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更新日:2024年04月24日

男性不妊とは?原因や検査方法、治療方法、EDとの関わりを解説

この記事のまとめ
  • 男性不妊とは、男性側に原因のある不妊症のこと
  • 不妊症の原因別頻度は男性不妊が32.7%
  • 男性不妊の主な種類は、造精機能障害・精路閉塞障害・性機能障害がある
  • 男性不妊の検査方法は、精液検査と泌尿器科領域での検査に分けられる
  • 2022年から男性不妊に対する不妊治療にも保険が適用されるようになった

不妊は女性の問題と考えられがちですが、男性側に原因があることもあり、男性不妊と呼ばれます。そのため、なかなか子どもができない場合は、女性だけでなく男性側の検査も行う必要があります。

本記事では、男性不妊に着目し、原因・検査方法・治療方法について解説します。不妊に悩んでいる男性の方は、ぜひ参考にしてください。

男性不妊とは?

産科婦人科用語集・用語解説集によると、不妊症は、「生殖年令の男女が妊娠を希望し、ある期間避妊事すること無く性交渉をおこなっているのにもかかわらず、妊娠の成立を見ない場合を不妊といい、妊娠を希望し医学的治療を必要とする場合」と定義づけられており、男性側が原因となっているものを男性不妊と分類しています。

また、非配偶者間の生殖補助医療に関する不妊患者の意識調査という論文によると、不妊の原因別頻度は、男性不妊が32.7%とされています。

さらに、国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、日本で何らかの不妊治療・検査を受けたことがあるカップルは4.4組に1組とされており、不妊に悩んだことがあるカップルは3組に1組とされています。2015年は5.5組に1組であったことから、近年、日本で不妊に悩む人は、増加傾向にあります。

参考:国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査

男性不妊の原因

男性不妊の原因には主に以下の3つが挙げられます。

  • 造精機能障害
  • 精路閉塞障害
  • 性機能障害

それぞれ解説していきます。

造精機能障害

造精機能障害とは、精子を作る機能に障害があり、精子濃度や運動率といった精子の機能が弱まってしまう疾患です。

精子は精巣(睾丸)の中で作られ、精巣上体という組織を通り抜ける間に運動能力を得て、受精を行える精子となります。精巣での精子形成や、精巣上体での成熟過程に異常があると、精子の数が少なくなったり、精子の動きが悪くなったり、奇形率が多くなったりして、受精する力が低下します。

造精機能障害となる原因は、原因が不明なものが多いです。原因が精索静脈瘤であることがわかった場合は、外科的治療を行います。

精路閉塞障害

精路閉塞障害とは、精子の通り道である精管が詰まり、精巣内で精子はできているものの、精子が外に出ることができなくなる疾患です。

精路閉塞障害は、以下のような疾患が原因となります。

  • 先天性精管欠損症
  • 尿道炎
  • 射精管閉塞症
  • 前立腺嚢胞
  • 鼠径ヘルニア術後

精液の90%以上は前立腺液もしくは精嚢液であるため、精路閉塞障害であっても、射精は問題なく行えます。よって、自覚症状がなく、精液検査をしなければ発見できにくい病気です。

性機能障害

性機能障害とは、性行為中に十分に勃起を維持できないED(勃起不全)のことを指します。EDが起こる原因は、器質性ED・心因性ED・混合性ED・薬剤性EDの4種類に分類することができます。

器質性EDとは、勃起の指令を出す神経や血管に何らかの異常がある場合に起こります。​​

糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病で動脈硬化を発症し、血流が悪くなることでEDを起こすことがあります。また、喫煙や過度なアルコール摂取も器質性EDを引き起こす原因と言われています。

心因性EDとは、ストレスやプレッシャー、過去のトラウマなど精神的な問題が原因で起こると言われています。仕事など日常生活の中で生じるストレスや性交渉における不安や過去のトラウマ、子作りへのプレッシャーなどさまざまな要因が考えられます。

混合性EDとは、器質性EDと心因性EDが複合したものを指します。器質性のEDで満足できる勃起が起きないことがストレスやプレッシャーとなり、一層EDの症状が悪化するという悪循環になる場合もあるでしょう。

薬剤性EDとは、病気や怪我などにより何らかの治療薬を内服している場合、その治療薬の副作用が原因で起こるEDを指します。

薬剤性EDを引き起こす主な薬剤は、以下のとおりです。

  • 降圧剤
  • 精神神経薬
  • 注意欠陥・多動性障害治療薬(ADHD治療薬)
  • 抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬)
  • 脂質異常症治療薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
  • 抗痙縮薬

服用している薬がEDの原因となっている場合があるため、EDの治療を受ける際には、服用している薬を必ず医師に伝えるようにしてください。

男性不妊の検査方法

男性不妊の検査方法は、精液検査と泌尿器科領域での検査に分けられます。精液検査は、男性不妊で受診したほとんどの人が受ける一般的な検査です。

ここでは、男性不妊の検査方法について詳しく解説します。

精液検査

精液検査は、精液量・精子濃度、運動率、運動の質、精子の形態、感染の有無などを検査します。精液検査は、​​1回の検査のみでは良し悪しを評価するのが難しいため、2回行うことが推奨されます。

以下に精液検査の下限基準値を示します。

検査項目下限基準値
精液量(ml)1.4(1.3~1.5)
精子濃度(百万/ml)
総精子数(百万/精液中)
16(15~18)
39(35~40)
運動率(%)42(40~43)
前進運動率(%)30(29~31)
生存率(%)54(50~6)
正常形態率(%)4(3.9~4.0)

参考:WHO「WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen

下限基準値を満たさない場合は、自然妊娠の可能性が低くなります。どの値が低いかによって治療法は異なるため、医師に相談しながら治療をすすめましょう。

泌尿器科領域の検査

泌尿器科領域の検査には、診察や超音波検査、採血などが含まれます。ここではそれぞれの検査について解説します。

診察

診察では、不妊症に関連する既往歴の有無や現在の性生活の状況の確認、精巣(こう丸)などの外陰部の診察、精巣サイズの測定、精索静脈瘤の有無などを触診で行います。

超音波(エコー)検査

超音波検査では、陰嚢・精索・精巣に異常がないか確認する検査です。精索静脈瘤の診断に最も有用で簡便な方法です。この検査によって、精巣がんが発見されることもあります。

内分泌検査(採血)

内分泌検査では、採血を行い、男性ホルモン(テストステロン)や性腺刺激ホルモン(LH、FSH)、プロラクチンなどを検査します。

男性不妊の治療方法

男性不妊の治療法は、原因によって異なります。ここでは、男性不妊の原因に分けてそれぞれの治療法について解説します。

造精機能障害

造精機能障害の治療には、薬物療法と外科的治療があります。

造精機能障害の多くは原因不明の場合が多く、原因不明の際は、対症療法としてサプリメントやホルモン剤、漢方薬による薬物療法が使われます。また、妊娠するために人工授精や体外受精、顕微授精が行われます。

人工授精とは、女性側の排卵の時期に合わせて、子宮の入り口から専用の管を使いパートナーの精子を子宮内に注入する方法です。

体外受精とは、排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し(採卵)、精子と接触させ(媒精)、卵を子宮内に戻す方法です。

顕微授精とは、細いガラス針の先端に1個の精子を入れて顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入する方法です。

造精機能障害の中でも、精索静脈瘤が原因の場合は外科的治療を行います。

精路閉塞障害

精路閉塞障害は、塞がっている精巣上体や精管を直す手術や、造精機能に問題がなければ精巣から精子を回収する精巣内精子採取術を行う場合があります。

性機能障害(ED)

EDが原因で不妊の場合、EDの種類に応じた治療が必要です。それぞれ解説します。

心因性ED

心因性EDの治療においては、バイアグラやシアリス、レビトラといったED治療薬が有効な場合があります。

性行為に対して不安があることで心因性EDを発症している場合は、ED治療薬を服用することで性行為がうまくいったという成功体験が自信となり、症状が改善する場合もあります。

