更新日:2026年08月31日

この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
「薬剤性EDの原因は?」「自分が飲んでいる薬は影響している?」と疑問に思う方もいるでしょう。薬剤性EDとは、降圧剤や抗うつ薬、AGA治療薬など、服用中の薬の副作用が原因で起こるEDです。原因となる薬を変更したり、休薬や減薬したりすることで改善する場合があり、ED治療薬との併用が可能なケースもあります。自己判断で薬を調整すると思わぬリスクを招くため、薬剤性EDが疑われる場合は医師への相談を検討しましょう。
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薬剤性EDとは、服用中の薬の副作用が原因で起こるEDのことです。高血圧、うつ病、AGA(男性型脱毛症)、前立腺肥大症など、さまざまな疾患の治療薬が薬剤性EDの原因となる場合があります。
勃起には、神経の信号伝達と陰茎への血流、そして男性ホルモンのバランスが正常に機能することが必要です。服用中の薬がこれらのいずれかに影響を与えることで、薬剤性EDが起こります。
薬剤性EDは若年層でも発症しうるEDです。また、「勃起不全が薬のせい」とは気づきにくいため、見逃されやすいEDでもあります。薬を飲み始めた後に勃起機能の低下を感じるようになった場合は、薬剤性EDの可能性を念頭に置き、医師へ相談してみましょう。
以下の薬は、薬剤性EDの原因となりえます。薬の種類ごとにEDへの影響が異なるのが特徴です。
| 薬剤の種類 | 代表的な薬剤名 | EDへの主な影響 |
|---|---|---|
| 降圧剤 | ヒドロクロロチアジド(利尿薬)、プロプラノロール(β遮断薬)、ニフェジピン(カルシウム拮抗薬)など | 陰茎への血流低下、神経伝達阻害 |
| 抗うつ薬・向精神薬・睡眠薬 | パキシル・ジェイゾロフト(SSRI)、トレドミン(SNRI)、トフラニール(三環系抗うつ薬)など | セロトニン増加による性機能抑制 |
| 前立腺肥大症治療薬・AGA治療薬(5α還元酵素阻害薬) | フィナステリド(プロペシア)、デュタステリド(ザガーロ) | ホルモンバランスの変化による性機能への影響 |
| 抗潰瘍薬 | シメチジン(H2ブロッカー) | 陰茎への血流減少 |
| 呼吸器疾患・アレルギー用薬剤 | 抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、ステロイド剤など | 神経伝達阻害、血流低下 |
ここからは、各薬剤について詳しく解説します。
降圧剤は高血圧の治療に用いられる薬です。降圧剤には文字通り、血圧を下げる作用がありますが、作用機序やアプローチしたい器官によって、以下のような種類に分かれています。
なかでも利尿薬やβ遮断薬は、陰茎への血流を減少させたり、勃起を促す神経伝達物質の働きを抑制したりすることで、EDに関わることがあるとされています。ただし、上記に挙げた降圧剤すべてが同じように性機能へ影響するわけではありません。
なお、降圧剤が治療に使用される高血圧そのものも、動脈硬化を介してEDのリスクファクターとなります。そのため、降圧剤の服用中にEDが生じた場合でも、薬剤性EDか器質性EDかの判断には医師への相談が必要です。
以下の抗うつ薬・向精神薬・睡眠薬は、薬剤性EDを引き起こしやすい薬です。
これらの薬はセロトニン濃度を上昇させる作用があり、勃起に関与するノルアドレナリン、ドーパミンなどのホルモンに影響を及ぼすことでEDの原因になる場合があります。また、抗精神病薬の副作用として高プロラクチン血症が生じることがあり、性欲減退や勃起不全につながる場合があります。
服用中にEDの症状を感じた場合は、自己判断で服薬を中止せず、処方した医師に相談してください。
前立腺肥大症治療やAGA治療に用いられる5α還元酵素阻害薬も、薬剤性EDの原因となる場合があります。具体的には以下の2つです。
5α還元酵素阻害薬はテストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)へと変換する酵素の働きを抑制します。その作用により性欲や勃起機能に関わるホルモンバランスが変化し、EDを含む性機能へ影響することが副作用として報告されています。
服用中に勃起機能の低下を感じた場合は、自己判断で中止せず、処方した医師に相談してください。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠 添付文書」
抗潰瘍薬は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療に用いられる薬です。代表的な薬剤はH2ブロッカー(H2受容体拮抗薬)のシメチジンが挙げられます。
シメチジンには弱い抗アンドロゲン作用などがあり、長期・高用量使用時に性ホルモン代謝への影響や勃起障害などが報告されています。
呼吸器疾患・アレルギー用薬剤は、薬剤性EDの原因となるものがあります。原因となる主な薬剤は以下のとおりです。
抗コリン薬は副交感神経の働きを抑制する作用があるため、陰茎の勃起を抑制する場合があります。また、抗ヒスタミン薬のアレルギー反応を抑制する働きにより、勃起に必要な神経伝達物質の働きが抑制される可能性があります。これらの呼吸器疾患・アレルギー用薬剤は、陰茎への血流を減少させEDの症状を引き起こすとされています。
薬剤性EDを改善するための治療方法は、「ED治療薬の服用」「原因となる疾患の改善」「薬の変更」「薬の減薬・休薬」の4つがあります。いずれも自己判断での対応はリスクを伴うため、まず医師への相談が必要です。
