更新日:2025年09月03日
生理痛の緩和や生理不順の改善などを図るために低用量ピルの服用を検討し、「保険は適用される?」と気になっている方もいるでしょう。低用量ピルのうち、月経困難症や子宮内膜症の治療目的で使用されるLEPは保険適用になります。
この記事では、低用量ピルが保険適用になるケースとならないケースを紹介します。また、低用量ピルの種類や主な効果、副作用についても解説します。低用量ピルの服用により生理にまつわる症状を改善したい方は、ぜひ参考にしてください。
低用量ピルとは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類の女性ホルモンを主成分とするホルモン剤のことです。1日1回、決まった時間に服用することで、避妊や生理に関わるトラブルの軽減などの効果が期待できます。
低用量ピルには、使用されている黄体ホルモン別に第1世代〜第4世代の4種類があります。それぞれの特徴を以下で確認しましょう。
第1世代 | 第2世代 | 第3世代 | 第4世代 | |
---|---|---|---|---|
使用されている黄体ホルモン | ノルエチステロン | レボノルゲストレル | デソゲストレル | ドロスピレノン |
主な効果 | ・生理痛の緩和 ・月経量の軽減 ・避妊 | ・避妊 | ・ニキビや多毛の改善 ・避妊 | ・PMSの改善 ・ニキビ・多毛の改善 ・月経困難症や子宮内膜症の改善 |
主な副作用・デメリット | ・吐き気 ・頭痛 ・不正出血 | ・ニキビ ・多毛 | ・第一世代・第二世代に比べると血栓症リスクがわずかに高い | ・避妊目的では使えない |
低用量ピルは、種類によって主な効果や副作用が異なります。
低用量ピルの服用により期待する効果を得られるよう、悩んでいる症状や目的を受診時に医師に相談しましょう。
低用量ピルは、保険適用の有無によって以下の2つの種類にわけられます。
ここでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
OC(Oral Contraceptives:オーシー)は、主に避妊や肌荒れの改善、生理周期の移動を目的として使用される低用量ピルです。保険は適用されず、全額自己負担で入手することになります。
選ぶ種類によって、含まれる黄体ホルモンの種類が異なります。医師に相談し、使用目的に合ったものを処方してもらいましょう。
LEP(low dose estrogen-progestin:レップ)は、月経困難症や子宮内膜症の治療などに使用されるピルです。
LEPには、低用量ピルのほか、含まれる卵胞ホルモンの量がさらに少ない超低用量ピルもあります。超低用量ピルは避妊目的としては使用できないものの、低用量ピルに比べると副作用が起こりにくいのが特徴です。
OCとLEPでは、薬の種類が異なります。それぞれの違いを、以下で確認しましょう。
OC | LEP | |
---|---|---|
第1世代 | ・シンフェーズ(2025年1月より販売中止) | ・ルナベルLD ・ルナベルULD ・フリウェルLD ・フリウェルULD |
第2世代 | ・トリキュラー ・アンジュ ・ラベルフィーユ | ・ジェミーナ |
第3世代 | ・マーベロン ・ファボワール | ・なし |
第4世代 | ・なし | ・ヤーズ ・ヤーズフレックス ・ドロエチ |
元々ピルはOCだけで、主な使用目的は避妊でしたが、長期にわたる研究により月経困難症などへの副効用が明らかになりました。そのため日本においても、女性ホルモンの含有量はOCに準じ、避妊ではなく月経困難症の治療を使用目的とするLEPが2008年に保険適用のピルとして登場しました。
これにより、避妊を目的とするピルはOC、月経困難症や子宮内膜症などの治療を目的とするピルはLEPと区別されています。
OCとLEPのどちらも複数の種類があり、悩んでいる症状や使用目的に合うピルを選べるようになっています。
低用量ピルの服用により期待できる効果として、以下の5つが挙げられます。
それぞれについて見ていきましょう。
