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更新日:2024/03/21

バイアグラは心臓に悪い?ED治療薬と心血管疾患との関連について解説

この記事のまとめ
  • バイアグラには血管を拡張させる作用があるが、バイアグラが直接心臓に負担をかけることはない
  • バイアグラの併用禁忌薬は硝酸剤・アンカロン・アデムパスがある
  • 日本でも誤ってバイアグラと併用禁忌薬を使用した男性が死亡した事故が発生している
  • 心血管疾患がある人は、性行為自体が心臓に負担をかける場合がある
  • 個人輸入した海外製のバイアグラは、偽造薬が多いため、購入は控えるべき

バイアグラは心臓に負担をかけるという話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、バイアグラの作用は血管の拡張で、心臓に直接負担をかけることはありません。

本記事では、バイアグラが心臓に与える影響と心血管疾患との関係について解説します。特に心血管疾患のある方は、バイアグラの使用は慎重になるべきであるため、ぜひ参考にしてください。

バイアグラとは

バイアグラは、米国ファイザー社によって開発された世界初のED治療薬です。日本でも1999年に厚生労働省から認可され、医師の処方箋があれば使用可能になりました。

バイアグラの有効成分はシルデナフィルです。シルデナフィルには、勃起を抑える酵素であるホスホジエステラーゼ5(PDE5)の作用を阻害する作用があり、この作用によって勃起を促します。

正常な男性の場合、性的刺激を受けるとcGMP(cyclic GMP/環状グアノシン一リン酸)という物質が合成されます。そのcGMPが、陰茎海綿体の平滑筋を弛緩させ血流を増加させることで勃起が起こります。cGMPはPDE5によって分解されることで、勃起は収まります。シルデナフィルは、PDE5の働きを阻害しcGMPの作用を持続させるため、血管を拡張し勃起を促す作用がみられます。

バイアグラの効果について詳しく知りたい方は、「ED治療薬であるバイアグラの効果や服用方法・副作用・注意点について解説」も参考にしてみてください。

バイアグラはなぜ心臓に悪いと言われているのか?

厚生労働省によると、1998年に不整脈の治療のためにニトログリセリンを使用していた60代の男性がバイアグラを1錠服用し、その後性行為中に倒れ死亡したという症例がありました。バイアグラとニトログリセリン(硝酸剤)は、飲み合わせをしてはいけない併用禁忌薬です。

ED治療薬は医師の指示のもと処方されるため、併用禁忌薬の説明を受けるはずです。しかし、この男性は知人からバイアグラをもらったため、バイアグラとニトログリセリンを併用してはいけないということを知らずに事故が発生しました。

このような事故が発生したことで、バイアグラは危険な薬である、服用すると死の危険性が高まる、心臓に悪いという誤解が広まってしまったのです。

バイアグラ単体で直接心臓に悪影響を及ぼすことはありませんが、心血管疾患の治療薬である硝酸剤やアンカロン、アデムパスがバイアグラとの併用禁忌薬に該当するということを十分に理解しておく必要があります。

バイアグラの併用禁忌薬については、「バイアグラと飲み合わせてはいけない薬とは?併用禁忌薬を種類別に解説」でも詳しく解説しています。

参考:厚生労働省「バイアグラ使用後に死亡した症例について

バイアグラが心臓に与える影響

バイアグラは、心臓に悪いという事実はありません。むしろ、バイアグラの血管拡張作用で心臓の負担を軽減します。

しかし、性行為自体が、過度な運動をしたときと同じくらい心拍数・血圧・心筋酸素消費量を増加させるため、心臓への負担を増加させます。

バイアグラの添付文書にも「​​性行為は心臓へのリスクを伴うため、勃起不全の治療を開始する前に心血管系の状態に注意をはらうこと」とあります。

つまり、心筋梗塞や心不全、不安定性狭心症、不整脈などの心血管系疾患がある場合は大きな負担がかかり危険な状態に陥る可能性があります。

万が一性行為中に狭心症の発作が出た場合は、必ず医師にバイアグラを使用した旨を伝えるようにしてください。もし、自分で医師に伝えられないような状況であればパートナーがその旨を医師に伝えられるようにあらかじめパートナーにも伝えておきましょう。

参考:KEGG「医療用医薬品:バイアグラ

バイアグラと心血管疾患の関係

ここからは、バイアグラと心血管疾患との関わりについて、解説します。

狭心症

狭心症とは、心筋に送られる酸素が不足することによって、心臓が一時的な酸欠状態になる疾患です。心臓にある冠動脈は、心臓に酸素を運ぶ重要な血管です。冠動脈の血流が滞ってしまうと心臓に酸素を供給することができません。その結果、心筋虚血といわれる状態になり、胸やその周辺に違和感や痛みが生じます。

狭心症を患っている場合、ED治療に注意が必要です。なぜなら、前述したように狭心症の治療に使用されるニトログリセリン(硝酸剤)はバイアグラの併用禁忌薬に該当するためです。