薬剤性EDにはPDE5阻害薬(ED治療薬)の服用が有効な場合があります。PDE5阻害薬はcGMP(環状グアノシン一リン酸)の分解を抑制し、陰茎への血流をサポートすることで勃起を助ける薬で、薬剤性EDにも効果が期待できます。国内で承認されているPDE5阻害薬はシルデナフィル(バイアグラ)、バルデナフィル(レビトラ)、タダラフィル(シアリス)の3種類です。それぞれの特徴は以下のとおりです。
| シルデナフィル(バイアグラ) | バルデナフィル(レビトラ) | タダラフィル(シアリス) | |
|---|---|---|---|
| 服用タイミング(目安) | 性行為の約1時間前 | 性行為の約1時間前 | 性行為の約1〜3時間前 |
| 効果の持続時間 | 3〜5時間 | 4〜8時間 | 30〜36時間 |
| 食事の影響 | 受けやすい(空腹時服用推奨) | 受けにくい | ほとんど受けない |
| 主な副作用 | 頭痛、めまい、消化器症状 | 頭痛、ほてり、鼻づまり | 頭痛、潮紅、背部痛・筋痛 |
ただし、PDE5阻害薬は急激な血圧低下を招く恐れから、硝酸剤(狭心症治療薬など)との併用は禁忌です。常用薬がある場合は、必ず医師に申告したうえで処方を受けてください。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「シルデナフィル錠 添付文書」 「バルデナフィル錠 添付文書」 「タダラフィル錠 添付文書」
薬剤性EDの原因となっている疾患が改善すると、EDの改善も期待できます。原疾患を適切に治療した上で、薬の用量や種類を調整できるかを主治医と検討しましょう。
糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病では、それ自体がEDの原因と関連するため、薬の副作用だけでなく原疾患の管理が重要です。
EDの原因となる薬を別の薬に変えることで、EDの改善が期待できます。ただし、薬は個人の症状の種類や重さ、体質、アレルギーなどにより処方される種類が決まるため、自己判断で変更するのは危険です。薬を変更する場合も、医師や薬剤師に相談するようにしてください。
EDの原因となっている薬を減薬したり休薬したりすることによって薬剤性EDが改善する場合があります。ただし、自己判断での減薬・休薬は持病の悪化につながるリスクがあるため、必ず主治医に相談してから行ってください。
また、服用している薬によっては、ED治療薬との併用が可能なケースもあります。まずは医師に薬剤性EDの可能性を相談し、減薬・薬の変更・ED治療薬の併用のいずれが自分に適しているかを確認することが大切です。
ここでは、薬剤性EDに関するよくある質問に回答します。
薬剤性EDにバイアグラなどのED治療薬は使えますか?
薬剤性EDにも、PDE5阻害薬(シルデナフィル・バルデナフィル・タダラフィル)が有効な場合があります。ただし、服用中の薬によっては併用禁忌となるケースがあるため、必ず医師に常用薬を申告したうえで処方を受けてください。
フィナステリドやデュタステリドなどのAGA治療薬でEDになりますか?
フィナステリドやデュタステリドなどの5α還元酵素阻害薬は、EDを含む性機能への影響が副作用として報告されています。気になる症状が現れた場合は自己判断で服用を中止せず、処方した医師に相談してください。
服用中の薬を自己判断でやめれば薬剤性EDは改善しますか?
自己判断での服薬中止は持病の悪化を招くリスクがあるため、避けましょう。薬の変更や減薬・休薬を検討する場合は、必ず主治医に相談したうえで判断してください。
薬を服用していてEDの症状がある場合、まずは服用中の薬がEDの原因となっているかを医師に診断してもらうことが重要です。薬剤が原因であると診断された場合は、医師と相談しながら疾患の症状や希望に合わせて治療方法を選択しましょう。服用している薬によっては、ED治療薬との併用も可能です。
薬剤性EDは治療を受けることで症状の改善が期待できるので、早めに医師に相談することを検討してみてください。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「シルデナフィル錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「バルデナフィル錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「タダラフィル錠 添付文書」
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ED治療は、「シルデナフィル」・「パルデナフィル」・「タダラフィル」などの成分を含む内服薬で行うのが一般的です。
治療の必要性について
EDは生活習慣病が原因の場合もあるため、放置せず早期に専門医へ相談することが推奨されます。
費用について
ED治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1錠500~2,000円ほど)の他に初診料や診察料がかかる場合があります。
ED治療は専門医への相談が不可欠ですが、デリケートな悩みであるため、通院の待ち時間や人目が心理的ハードルとなる場合も少なくありません。
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薬剤性EDと診断された場合でも、服用中の薬があるからといってED治療薬が使えないわけではありません。持病の薬とED治療薬を組み合わせて治療できるケースもあります。自己判断で持病の薬をやめることは危険なので、かかりつけの主治医とED治療を相談する医師の双方に相談して、適切な治療方法を一緒に検討することが大切です。