更新日:2026年03月12日
AGAに悩んでいる方のなかには、「男性ホルモンが多いとハゲるって本当?」と不安に感じている方もいるかもしれません。AGAの原因は男性ホルモンの量そのものではなく、テストステロンがDHTという別の物質に変換されることにあります。
本記事では、男性ホルモンがどのようにAGAを引き起こすのかを解説します。また、AGA治療薬の使用や生活習慣の改善といった、AGAの進行を食い止めるための方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
AGAの発症と男性ホルモンには、深い関わりがあります。髪の毛が薄くなるAGAの原因は、体内で起こる男性ホルモンの変化にあるのです。
男性型脱毛症(AGA)の発症メカニズムを理解することで、進行を食い止めるための対策や治療法を見つける手がかりになり得るでしょう。ここでは、男性ホルモンがAGAにどのように影響しているのかを解説します。
男性ホルモンとAGAの関係については、「男性ホルモンが多いとはげる?薄毛になる原因をわかりやすく解説」でも解説しているので、あわせてご一読ください。
男性ホルモン「テストステロン」が還元酵素と結合することが、AGAの要因の一つです。日本メンズヘルス医学会の「テストステロンとは」によると、テストステロンは男性の体内で生成されており、分泌量には個人差があります。男性ホルモンには筋肉の発達や髭・胸毛などの毛を濃くする役割があり、テストステロン自体が直接的にAGAを引き起こすわけではありません。
しかし、男性ホルモン「テストステロン」が「5α-還元酵素(5α-リダクターゼ)」という酵素と結合すると、AGAの原因となる変化が起こり始めます。5α-還元酵素(5α-リダクターゼ)は特に頭皮の前頭部や頭頂部に多く存在するため、これらの部位から薄毛が進行しやすいのです。
参考:日本メンズヘルス医学会「テストステロンとは」
国民生活センターの「AGA 治療、植毛」によると、テストステロンが5α-還元酵素(5α-リダクターゼ)と結合すると、「ジヒドロテストステロン(DHT)」という男性ホルモンに変換されます。ジヒドロテストステロン(DHT)が頭髪の成長を抑制することが、AGAの要因です。
ジヒドロテストステロン(DHT)は、テストステロンよりも約5倍も強い作用をもつとされています。ジヒドロテストステロン(DHT)が髪の成長期を短くすることで毛が十分に育たず、通常よりも早い期間で抜け落ちるのがAGAの要因の一つです。AGAが発症するかどうかは、体内のテストステロン量そのものではなく、どれだけジヒドロテストステロン(DHT)に変換されるかが重要といえます。
ジヒドロテストステロン(DHT)については、「ジヒドロテストステロンとは?抑制する3つの方法も紹介」で紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
生成されたDHTは、毛髪の成長に重要な役割を果たす「毛乳頭細胞」に作用します。毛乳頭細胞の表面には「アンドロゲン受容体」と呼ばれる、DHTと結合する部位があります。
DHTがアンドロゲン受容体に結合すると、毛乳頭細胞の働きに変化が生じます。本来なら髪の毛の成長を促進する栄養分の供給や成長因子の生成を担う毛乳頭細胞が、DHTの影響により正常に機能しなくなるのです。
また、毛乳頭細胞とDHTの結合に対する感受性も遺伝的要因で決まります。両親や祖父母に薄毛の方がいる場合、アンドロゲン受容体のDHTに対する感受性が高い遺伝子を受け継いでいる可能性があります。
脱毛因子が過剰に生成されることで、ヘアサイクルが乱れ始めます。脱毛因子は、DHTがアンドロゲンレセプターという男性ホルモンの一種と結合することで生成されます。
健康な髪の毛は成長期が2〜7年、中間期が約3週間、休止期が約3ヶ月というサイクルを繰り返すことが基本です。しかし、脱毛因子が過剰に生成されると髪の毛の成長期が極端に短くなり、細く弱々しい毛しか作れなくなります。
生涯におけるヘアサイクルの回数はおよそ15〜20回とされているため、脱毛因子の過剰生成で髪の成長期が極端に短くなるとヘアサイクルが早めに終わる恐れがあるのです。
AGAは放っておくと進行するものの、適切な対策を取ることで進行を遅らせることが可能です。ここでは、AGAの進行を食い止めるための5つの対策を紹介します。
AGAの進行を食い止めるための方法の一つは、治療薬でDHTの生成を抑えることです。
国民生活センターの「AGA治療、植毛」によると、AGA治療薬のフィナステリドは5αリダクターゼのll型、デュタステリドは5aリダクターゼのl型とll型を阻害します。そして、フィナステリドやデュタステリドは内服薬として処方され、テストステロンのDHTへの変換を抑制するのが主な役割です。

この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