低用量ピルの効果の1つ目は、避妊です。低用量ピルを正しく服用した際の避妊の成功率は99.7%とされています。コンドームを正しく使用した場合の避妊率はおよそ98%といわれますが、使用方法の誤りなどによって避妊率が85%程度にまで下がることを考えると、ピルの避妊率は高いといえるでしょう。
ただし、飲み忘れや他の薬との飲み合わせで正しく服用できなかったときは、ピルの避妊効果が得られないケースもあります。また、ピルには性感染症の予防効果がないことも踏まえると、コンドームとの併用が望ましいでしょう。
低用量ピルの効果の2つ目は、月経周期の改善や月経移動です。月経周期が乱れる原因の多くに、ストレスや疲労などによるホルモンバランスの乱れが挙げられます。
ピルを服用すると、体内のホルモン量は必要最低限で保たれます。決まったタイミングで休薬期間を設けることで、定期的に月経のような出血(消退出血)を起こすことができ、元々は生理不順だった方も生理周期の改善が期待できます。
低用量ピルを一定期間服用している方は、休薬のタイミングを変えることで、生理開始日の移動も図れます。旅行や大事なイベントと生理が重なりたくない場合に役立つでしょう。
低用量ピルの効果の3つ目は、生理痛や過多月経の改善です。ピルを服用すると、排卵を促すホルモンの分泌が抑えられ、排卵が抑制されます。エストロゲンやプロゲステロンの分泌も抑制されるため、子宮内膜が厚くなりません。
ピルを服用して休薬した際は月経のような出血が起こりますが、子宮内膜は薄いため、排出される経血量が減ります。
経血量が減ると子宮の収縮運動を抑えられることから、生理痛の緩和も期待できます。過多月経やひどい生理痛に悩んでいる方は、ピルの服用が選択肢となるでしょう。
低用量ピルの効果の4つ目は、PMS(月経前症候群)の改善です。PMSとは、月経の3~10日ほど前に現れるさまざまな不快症状です。症状の一例を以下で確認しましょう。
PMSの症状は、女性ホルモンの急激な変動により起こると考えられているため、ピルの服用によりホルモンの変動を抑えれば、PMSの症状を緩和できるとされています。
生理前の腹痛やイライラ、不安などの症状により日常生活に支障が出ているときは、ピルの服用を検討してみましょう。
低用量ピルの効果の5つ目は、がんの発症リスクの軽減や病気の抑制です。低用量ピルを服用すると、卵巣がんや子宮体がんの発症リスクが低下するとされています。
また、ピルの服用により女性ホルモンをコントロールすることで、子宮内膜症や子宮筋腫の予防・進行抑制の効果が期待できるとされています。
低用量ピルを服用することで起こりうる副作用・デメリットは、以下のとおりです。
生理不順や過多月経の改善、PMSの症状緩和など、多くの効果が期待できる低用量ピルですが、副作用が出る場合があります。服用を始めて身体に異変があった際に冷静に対処できるよう、事前に副作用をしっかりと確認しておきましょう。
低用量ピルを服用すると、以下のようなマイナートラブル(副作用)が生じる場合があります。
とくに、低用量ピルの服用を始めて間もない頃は、副作用の症状が出やすいとされています。ただし、一般的には1~3ヶ月ほど服用を継続すると副作用は落ち着くことが多いようです。
数か月経っても症状が改善しない場合は、服用しているピルが身体に合っていない可能性もあります。副作用の症状がつらいときや長期間続くときは、医師に相談しましょう。
低用量ピルの副作用の2つ目は、血栓症のリスクがわずかに上がることです。ピルに含まれるエストロゲンには、血液を固まりやすくする作用があるためです。
ただし、低用量ピルの服用により血栓症を発症する割合は年間1万人に3~9人程度であり、基礎疾患がなく健康な方であれば過度に心配する必要はありません。
ピルの服用を開始し、万が一ふくらはぎのむくみ・痛みや手足のしびれ、胸の痛み、舌のもつれなどが見られたときは、速やかに医師に相談しましょう。
適度な運動や、水分補給による脱水の防止は、血栓症の予防効果が期待できます。ピルを服用している間は、血栓を作りにくい生活を心がけることも大切です。
低用量ピルの副作用の3つ目は、子宮頸がんや乳がんのリスクがやや上がる点です。
子宮頸がんは、主にHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染により発症する病気です。たとえHPVに感染したとしても、体外に排出されれば問題ありません。しかし、ピルの服用により、すでに感染したHPVの排除率が低下することで、HPVの持続感染の可能性が高まっていると考えられています。
