更新日:2026年08月31日

この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
抗うつ剤の服用後に勃起がしにくくなったと感じる方がいるかもしれません。抗うつ剤はノルアドレナリンやドーパミンの分泌に影響するため、EDを引き起こす可能性があります。まずは抗うつ剤がEDに影響しやすい理由を把握したうえで、症状が気になる場合は医師に相談してみましょう。状況によってはED治療薬との併用や抗うつ剤の変更を検討してもらえるケースもあるため、自己判断で抗うつ剤を中断することは避けてください。
抗うつ剤は、うつ病や不安障害の治療に用いられる薬です。服用によって性機能に影響を与える可能性があるといわれています。 勃起には、脳から陰茎へと性的な刺激が伝わる神経の仕組みが欠かせません。抗うつ剤はこの神経伝達に作用するため、EDを引き起こすケースが報告されています。
抗うつ剤がEDを引き起こすメカニズムは、主にセロトニン受容体への作用と、ノルアドレナリンやドーパミンの分泌量の変化によるものです。
セロトニン2A受容体は、セロトニンが結合することで精神症状(幻覚・妄想など)に関与する受容体です。抗うつ剤でセロトニン2A受容体の働きを阻害し、うつ症状の改善を目指します。 セロトニン2A受容体を阻害する薬剤は精神症状を改善させる一方、ノルアドレナリンやドーパミンの働きに影響し、ED発症につながる可能性があるとされています。
ノルアドレナリンやドーパミンは、勃起に必要な神経伝達に関わる重要な物質です。 SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、セロトニンに加えてノルアドレナリンの再取り込みも阻害する作用を持ちます。再取り込みが抑えられると、ノルアドレナリンが回収されずに溜まっていきます。その結果、ノルアドレナリンが過剰になると陰茎の血管が収縮し、勃起に必要な血流が妨げられる可能性があるのです。 また、ドーパミンは性的な意欲や興奮に関わる神経伝達物質です。抗うつ剤によってドーパミンの分泌が抑制されると、性的な刺激に対する反応が低下し、EDが起こりやすくなると考えられています。
薬の影響で勃起不全の症状を引き起こす薬剤性EDのなかでも、抗うつ剤によるEDは発症率が高い傾向にあるといわれています。服薬中に勃起の異変を感じた場合は、抗うつ剤が関与しているかもしれません。 しかし、抗うつ剤の服用後にED症状を感じた場合でも、自己判断での服薬中断は控えましょう。抗うつ剤の自己中断は、うつ症状の悪化につながるリスクがあります。薬剤性EDが疑われる場合は、担当医に相談してみましょう。
抗うつ剤にはSSRI・SNRI・三環系・NaSSAなど複数の種類があり、それぞれ脳内で作用するメカニズムが異なります。 種類によってEDのリスクに差があることが知られており、服用中の薬がどの分類に当たるかを把握しておくと、担当医への相談時にも役立ちます。
SSRI・SNRI・三環系抗うつ薬は、EDの発症リスクが高いとされている薬剤に分類されます。 これらに共通するのは、セロトニンの作用を増強する過程で、勃起に関わるノルアドレナリンやドーパミンの分泌が抑制されやすい点です。EDリスクが高いとされる抗うつ剤の分類と薬品名は以下のとおりです。
| 分類 | 代表的な薬品名 | EDリスクの目安 |
|---|---|---|
| SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) | ジェイゾロフト(セルトラリン)、パキシル(パロキセチン) | 高い |
| SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬) | サインバルタ(デュロキセチン)、イフェクサー(ベンラファキシン)、トレドミン(ミルナシプラン) | 高い |
| 三環系抗うつ薬(TCA) | トリプタノール(アミトリプチリン)、アナフラニール(クロミプラミン)、トフラニール(イミプラミン) | 高い |
SSRIのなかでも、ジェイゾロフトやパキシルは性機能障害が現れやすい薬剤として知られています。 上記の薬剤を服用中にEDの症状を感じた場合は、薬剤性EDの可能性を考慮し、担当医に相談してみましょう。
NaSSAをはじめとする一部の抗うつ剤は、EDへの影響が比較的少ないとされています。 EDリスクが低いとされる主な抗うつ剤は以下のとおりです。
デジレル/レスリン(トラゾドン)は、まれに持続勃起症(4時間以上の勃起持続)が発現する可能性があります。服用にあたっては担当医から十分な説明を受けましょう。また、上記の薬剤はEDリスクが低い傾向がありますが、抗うつ剤の変更は担当医の判断によって行われます。自己判断での薬の変更・中断はせず、必ず担当医に相談のうえで検討してください。
抗うつ剤によるEDへの対処法には、主にED治療薬の併用と、担当医への相談による抗うつ剤の変更・減量の2つがあります。 いずれも担当医に相談のうえで進めることが必要で、抗うつ剤の自己中断は避けてください。
