更新日:2024年01月24日
ICI療法とは?EDへの効果やメリット、副作用について解説
- ICI療法(陰茎海綿体自己注射)とは、ED治療法の1つで、陰茎の海綿体に直接薬剤を注射することで勃起を促す治療法
- ICI療法の主なメリットは、ED治療薬を服用できない方も利用できることや疼痛以外の副作用がほとんど出ないこと
- ICI療法の副作用は、陰茎の疼痛以外に稀にむくみやほてり、持続勃起症などの症状が出ることがある
- ICI療法では、注射を打ってから次の注射まで24時間以上は間隔を空けなければならない
EDの治療方法として代表的なのは、バイアグラやレビトラ、シアリスなどのED治療薬の服用ですが、その他の治療法としてICI療法があります。日本国内では認可されていない治療法ですが、欧米では広く普及していると言われています。
この記事では、ICI療法について解説します。EDへの効果やメリット、利用する際の注意点について詳しく説明するので、ぜひ参考にしてください。
ICI療法とは?
ICI療法(陰茎海綿体自己注射)とは、ED治療法の1つで、陰茎の海綿体に直接薬剤を注射することで勃起を促す治療法です。既往歴など何らかの理由でED治療薬を服用できない場合でも利用でき、EDの治療効果があると言われています。
また、有効性に関する報告によると、ICI療法の有効性は全ED患者の70%程度とされており、患者満足率・パートナー満足率ともに80%以上と高い評価を得ています。
日本国内においては、まだ厚生労働省の認可を受けていない治療法ですが、欧米では広く普及しています。
ここからは、ICI療法に使用する液薬や具体的な方法、ICI療法にかかる費用について解説します。
参考:帝国大学医学部泌尿器科アンドロロジー診療「陰茎海綿体自己注射(ICI治療)」
ICI療法で使用する液薬
ICI療法で使用する液薬は、プロスタグランジンE1という血管拡張剤で、直接陰茎の海綿体に注入することで、勃起を促します。
プロスタグランジンE1とは、血小板の凝集を抑え、血管を拡張させる物質であり、血行が悪い状態で起こる症状を改善する作用があります。
たとえば、血小板が凝集すると血栓ができやすくなり、血液の流れが悪くなるため、手足のしびれや冷えなどの症状が表れます。このような場合に、プロスタグランジンE1を服用すると血液の流れが良くなり、症状を改善できる可能性があります。
さらに、血管拡張作用により、神経組織への血流を増加させるため、腰部脊柱管狭窄症の症状改善などにも効果的であるとされています。
ICI療法の場合、1回で注入する液薬の量は、大体約0.1~0.5mⅬで、個人の症状の度合いなどによって調整されます。
注入した液剤は体内の血液中に回ることなく海綿体に留まり、注入してから10~15分程度で勃起が始まり、効果の持続時間は約90~120分です。
ICI療法の方法
ICI療法は、自身で陰茎に注射し、プロスタグランジンE1を海綿体に直接注入する方法であり、以下の手順で行います。
- 陰茎の横側を消毒綿で拭く。
- 利き手で注射器を持ち、もう一方の手で陰茎を伸ばす。
- 陰茎の血管のない箇所をねらって横から針を根本まで刺す。
- 注射器のピストンをゆっくり押し、液薬を注入する。このとき、液剤が入りにくい場合は、1~2㎜前後させて入りやすい箇所を探す。
- 液薬をすべて注入できたら針を抜き、刺した箇所を1分以上(血が止まるまで)押さえる。
注射器の正しい打ち方などは、病院で詳しく教えてもらえるので、必ず医師の指示に従って行いましょう。
また、使用後の注射器やアンプル(薬品の保存容器)は、医療廃棄物なので一般ゴミとして捨てることはできません。 密閉できるケースなどに保管して、次回診察時に病院に持っていきましょう。
ICI療法にかかる費用
医療機関によって異なりますが、ICI療法にかかる費用は、1回分の処方で5,000円~10,000円(税抜)程度です。
また、初診料が5,000円、初回の検査が10,000円、ICI療法が有効か確かめるための検査用液剤の料金が5,000円程度なので、初診で25,000円、2回目以降は5,000円~10,000円程度かかると考えておけば良いでしょう。
ICI療法は日本国内で認可されておらず、自己責任で行う治療です。健康保険が適用されず、全額自己負担となることを理解したうえで利用を検討しましょう。