また、低用量ピルの服用により、乳がんの発症リスクがわずかに上がる可能性があるとされています。ただし、エストロゲンの含有量などピルの種類を考慮すれば乳がんの発症リスクが増加しない可能性もあるとされています。
子宮頸がんと乳がんのどちらも、早期発見・治療が大切です。ピルを服用している間は特に、定期的にがん検診を受けましょう。
保険適用で低用量ピルの処方が受けられる主なケースには、以下が挙げられます。
低用量ピルには、自費のOCと保険適用のLEPがあります。LEPの処方を受けられるのは、月経困難症や子宮内膜症などの治療目的の場合です。
避妊や月経周期の調整、PMSの症状緩和を目的とした服用は、基本的に保険適用の対象外となることを覚えておきましょう。
月経困難症の治療目的でのピルは、保険が適用されます。月経困難症とは、生理中の不快症状により、日常生活に支障をきたす状態のことです。症状の一例を以下で確認しましょう。
生理期間中の症状が酷く日常生活に支障が出るときは、ピルによる治療が選択肢となります。
月経困難症はPMSを併発するケースもあるでしょう。PMSの症状改善のためにピルを服用する場合は基本的に自費ですが、月経困難症とあわせてPMSの治療をする場合は、保険適用となる可能性があります。
子宮内膜症といった病気の治療目的でピルを使用する際も、保険が適用されます。子宮内膜症とは、子宮内膜の組織が子宮の内側以外の場所で増殖する病気のことです。
子宮内膜症は20代~40代で多く見られ、ひどい月経痛や排便痛、性交痛などが発生します。また、不妊の原因になることもあるようです。
子宮内膜症は、月経により女性ホルモンの影響を受けるたびに少しずつ進行します。ピルの服用により排卵や子宮内膜の増殖を抑えることで、子宮内膜症の進行を防ぐことが可能です。
低用量ピルは、持病や既往症などによっては服用できないケースがあります。ピルの服用が難しいケースの一例を、以下で確認しましょう。
上記に当てはまる方は、ピルの処方は受けられません。上記以外にも、40歳以上の方やBMI30以上の方は、慎重な判断がされています。
ピルの服用について不安がある方は、まずは医師に相談してみるとよいでしょう。
ピルはドラックストアなどで市販されておらず、服用するには医師の処方が必要です。病院に行って処方してもらう場合、問診票の記入のほか、必要に応じて検査を受けます。ピルの服用が問題なければ、症状や使用目的に合わせたピルが処方されるでしょう。
LEPの処方は、対面診療を基本とする医療機関が多いものの、初回と定期検査以外はオンライン診療で処方を受けられる場合があるようです。
自費のOCは、通院のほか、オンライン診療においても処方を受けられます。オンライン診療であれば、場所や時間にとらわれず電話やビデオチャットで医師の診察を受けられるため、忙しくて病院に行く時間がない方にも便利です。
生理にまつわるトラブル改善のためにピルを服用したいと考えている方は、ぜひ一度オンライン診療を活用してみましょう。
低用量ピルには、保険が適用されるLEPと自費のOCがあります。LEPは、月経困難症や子宮内膜症の治療目的で使用する場合に処方されます。OCは、避妊や生理周期の改善などを目的とした使用が一般的です。
低用量ピルには、上記のほかPMSの症状緩和や肌荒れの改善といった効果がある一方で、不正出血や吐き気などの副作用が起こる場合があります。血栓症のリスク上昇については過度に心配する必要はありませんが、万が一手足のしびれや舌のもつれなどの症状が出た場合は医師に相談しましょう。
低用量ピルを服用するには、医師の処方が必要です。LEPは原則として対面による診察により処方されます。OCは対面診療だけでなくオンライン診療で処方してもらうことも可能です。
オンライン診療のサービスを提供するレバクリでは、ピルの処方を行っています。忙しくて通院による処方を受けるのが難しい方は、電話やビデオチャットによる診察および薬の処方が可能なレバクリの利用をご検討ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました