更新日:2024年04月24日
抗うつ剤でEDになる?その理由と対策を解説
- 抗うつ剤は、勃起を促すノルアドレナリンやドーパミンの作用を抑制するため、EDを発症しやすい
- EDを発症させる可能性の高い抗うつ剤は、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
- EDが発症しにくい抗うつ剤は、テトラミドやルボックス/デプロメールなど
- 抗うつ剤を変更するよりも、ED治療薬を併用した方がED改善効果が得られる
抗うつ剤の服用後、勃起がしにくくなったと感じる方もいるのではないでしょうか。うつの症状の1つにも性欲減退がありますが、抗うつ剤がEDを引き起こしていることも考えられます。
本記事では、抗うつ剤とED発症の関係性やメカニズムについて詳しく解説します。また、抗うつ剤を服用しながらED治療をしたいと考える方に向けて、抗うつ剤を服用しながらED治療をする注意点も解説します。ぜひ参考にしてください。
抗うつ剤でEDになる可能性が高まる
抗うつ剤を服用することによってEDになる可能性が高まるといわれています。ここでは、抗うつ剤とEDの関係性について解説します。
抗うつ剤でEDになる理由
抗うつ剤によってなぜEDになってしまうのか、その理由は現在でも詳しくはわかっていません。
2023年12月現在の研究では、抗うつ剤でEDとなるのは、抗うつ剤によるセロトニン2A受容体阻害作用とノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が関係しているからではないかと言われています。
セロトニン2A受容体の阻害作用
セロトニン2Aは、受容体と結合して精神症状(幻覚・妄想)などの症状を引き起こす成分です。
抗うつ剤によって、セロトニン2A受容体の働きを阻害することによって、うつ症状の改善を目指します。
セロトニン2A受容体を阻害する薬剤は精神症状を改善させる一方、勃起を促すノルアドレナリンやドーパミンの作用を抑制するため、ED発症の可能性を高めるとされています。
ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用
α1アドレナリンは、脳内に放出されたノルアドレナリンが細胞に再取り込みされることを阻害する成分です。
ノルアドレナリンは海綿体収縮を引き起こすため、再取り込みが阻害され体内に留まることで、EDの発症へと関与します。また、α1アドレナリン受容体には、血管を収縮する作用があるため、α1アドレナリンが受容体と結合することで、陰茎への血液流入が阻害されてしまいます。そのため、十分な勃起ができず、EDを発症してしまうのです。
薬剤性EDについて詳しく知りたい方は、「薬剤性EDとは?原因となりやすい薬や治療方法を解説」も参考にしてみてください。
抗うつ剤によるEDの発症率
ED診療ガイドラインによると、抗うつ剤によるEDの発症率は次のとおりです。
種類 | 薬剤名 | ED発症率 |
---|---|---|
セロトニン再取り込み阻害薬(SRI) | パロキセチン | 64.51% |
セロトニン再取り込み阻害薬(SRI) | セルトラリン | 67.05% |
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) | ベンラファキシン | 75% |
抗うつ剤によるEDの発症率は、ほかの薬剤性EDと比較しても高い傾向にあります。しかし、抗うつ剤の服用を止めてしまうと、うつ症状が改善しなくなることがあるため、自己判断で服薬を止めることは避けてください。抗うつ剤によるEDが疑われる場合は、かかりつけの医師に相談するようにしましょう。
参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]」
抗うつ剤の種類によってEDの発症しやすさは違う
抗うつ剤の種類によって、EDになりやすい薬剤となりにくい薬剤があります。 ここからは、抗うつ剤の薬品名を紹介しながらEDの発症のしやすさについて解説します。
EDを発症させる可能性の高い抗うつ剤
EDを発症する可能性の高い抗うつ剤は、三環系抗うつ薬(SSRI)と呼ばれるジェイゾロフトやパキシルなどの薬剤です。
ジェイゾロフトはうつ病だけでなく、パニック状態障害や外傷後ストレス障害の際にも処方される薬剤です。ジェイゾロフトはSSRIのなかでも最もEDを発症する可能性が高いとされています。
パキシルは、うつ病以外にもうつ状態やパニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害にも適応となる薬剤です。SSRIのなかでもジェイゾロフトと並びEDを発症する可能性が高いとされています。
また、これら2つの薬剤よりもEDの発症率は下がるものの、下記の薬剤でEDを発症する可能性があります。
- トリプタノール
- アナフラニール
- トフラニール
- アモキサン
- ノリドレン
- ルジオミール
- レクサプロ
- サインバルタ
- イフェクサー
- トレドミン
これらの抗うつ剤を服用していてなおかつEDを発症したという場合には薬剤性EDの可能性があるでしょう。
EDが発症しにくい抗うつ剤
EDを発症しにくいとされている抗うつ剤は、以下のとおりです。
- テトラミド
- ルボックス/デプロメール
- リフレックス/レメロン
- ドグマチール
- デジレル
上記の薬剤に共通しているのは、セロトニン2、セロトニン3受容体を同時にブロックする作用があることです。
前述したようにセロトニン2Aには勃起を促すノルアドレナリンやドーパミンの作用を抑制するため、この受容体をブロックすることで勃起を促す物質の作用が抑制されずに、勃起の機能は維持できると考えられています。
ただし、薬剤によっては、逆に性欲とは無関係に勃起が続いてしまう持続性勃起障害が発現する可能性があるため、注意が必要です。
抗うつ剤を服用しながらEDの治療をする際の注意点
抗うつ剤を服用しながらEDの治療をするときは、次の点に注意しましょう。
医療機関へ相談する
抗うつ剤を服用しながらEDの治療を行う場合は、抗うつ剤を処方する医療機関とEDの治療を処方する医療機関が密に連携をとることが重要です。
両方の医療機関に相談し、服薬の方向性を決めていくことで治療がスムーズに進みます。1人で悩まず、医療機関に相談して連携をとってもらいましょう。
うつの治療とED治療は併行して行う
抗うつ剤によってEDを発症していたとしても、EDを治すために抗うつ剤の休止を行うのではなく、ED治療薬を併用することでEDの症状を抑えるようにしましょう。
抗うつ剤の服用を中止すると、うつの病状が悪化するリスクがあります。うつの症状の1つにもEDがあるため、うつを治さなければEDの改善にもつながりません。そのため抗うつ剤を自己中断せずに、うつの治療と併行しましょう。
また、ED診療ガイドラインでは、薬剤を休止することでEDが改善したというエビデンスはなく、ED治療薬を併用することで有意にEDの改善を認めたとしています。
EDの治療薬には世界初のED治療薬であるバイアグラ、心血管系の副作用が少ないシリアス、長時間効果が持続するレビトラの3種類があります。状態にあわせて上記どれかの薬剤が処方され、抗うつ剤と併用して服用していくことになります。
うつ病とEDの関係性については、「うつとEDの関係は?うつでEDになる2つの原因と4つの対策を解説!」も参考にしてみてください。
参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]」
まとめ
抗うつ剤の服用は、EDを発症するリスクを高めます。EDを発症しやすいとされている抗うつ剤は、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。これらの薬剤を服用している方は、ED改善のために薬を中断したり、薬を変更したりした方が良いのではないかと考えるかもしれません。しかし、薬の中断や変更はうつおよびEDの改善に有意につながりません。
自己判断で服薬を止めるのは避け、まずは抗うつ剤を処方している医療機関へ相談し、その後ED治療薬を処方できる医療機関へ相談しましょう。治療薬を併用すれば、両方の疾患の改善へとつなげられます。
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この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会