更新日:2024年03月21日
バイアグラと飲み合わせてはいけない薬とは?併用禁忌薬を種類別に解説
- バイアグラはED治療薬のひとつ
- バイアグラの併用禁忌薬は、硝酸薬・アミオダロン塩酸塩・可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬
- 因果関係は不明としながらも、日本でもバイアグラと併用禁忌薬を誤って併用した方が、死亡する事故が発生している
- バイアグラと併用禁忌薬を併用すると命の危険が高まるため、持病がある方は必ず医師に相談してから使用する
バイアグラは、医師の指示のもと正しく服用すれば安全な薬です。しかし、バイアグラには併用禁忌薬があり、飲み合わせることで重篤な健康被害を被ることがあります。
本記事では、バイアグラと飲み合わせの悪い薬について解説します。バイアグラの服用を開始する前に、自身が併用禁忌薬を使用していないか確認してください。
バイアグラとはどんな薬?
バイアグラは、1998年にファイザー社より発売された、世界最初のED(勃起不全)治療薬です。
バイアグラの有効成分であるシルデナフィルが、勃起を抑える酵素PDE5(5型ホスジエステラーゼ)の活性を阻害することで効果を発揮します。勃起は、cGMPという物質が陰茎海綿体の血管を広げることで起き、PDE5はこのcGMPを分解してしまいます。シルデナフィルはPDE5の活性を抑えることでcGMPによる血管拡張効果を維持し、勃起の補助をします。
バイアグラは部分的に効果をもたらす薬ではなく、全身の血管を拡張させる効果があるため、他の循環器系の疾患に使われる薬と飲み合わせると、体に悪影響を及ぼす可能性があります。
医師の指示のもと正しく服用すれば安全な薬のため、持病がある方は必ず医師に相談してから使用してください。
バイアグラの効果について詳しく知りたい方は、「バイアグラの効果や特徴は?副作用の対処法や料金相場まで詳しく解説」も参考にしてみてください。
バイアグラとの飲み合わせが禁忌とされている薬
ここでは、バイアグラと飲み合わせができない併用禁忌薬を解説します。
硝酸薬
硝酸薬は、狭心症や心筋梗塞の治療に使用されます。硝酸薬は、心臓の冠動脈を拡げ血流量を増やすことで心臓に酸素などを補給したり、全身の血管抵抗を減らすことによって心臓の負担を軽減したりする薬です。
この硝酸薬は、服用すると血管内の一酸化窒素を増加させ、血管を拡張させるcGMP (環状グアノシン一リン酸)の働きを活性化させます。この作用は、バイアグラの有効成分であるシルデナフィルがPDE5(5型ホスホジエステラーゼ)の活性を阻害することでcGMPの働きを活発にさせる作用と重複します。
併用時に起こる症状
バイアグラと硝酸薬を併用した場合、血圧が急激に低下する恐れがあります。血圧の低下が著しいと心原性ショックを起こし意識を失う可能性も高まります。
そのほかの症状は、めまいやふらつき、立ちくらみ、倦怠感、易疲労感、眠気、失神、一過性の脳虚血などがあります。
硝酸薬に該当する薬剤
硝酸薬に該当する薬剤は、ニトログリセリン・亜硝酸アミル・硝酸イソソルビド・ニコランジルなどが挙げられます。これらの薬剤は、錠剤・舌下錠・テープなどのさまざまな剤形があります。
バイアグラと硝酸薬を併用すると命を落とす危険性が高まるため併用できません。狭心症や心筋梗塞などの治療中で治療薬を内服している方は、必ず医師に申告してください。
バイアグラと心臓の関係については、「バイアグラは心臓に悪い?ED治療薬と心血管疾患との関連について解説」を参照してください。
アミオダロン塩酸塩
アミオダロン塩酸塩は、不整脈を治療するために使用される薬物です。
心臓が規則正しく脈を打つには、心臓内で命令が正しく伝えられることが重要です。命令を正しく伝えるために、心臓の細胞はチャネルという通路を使ってカルシウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンなどを出し入れします。このチャネルが正常に働かなくなり、命令が正しく伝えられなくなると不整脈が起こります。 この不整脈を治療するために使われるのが、抗不整脈薬であるアミオダロン塩酸塩です。
アミオダロン塩酸塩は、カリウムを主としたマルチチャネル遮断薬です。命に危険のある心室細動・心室性頻拍・心不全(低心機能)または肥大型心筋症に伴う心房細動などの再発性不整脈において、ほかの抗不整脈薬が無効か、または使用できない場合に使われます。
併用時に起こる症状
不整脈を疑われる場合に問題となるのが、心電図のQT(心臓が収縮してから弛緩するまでの時間)の延長です。QTの短縮は臨床上問題にはなりません。心電図におけるQTの正常値は0.36〜0.44秒、0.35未満はQT短縮、0.45以上はQT延長を意味します。
アミオダロン塩酸塩とバイアグラの併用は、QT延長を起こし心臓のリズム障害を増加させる可能性があり、不整脈の治療に対して逆効果となります。また、場合によっては突然死の原因ともなりうるため、大変危険です。
さらに、バイアグラの有効成分であるシルデナフィルは、血管拡張作用によって血圧を下げる作用があります。そのため、アミオダロン塩酸塩を併用すると血圧が急激に低下し、不整脈の治療に悪影響を及ぼす可能性があります。
参考:中学医学社「心電図モニターにできること」
アミオダロン塩酸塩に該当する薬剤
アミオダロン塩酸塩を主成分とする医薬品には、アミオダロンやアンカロン、アミオダロン塩酸塩などがあります。
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬は、肺高血圧症の治療薬として使われています。可溶性グアニル酸シクラーゼはcGMPを産生を増やす働きがあり、血管を広げ肺動脈圧を低下させる作用があります。
併用時に起こる症状
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬とバイアグラを併用すると、症候性低血圧を引き起こす可能性があるとされています。 症候性低血圧とは、何らかの原因により、二次的に収縮期血圧(心臓が血液を送り出す際の血圧)が100mmHg未満となり、低血圧症を示すものです。
血圧が下がることで、めまい・立ちくらみ・頭痛・肩こり・倦怠感・動悸などの症状が現れることがあります。
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬に該当する薬剤
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬に該当する薬剤としては、アデムパス錠0.5mg/1.0mg/2.5mgがあります。 アデムパス錠は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者に対し、世界で初めて有効性・安全性が確認された経口肺高血圧症治療薬です。
バイアグラとの飲み合わせによる死亡事故
1998年、日本で60代の男性がバイアグラを1錠服用した後に性行為を行い、その後死亡したという事故がありました。その男性は高血圧・糖尿病・不整脈の治療をしており、ニトログリセリンを使用していました。
ニトログリセリン(硝酸剤)は、バイアグラとの併用が禁忌とされている薬です。厚生労働省はこの事故の因果関係は不明としていますが、ニトログリセリンとの併用が原因で死亡した可能性が考えられます。
ED治療薬は併用可能な薬がある一方で、併用すると死の危険がある薬もあります。持病のある方でバイアグラを使用する際は、必ずかかりつけ医に相談してください。
バイアグラを飲んではいけない人については、「バイアグラを飲んではいけない人は?自己判断で服用するリスクも解説」でも詳しく解説しています。
参考:厚生労働省「バイアグラ使用後に死亡した症例について」
まとめ
バイアグラは、EDの治療薬です。バイアグラの有効成分であるシルデナフィルが、体内にある勃起 を抑える効果のあるPDE5の活性を阻害することで、勃起を促します。
バイアグラには、併用禁忌の薬があり、誤って服用してしまうと死の危険性が高まります。併用禁忌とされている薬は、硝酸薬・アミオダロン塩酸塩・可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬の3つです。因果関係は不明としながらも、誤ってバイアグラと併用禁忌薬を服用した方が死亡する事故が報告されています。
バイアグラは、医師の指示のもと正しく服用すれば安全な薬です。持病のある方でバイアグラの服用を検討している場合は、必ず医師に相談しましょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会