硝酸剤は、​​心臓の負担を軽減し冠動脈を拡張させる作用があり、狭心症の症状を緩和するために使用されます。バイアグラも血管を拡張させる作用があるため、硝酸剤と併用すると血圧が急激に低下し、最悪の場合死亡するリスクがあります。

しかし、狭心症だからといって完全にバイアグラを服用できないわけではありません。きちんと治療が行われ狭心症の症状が落ち着いている場合や、治療薬として硝酸剤を使用していない場合には、医師との相談の上バイアグラを使用できる場合があります。

参考:KEGG「医療用医薬品:バイアグラ

心筋梗塞

心筋梗塞とは、冠動脈が完全に閉塞して詰まってしまう疾患です。心筋梗塞を発症すると、心臓に血液が供給されず酸素不足となり、心筋細胞が壊れていきます。心筋細胞は一度壊れてしまうと元には戻りません。そのため、治療が遅れると症状が悪化し致命的なものとなっていきます。

バイアグラの添付文書には「​​脳梗塞・脳出血や心筋梗塞の既往歴が最近6ヵ月以内にある患者」には使用禁忌であると記載されています。心筋梗塞の既往がある方がバイアグラを服用すると、ダメージを負った心臓に対し血流が増加し、新たな心臓の痛みを引き起こす可能性があるためです。

しかし、心筋梗塞の既往歴がある場合でも、条件を満たせばED治療薬を服用することは可能です。

心筋梗塞に既往がある方でバイアグラを使用できる可能性がある人の条件を以下に示します。

  • 心筋梗塞治療のためにニトログリセリンが処方されていない
  • 心筋梗塞の既往歴が6ヶ月以上経過している場合
  • 主治医より性行為に問題がないと言われた場合

心筋梗塞の既往がある方は、必ず医師にその旨を伝え治療法を検討してもらいましょう。

参考:KEGG「医療用医薬品:バイアグラ

不整脈

不整脈とは、心臓の拍動のリズムが乱れてしまう疾患です。不整脈にはさまざまな種類があり、心房細動などの危険性の低い不整脈から、心室頻拍など命の危険性が高い不整脈があります。つまり、不整脈の種類や程度によってバイアグラを使用できるかできないかが決まります。

不整脈の治療中に最も注意が必要なのが、バイアグラの併用禁忌薬に該当するアンカロン(アミオダロン塩酸塩)を服用しているかどうかです。不整脈の治療中にアンカロンを服用している場合は、バイアグラは使用できません。不整脈があったとしても、アンカロンを使用していなければバイアグラの使用は可能です。

また、不整脈によっては運動制限や性行為自体を控えなければならない場合もあるため、不整脈を指摘されている場合は必ず医師に相談しバイアグラを使用しても良いかを確認してください。

参考:KEGG「医療用医薬品:バイアグラ

バイアグラの入手方法の注意点

日本では、バイアグラをはじめとするED治療薬は医師の処方箋がないと購入できませんが、個人輸入による海外製のバイアグラをEC上で購入することは可能です。

しかし、厚生労働省の調査では、海外製のバイアグラには偽造薬やシルデナフィルを含んだ医薬品が販売されていると報告されています。また、漢方薬と称して販売されている海外製の医薬品において、シルデナフィルが検出された商品もあります。

海外製のバイアグラは、不衛生であったり品質管理がなされていない場所で製造されているものもあり、安易に服用すると重篤な健康被害を起こす可能性があり大変危険です。

また、日本の医療機関で処方されるバイアグラは、安全性や有効性、品質が検査され承認を受けています。

バイアグラの服用を始める際は、海外製のバイアグラを自己判断で輸入せず、必ず医療機関から処方してもらうようにしてください。

バイアグラの偽物については、「バイアグラの偽物に多い特徴とは?偽物を服用するリスクについても解説」を参照してください。

参考:厚生労働省「令和2年度『インターネット販売製品の買上調査』の結果について

まとめ

バイアグラは心臓に悪いという事実はなく、むしろバイアグラは、血管拡張作用によって心臓の負担を軽減します。バイアグラの服用で死亡するリスクがあるのは、バイアグラと併用禁忌薬を一緒に使用した場合です。心血管疾患の治療に使用される硝酸剤やアンカロン、アデムパスなどはバイアグラと併用禁忌です。

心血管疾患がある場合でも、併用禁忌薬を使用して治療していない、心血管疾患の状態が落ち着いているなど、状況によっては服用が可能です。バイアグラを安全に使うためには、医師に相談しながら適切に使用していきましょう。

また、バイアグラの使用を周りに知られたくないからといって、個人輸入による海外製の商品を購入するのは危険です。インターネット上で販売されている商品は、偽造薬である場合が多いです。もし、周りの目が気になって通院を躊躇している場合は、オンライン診療を行っている医療機関もあります。必要に応じてオンライン診療を利用し、安全にEDの治療を進めていきましょう。

レバクリでは、ED治療薬のオンライン処方を行っています。場所や時間にとらわれずにビデオチャットや電話で診察が受けられ、処方された薬は自宅など好きな場所に届きます。

診察は無料なので、ぜひご予約ください。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会