ICI療法のメリット
ICI療法の主なメリットは、以下の3つです。
- ED治療薬を服用できない人も治療を受けられる
- 疼痛以外の副作用がほとんど出ない
- 性的刺激がなくても勃起する
ここからは、ICI療法のメリットについて説明します。
ED治療薬を服用できない人も治療を受けられる
ICI療法の1つ目のメリットは、何らかの理由でED治療薬を服用できない人でも利用できる点です。 たとえば、心臓病や高血圧や糖尿病、肝機能障害などを患っている場合、ED治療薬の服用を制限されることがあります。
また、ED治療薬で十分な効果を感じられなかった場合や、ED治療薬と相性の悪い薬を服用しているような場合であっても、ICI療法を受けることが可能です。
もちろん医師の診療や事前検査が必要となりますが、上記のような理由で悩んでいる方は、ICI療法を検討するのも一つの方法です。
ED治療薬については、「ED治療薬の特徴は?3種類の薬の勃起力や即効性、持続時間・副作用を解説」を参照してください。
疼痛以外の副作用がほとんど出ない
ICI療法の2つ目のメリットは、疼痛以外の副作用がほとんど出ない点です。
バイアグラなどの内服薬は、有効成分が全身の血液にいきわたり海綿体以外の血管も拡張させるため、頭痛やほてり、めまいなどの副作用が生じることがあります。
一方、ICI療法は、注入したプロスタグランジンE1が陰茎の海綿体に留まり、全身にいきわたらないため、注射による疼痛・出血以外の副作用がほとんど出ないとされています。
性的刺激がなくても勃起する
ED治療薬は、服用後に性的刺激を受けなければ効果を発揮しませんが、ICI療法は、注射後10~15分程度経過すると無意識的に勃起することができます。そのため、性行為を行える可能性が高まります。また、陰茎の性的刺激を追加することで、さらに効果が高まるとも言われています。
また、ICI療法は、射精した後も勃起が継続します。プロスタグランジンE1の効果が継続している間は勃起が持続するため、早漏の方も状況を改善できる可能性があります。
ICI療法のリスク
ICI療法には疼痛・出血以外の副作用がほとんどありませんが、ごく稀に、むくみやほてり、4時間以上の持続勃起症などの症状が表れることがあります。
副作用に関する海外のデータによると、陰茎の疼痛が50%、持続勃起症が6%、海綿体線維化2%、めまいやほてりなどが1%となっています。ただし、このデータはED治療薬が発売される前の古いデータです。東邦大学医療センターが行った近年の臨床試験によると、64名を対象にICI治療を行ったところ、有効率は77%、副作用は注射時の軽度な痛みを除くと0%だったとしています。
副作用が発生する確率は極めて低いと考えられますが、万一副作用が発生し、症状が治まらない場合は、必ず病院に行って相談しましょう。
参考:東邦大学医療センター「陰茎注射(陰茎海綿体自己注射)」
ICI療法の注意点
ICI療法を利用する際は、用法などに注意点があります。 まず、ICI療法で1回目の注射を打った後、効果が抜けきっていない状態で2回目の注射を行うことはできません。1回目の注射を打ってから次の注射まで、少なくとも24時間は間隔を空ける必要があります。
その他にも、陰茎海綿体に自己注射を打てるのは週に2回までという決まりもあります。用法・用量に関しては、必ず医師の指示に従いましょう。
また、先述のとおり使用後の注射器やアンプルを一般廃棄物として処理できない点や、保険が適用されず費用が全額自己負担となる点にも注意しましょう。
まとめ
ICI療法は、ED治療薬を服用できない人も利用でき、疼痛以外の副作用はほとんど出ませんが、稀に疼痛や皮下出血、持続勃起症などの症状が表れるケースがあります。ただ、ICI療法について正しく理解し、注射方法や用法・用量を厳守すれば、特に問題なく利用できるでしょう。
ED治療薬を服用できない、十分に効果を感じられないという方は、ICI療法による治療を検討してみてはいかがでしょうか。
レバクリでは、ED治療薬のオンライン処方を行っています。場所や時間にとらわれずにビデオチャットや電話で診察が受けられ、処方された薬は自宅など好きな場所に届きます。 診察は無料なので、ぜひご予約ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会