抗うつ剤によるEDへの対処法として、ED治療薬との併用が選択肢となる場合があります。 抗うつ薬の減量や変更、中止によってEDが改善する場合がありますが、必ず改善するとは限りません。また、ED治療薬の併用によって有意にEDの改善が認められたという報告があります。 国内で処方される代表的なED治療薬はシルデナフィル(バイアグラ)・バルデナフィル(レビトラ)・タダラフィル(シアリス)の3種類です。 いずれもPDE5(ホスホジエステラーゼ5)の働きを阻害することで陰茎への血流をスムーズにし、性的刺激に対する勃起をサポートします。
| 項目 | シルデナフィル(バイアグラ) | バルデナフィル(レビトラ) | タダラフィル(シアリス) |
|---|---|---|---|
| 有効成分 | シルデナフィル | バルデナフィル | タダラフィル |
| 効果持続時間 | 3〜5時間 | 4〜8時間 | 30〜36時間 |
| 食事の影響 | 受けやすい 食後は吸収速度が低下するため、食前30分を目安に服用 | あまり受けない 標準的な食事後であれば、吸収への影響は認められていない | ほとんど受けない 食事の有無にかかわらず服用できる |
抗うつ剤とED治療薬を併用する場合は、担当医に服用中の抗うつ剤を必ず伝え、併用が可能かどうか医師の指示を受けてください。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「シルデナフィル錠 添付文書」「バルデナフィル錠 添付文書」 「タダラフィル錠 添付文書」
担当医に相談することで、EDリスクの低い抗うつ剤への変更・減量を検討してもらえる場合があります。 前述のとおり、抗うつ剤の種類によってEDリスクは異なります。現在服用している薬がSSRIやSNRIなどEDリスクの高い薬剤で、勃起不全の症状が気になる場合は担当医に相談しましょう。NaSSAや一部のSSRIなど影響が少ないとされる薬剤への変更を検討してもらえるケースがあります。 ただし、薬剤を変更した場合でも必ずEDが改善するとは限りません。 症状が気になっても自己判断で抗うつ剤を中断せず、ED治療と並行してうつ病の治療も継続することが大切です。

抗うつ剤の副作用によるEDは、医師に相談することで対処できる可能性があります。ED治療薬の併用や抗うつ剤の変更・減量など、選択肢は複数あります。ひとりで抱え込まず、担当医やED治療を行っている医師に相談してみてください。
抗うつ剤とEDの関係性について、読者から寄せられやすい質問と回答を紹介します。
抗うつ剤によるEDは薬の中止・変更で必ず改善しますか?
抗うつ薬の減量や変更、中止によってEDが改善する場合がありますが、必ず改善するとは限りません。また、安易に薬をやめるとうつの症状が悪化してしまうリスクがあります。勃起不全があるときは、ED治療薬の併用や抗うつ剤の変更・減量などが検討されるケースもあるため、まずは医師に相談してみましょう。
抗うつ剤でEDのほかに性機能障害が起こることはありますか?
抗うつ剤(特にSSRI)による性機能障害には、EDのほかに性欲の低下(リビドー低下)、射精障害、オルガズム障害なども報告されています。これらの症状が気になる場合も、担当医への相談を検討しましょう。
抗うつ剤の服用は、EDの発症リスクを高める可能性があります。EDを発症しやすいとされている抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。これらの薬剤は、勃起に関与するセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのホルモンに影響を及ぼすことでEDの原因になると考えられています。 しかし、自己判断による抗うつ剤の休止はうつ症状を悪化させるリスクがあるため控えましょう。抗うつ剤による薬剤性EDが気になるときは、医師への相談が選択肢になります。必ずEDを改善できると断定できるわけではありませんが、ED治療薬の併用や抗うつ剤の変更・減量を検討してもらえるケースがあります。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「シルデナフィル錠 添付文書」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バルデナフィル錠 添付文書」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「タダラフィル錠 添付文書」
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ED治療は、「シルデナフィル」・「パルデナフィル」・「タダラフィル」などの成分を含む内服薬で行うのが一般的です。
治療の必要性について
EDは生活習慣病が原因の場合もあるため、放置せず早期に専門医へ相談することが推奨されます。
費用について
ED治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1錠500~2,000円ほど)の他に初診料や診察料がかかる場合があります。
ED治療は専門医への相談が不可欠ですが、デリケートな悩みであるため、通院の待ち時間や人目が心理的ハードルとなる場合も少なくありません。
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