましょう。適切な治療を受けることで、症状の改善だけでなく再発の防止にもつながります。
黄色や黄緑色、あるいは茶色の泡状で悪臭のあるおりものが見られる場合、腟トリコモナス症が疑われます。
膣トリコモナス症は、トリコモナス原虫が膣や子宮頸管に寄生し、炎症を引き起こす感染症です。発症すると強いかゆみやヒリヒリ感、排尿時の痛みが現れることもあります。放置すると炎症が卵管に広がり、不妊や流産・早産のリスクもあるため注意が必要です。
感染経路は主に性交渉ですが、下着やタオル、便器、浴槽を介して感染することもあるため、性交経験のない女性や幼児も感染する場合があります。
膣トリコモナス症の治療には、抗生剤が用いられます。再感染を防ぐため、パートナーも検査を受けることが大切です。
淋菌感染症が原因で、おりものが黄緑色になり、悪臭を伴うことがあります。淋菌感染症にかかると、おりものの量が増え、性交時の痛みや不正出血が見られることもあるため注意が必要です。また、外陰部の腫れやかゆみ、頻尿、排尿時の痛みなどの症状を伴う場合もあります。
女性の淋菌感染症は自覚症状が乏しく、半数以上が無症状のまま経過するとされています。しかし、治療しないと卵管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)、肝周囲炎を引き起こすことがあるため、性行為時のコンドームの使用や定期的な検査が大切です。
淋菌感染症の治療には筋肉注射や点滴が用いられ、再発や耐性菌のリスクを考慮して、治療から約3週間後の再検査が推奨されています。また、感染を拡大させないために、パートナーも検査・治療を受けることが重要です。淋菌感染症は基本的に自然に治ることがないため、必ず医療機関で適切な治療を受けましょう。
おりものの状態がいつもと違うと、不快に感じたり、不安になったりすることもあるでしょう。ここでは、おりものによる不快感を和らげる方法やおりものの状態に不安を感じたときの対処法を紹介します。
デリケートゾーンは、清潔に保つことや蒸れを防止することが大切です。通気性のよい下着や洋服を選び、おりものシート・ナプキンを使用している際はをこまめに交換することで、雑菌の繁殖を防げます。近年では、吸水ショーツもあり、蒸れを軽減する効果が期待できます。
デリケートゾーンは皮膚が薄く刺激に弱いため、洗いすぎないよう注意しましょう。ゴシゴシ洗うと肌が荒れ、かゆみを引き起こすことがあります。また、膣内まで洗うと体を守る常在菌まで洗い流してしまい、自浄作用が低下するおそれもあります。低刺激の洗浄料を使い、やさしく洗うようにしましょう。
下着や洋服の素材にも、気を配ることが大切です。締め付けの強いものは避け、コットンなどの天然素材を選ぶとよいでしょう。布ナプキンは通気性がよく、蒸れを防ぐ効果が期待できるためおすすめです。適切なケアで、デリケートゾーンの健康を保ちましょう。
水っぽいおりものが大量に出る場合や、異常が見られるときは、早めに婦人科を受診することが大切です。そのままにすると、感染症や子宮の病気が進行し、症状が悪化するおそれもあります。特に、不快なにおいを伴う場合は、早めに受診しましょう。
おりものについて相談したいことがあるものの婦人科の病院に行く時間がとれない場合は、オンラインクリニックの利用も選択肢の1つです。自宅から医師に相談できるため、病院へ行くことにハードルの高さを感じる人も気軽に受診できます。また、夜間や休日の診察に対応しているオンラインクリニックもあるため、忙しくて希望時間に予約が取れないと感じている場合も受診しやすいでしょう。
おりものの変化は、体の不調を示すサインかもしれません。気になる症状があるときは、早めに医師に相談しましょう。
水っぽいおりものは、生理前の女性ホルモンの変化や妊娠によって出ることがあります。おりものが黄色・黄緑色の場合や悪臭を伴う場合は細菌性膣炎や性感染症、悪性腫瘍などの病気が原因の可能性があるでしょう。
おりものの色やにおい、粘度の変化をよく観察し、異常を感じたら早めに医師に相談しましょう。
日ごろから膣内環境を整え、過度な洗浄を避けることは、おりもののトラブルを防ぐために有効な方法です。自身の体のサインに注意を払うとともに、適切なケアを心がけましょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました