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更新日:2024年02月14日

糖尿病とEDの関係とは?引き起こされる仕組みや対処法を解説

この記事のまとめ
  • 糖尿病患者のED発症率は約35~90%とのデータがある
  • 糖尿病による血管や神経障害のほか、心理的要因や薬剤の副作用でEDが引き起こされる
  • 糖尿病によるEDには、生活習慣の見直しや血糖コントロール、ED治療薬の服用が有効

糖尿病を発症している方でEDが併発し、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。糖尿病とEDは密接な関係があり、どちらも悩みの種となりうる問題です。

糖尿病は、放置するとさまざまな合併症を引き起こす場合があり、EDは性生活の質の低下や、パートナーとの関係悪化につながる可能性があります。

本記事では、糖尿病とEDの関係や、糖尿病によってEDが引き起こされる仕組み、対処法について解説します。この記事を読んで糖尿病とEDに関する正しい知識を身につけ、適切な対処法を見つけましょう。

糖尿病とEDとの関係とは

糖尿病になると、血糖値が慢性的に高い状態が続き、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。そのうちの1つがED(勃起不全)です。 ここでは、糖尿病とEDの関係について解説します。

糖尿病患者はED発症率が高い

ED診療ガイドラインによると、糖尿病患者がEDを発症する確率は、以下のように示されています。

  • 糖尿病患者の35~90%がEDを発症する
  • 糖尿病患者のED発症率は、非糖尿病患者の約2.88倍

これらのデータから、糖尿病患者はEDを発症するリスクが高いことが分かります。また、糖尿病患者のED発症時期は非糖尿病患者より、10~15年早いともいわれています。

糖尿病は初期症状がほとんどないため、気づきにくい病気です。そのため、EDの発症により糖尿病の発見に至るケースもあります。

参照元:日本性機能学会、日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン

糖尿病によるEDは混合性が多い

糖尿病によるEDは、混合性EDを発症しているケースが多く見受けられます。 混合性EDとは、血管や神経障害などが要因で発症する器質性EDや、ストレスなどの精神的な要因で発症する心因性EDが混在したEDです。

糖尿病になると、血管と神経の両方に障害が生じやすくなります。また、糖尿病の治療や自己管理に関連するストレスや不安は、勃起に関わる神経や筋肉に障害を起こして陰茎の血流を滞らせ、性的機能にも影響を及ぼすことがあります。

そのため、糖尿病によるEDは、器質性EDと心因性EDが混在した混合性EDを引き起こしやすいとされています。

糖尿病によりEDが引き起こされる仕組み

ここからは、糖尿病によりEDが引き起こされる仕組みについて解説します。

血管障害

糖尿病によるEDの原因の一つは、動脈硬化と呼ばれる疾患です。動脈硬化は、血管の中にプラークや血栓が生じ、本来の弾力性を失い硬くなっている状態です。これにより血液の流れが制限されることで、様々な症状を引き起こします。

動脈硬化が陰茎の血管に影響を及ぼすと、勃起に必要な血液の流れが制約され、陰茎の海綿体に十分な血液が流れ込まなくなり、勃起が困難になります。

動脈硬化の影響は、体の血管の中でも細い血管から現れるといわれています。性器海綿体の毛細血管は、特に細い血管のため、動脈硬化の影響を受けやすいとされています。

神経障害

EDは神経障害によっても引き起こされます。糖尿病により、常に高血糖の状態が続くと、自律神経に障害を及ぼします。

自律神経は、心臓や呼吸、消化、排泄などの機能をコントロールする神経であり、陰茎の勃起も自律神経によってコントロールされています。

糖尿病による高血糖は、自律神経のバランスを乱し、正確な信号の伝達を阻害します。結果として、勃起に必要な血流の調整がうまく行えず、勃起が難しくなります。

心理的な要因

糖尿病を原因とするストレスは、勃起をコントロールする神経に悪影響を及ぼし、心因的なEDを引き起こす可能性があります。 糖尿病は、長期にわたり血糖値が高い状態が続く病気です。糖尿病患者は、血糖値をコントロールするために行う、食事や運動などの生活習慣の変化や自己管理によって、ストレスを感じやすくなります。

また、厚生労働省の調査によると、糖尿病患者の約30%にうつ症状があるといわれています。うつ症状により性的刺激を脳が十分に感じられなくなると、性的刺激が伝達されず、陰茎に血液が流入せず勃起が困難になります。

うつ病により性欲が減少したり、性行為に対するプレッシャーや不安感が増したりすることで、心因的ストレスも増加します。

参考:厚生労働省「糖尿病とこころ

薬剤の副作用

糖尿病を起因とするうつ病の治療薬により、EDを引き起こす場合もあります。抗うつ薬や抗精神病薬の服用は、薬剤性EDを引き起こしやすいとされています。

薬剤性EDについて詳しく知りたい方は、「薬剤性EDとは?原因となりやすい薬や治療方法を解説」も参考にしてみてください。

糖尿病によるEDの対処法

糖尿病によるEDは、以下の対処法により症状の軽減や改善が期待できると考えられます。

  • 生活習慣の見直し
  • 血糖コントロール
  • ED治療薬の服用

ここからは、糖尿病によるEDの対処法を解説します。

生活習慣の見直し

糖尿病の原因は、肥満や糖質・炭水化物の摂りすぎ、運動不足、過度な飲酒など、多くが生活習慣に起因するものです。 そのため、糖尿病によるEDを改善させるためには、生活習慣の見直しを行い糖尿病の進行を抑えることが重要です。

食習慣の見直し

食習慣の見直しは、血糖値のコントロールや合併症の予防、EDの改善のためには欠かせません。 糖尿病患者は、血糖値が上がりやすいため、高カロリー・高脂肪・高塩分の食事を避け、バランスの良い食事を心がけましょう。

運動不足の解消

適度な運動は、血糖値のコントロールや肥満の解消に効果的です。厚生労働省によると、週に3回以上、20分以上の有酸素運動が望ましいとされているため、生活習慣に取り入れましょう。

参考:厚生労働省「糖尿病を改善するための運動 | e-ヘルスネット

適正体重の維持

肥満は、糖尿病の原因となるだけでなく、テストテロンが減少することでEDのリスクも高めます。体重を適正な範囲に保つために、食事と運動の両方からのアプローチが必要です。

飲酒は適量を守る

糖尿病であっても、適度な飲酒は問題ないとされています。しかし、過度な飲酒は血糖値の上昇につながり、EDのリスクを高める可能性があります。そのため、飲酒する際は適量を守ることが大切です。

禁煙する

喫煙は、血管を収縮させて血流を悪化させるため、EDのリスクを高めます。喫煙者が禁煙することで、血管が拡張して血流が良くなり、EDの改善が期待できます。

ストレスを発散する

ストレスを溜め込まないようにすることも大切です。ストレスは、血糖値や血圧を高め、EDの原因となることがあります。十分な睡眠を取ったり、趣味や好きなことに没頭したりして、ストレスを発散しましょう。

血糖コントロール

糖尿病患者のED改善のためには、血糖値のコントロールが重要です。 血糖値が高いと、血管が傷つきやすくなり、勃起に必要な血液の流れが悪くなるため、EDのリスクが高まります。

目標数値は個人の状態や治療計画によって異なりますが、一般的に、日本糖尿病学会で定められている血糖コントロール目標値は以下のとおりです。

血糖の正常化を目指す際の目標HbA1c 6.0%未満
合併症予防のための目標HbA1c 7.0%未満
治療強化が難しい際の目標HbA1c 8.0%未満

※HbA1c=血中の糖化ヘモグロビンが存在している割合

血糖値を良好にコントロールすることで、血管障害や神経障害の進行を遅らせ、EDの改善が期待できるでしょう。

参考:日本糖尿病学会「糖尿病治療の目標と指針

ED治療薬の服用

糖尿病によるED改善には、ED治療薬の服用も有効です。ED治療薬は、血管拡張作用により陰茎海綿体に血液を流入させることで、勃起を促す効果が期待できます。

代表的なED治療薬は、バイアグラ・レビトラ・シアリスの3種類です。それぞれ特徴が異なるため、自分の状況に合わせて治療薬を選択しましょう。 なお、レビトラはメーカー都合により販売中止となったため、現在はレビトラのジェネリック医薬品が代替薬として処方されています。

ED治療薬バイアグラレビトラシアリス
有効成分シルデナフィルバルデナフィルタダラフィル
服用後、効果が現れるまでの時間約30分~1時間約15~30分約1~3時間
持続時間3~5時間程度4~8時間程度20~36時間程度
勃起力強い強い普通
食事の影響受けるやや受ける受けにくい
副作用現れやすい現れやすい現れにくい

ED治療薬は、クリニックの泌尿器科やED専門外来、オンラインクリニックにて医師の診察を受けたうえで購入できます。

個人輸入などで安価で入手することも可能ですが、個人輸入したED治療薬を自己判断で服用するのは止めましょう。個人輸入のED治療薬は偽薬の可能性があり、効果を得られないだけでなく重篤な副作用を起こす可能性があります。 必ず医療機関で医師の診察を受け、正規品のED治療薬による治療をはじめましょう。

ED治療薬について詳しく知りたい方は、「ED治療薬の特徴は?3種類の薬の勃起力や即効性、持続時間・副作用を解説」も参考にしてみてください。

まとめ

この記事では、糖尿病によりEDが引き起こされる仕組みや、糖尿病によるEDの対処法について解説しました。

糖尿病患者のED改善のためには、生活習慣の見直しや血糖コントロールが重要です。生活習慣を見直し、血糖コントロールを実践したうえでED治療薬を服用することで、より効果的にEDが改善できるでしょう。

糖尿病によるEDは、早期発見・早期治療が重要です。糖尿病と診断され、EDの症状が疑われる場合は、できるだけ早めに医療機関で受診しましょう。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会