また、仕事による過度なストレスや疲労、強い不安やトラウマ、性行為への嫌悪感などが強い場合は、ED治療薬で十分な効果が得られない場合もあります。そのような場合は、カウンセリングや行動療法など、心理的なアプローチを行う治療法をとります。

関連記事:心因性EDの原因は?治療方法や必要性についても解説

器質性ED

器質性EDの治療法は、以下のとおりです。

  • ED治療薬
  • ICI治療
  • テストステロン補充療法

ED治療薬は、血管を拡げて勃起時に陰茎に流入する血流を増やす作用があり、勃起不全の改善に効果があるとされています。

ICI治療とは、陰茎の海綿体に薬剤を注射する治療法です。ED治療薬で効果が現れない場合や、ED治療薬が服用できない場合に選択されます。ただし、日本ではまだ厚生労働省に承認されていない治療法になります。医療機関によっては、自由診療として治療ができる場合があるため、各医療機関に相談してみましょう。

テストステロン補充療法とは、性欲や勃起力を維持するために必要なテストステロンを補充する治療法のことです。ただし、ホルモンを補充する治療は、テストステロンの体内量が急激に増えることで副作用が出やすいとされています。この治療法を選択するかどうかは医師と相談して決めましょう。

このほかに、肥満や生活習慣病なども器質性EDの原因になるため、生活習慣を見直すことが大切です。また、アルコールを過剰摂取してしまうと、脳からの性的興奮の信号が陰茎に伝わりにくくなるため、お酒は控えると良いでしょう。

関連記事:器質性EDは改善できる?原因や治療方法、セルフケアについて解説

薬剤性ED

薬剤性EDの場合、もともとの病気の治療状況によって、EDの原因となっている薬剤の減量や変更をすることで症状を改善できる可能性があります。しかし、減量や変更ができるかは病気の治療状況によるため、医師に相談しながら決めていく必要があります。

関連記事:薬剤性EDとは?原因となりやすい薬や治療方法を解説

男性不妊における検査や治療は保険適用になるか

厚生労働省は、2022年から「バイアグラ錠25mg、同錠50mg、同ODフィルム25mg及び同ODフィルム50mg並びにシアリス錠5mg、同錠10mg及び同錠20mg」に対して、不妊治療が目的の使用であれば保険適用となると発表しました。 また、精液中に精子が認められない無精子症や射精障害、重度の逆行性射精の場合に行われる精巣内精子採取術も保険適用になりました。

さらに、体外受精や顕微授精に関しても保険適用の対象になりました。

これまで高額な負担のあった不妊治療ですが、こうした制度の見直しにより経済的負担は軽くなったといえます。

ただし保険適用となる要件は厳格に定められており、それを満たす場合にのみ対象の治療が保険適用となります。

参考:厚生労働省「不妊治療で使用される医薬品の保険給付上の取扱いについて」、「不妊治療に関する取組

男性不妊の治療では何科を受診すべき?

男性不妊の治療を行う場合は泌尿器科を受診してください。

最近では、夫婦そろって受診できる不妊治療専門の医療機関も増えてきています。原因がどちらにあるのか不明の場合は、そのような医療機関を受診するのも検討してみましょう。

もし、男性不妊の原因がEDであるならば、ED治療専門のクリニックを受診するのも良いでしょう。

まとめ

不妊症の原因は、男性側の要因である場合もあります。

男性不妊の主な原因は、造精機能障害・精路閉塞障害・性機能障害です。検査としては、精液検査が一般的ですが、そのほかにも超音波検査や採血などでも原因を明らかにしていきます。

2022年より男性不妊の治療も保険適用になりました。

万が一不妊の原因が自分にあるのではないかと悩んだ場合は、まずは泌尿器科を受診し医師に相談してみましょう。

レバクリでは、ED治療薬のオンライン処方を行っています。場所や時間にとらわれずにビデオチャットや電話で診察が受けられ、処方された薬は自宅など好きな場所に届きます。診察は無料なので、ぜひご予約ください。 参考:WHO「WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen」 下限基準値を満たさない場合は、自然妊娠の可能性が低くなります。どの値が低いかによって治療法は異なるため、医師に相談しながら治療をすすめましょう。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会