一方、ミノキシジルは外用薬として使用され、頭皮の血流を改善する効果が期待できます。フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなどのAGA治療薬は医師の処方が必要なため、専門クリニックでの相談が望ましいでしょう。
また、AGA治療薬はすべての人に同じ効果があるわけではなく、個人差があることも理解しておかなければなりません。
参考:国民生活センター「AGA治療、植毛」
健康な髪の毛を維持するためには、適切な栄養素の摂取が必要です。偏った食生活では、髪の毛の成長に必要な栄養素が不足し、AGAの進行を早める可能性があります。
タンパク質は髪の毛の主成分であるケラチンの原料です。そのため、魚や肉、大豆製品などから良質なタンパク質を摂ることがAGAの進行を食い止めるためには大切です。また、亜鉛やビタミンB群、ビタミンEなどは髪の健康維持に重要な役割を果たします。
特に亜鉛は5α-還元酵素の働きを抑制する可能性があるとされており、牡蠣や赤身肉、ナッツ類などから積極的に摂取すると良いでしょう。ビタミンB群は代謝を促進し、頭皮環境を整える効果があります。
睡眠は身体の回復と成長にとって重要です。睡眠不足や睡眠の質が低下すると男性ホルモンのバランスが乱れ、AGAの進行を早める可能性があります。
成長ホルモンは睡眠中に多く分泌され、髪の毛の成長に影響を及ぼします。そのため、十分な睡眠時間を確保することで、髪の毛の健康維持に貢献できるのです。
厚生労働省の「良い睡眠の概要(案)」によると、7時間前後が適正な睡眠時間とされています。
同省の「健康のためのGood Sleepガイド」によると、良い睡眠のためのポイントは以下のとおりです。
仕事や家庭、趣味などで睡眠不足になっている方もいるかもしれません。日中の強い眠気や週末に長く寝る習慣がある場合は、慢性的な睡眠不足の可能性があります。上記で紹介した質の高い睡眠のポイントを意識して睡眠を確保するよう心掛けましょう。
参考:厚生労働省「第2回健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会」
適度な運動はストレス解消にも効果的です。ストレスが長期間続くと体内でコルチゾールが過剰に分泌され、頭皮環境が悪化する場合があります。運動によってストレスを軽減することは、頭髪の健康維持にも役立つでしょう。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」によると、1日60分以上の身体活動や1日8,000歩以上の歩行、週2〜3日の筋力トレーニングが適度な運動として推奨されています。
参考:厚生労働省「身体活動・運動の推進」
過度の飲酒や喫煙は、AGAの進行を早める可能性があります。飲酒や喫煙の習慣を見直すことで、頭髪の健康維持に貢献できるでしょう。
喫煙は、タバコに含まれる有害物質のニコチンが毛細血管を収縮させ、頭皮への血流を妨げます。また、一酸化炭素が血液中のヘモグロビンと結合し酸素運搬能力を低下させるため、毛根が酸素不足の状態に陥るのです。酸欠状態は髪の成長を阻害し、抜け毛の増加につながります。
さらに多量の飲酒をした場合、アルコール代謝の過程において肝臓で生成されるアセトアルデヒドが、AGAの原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の増加を促します。そのため、薄毛の進行が早まる恐れがあるでしょう。
日常的に過度な喫煙や飲酒を続けている場合、少しずつ控えることで血流や酸素供給が改善し、髪の成長に必要な環境を整える効果が期待できます。
「AGAの原因とは?ほかの脱毛症との見分け方や対策方法を解説」の記事では、AGAの進行を遅らせるための対策を紹介しているので、ぜひご一読ください。
ここでは、AGAと男性ホルモンに関する質問にお答えします。AGAと男性ホルモンに関する正しい知識をもつことで、より効果的なAGA予防や対策につながるでしょう。
筋トレそのものがAGAを直接悪化させる可能性は低い傾向があります。適度な運動であれば血行を促進し、頭皮環境を改善する効果が期待できるでしょう。
筋トレを行うと一時的にテストステロン値が上昇することはあります。しかし、テストステロン値の上昇がすぐにAGAの原因物質であるDHTの増加につながるわけではないため、注意が必要です。
フィナステリドやデュタステリドなどのAGA治療薬には、一部の方に男性機能に関する副作用が報告されています。AGA治療薬の副作用による症状が現れた場合は、医師に相談のうえで薬の用量調整や別の治療法への変更を検討しましょう。
テストステロン自体の増加が直接薄毛のリスクを高めるわけではありません。国民生活センターの「AGA 治療、植毛」によると、テストステロンがDHTへと変換されることで頭髪の成長を抑制します。
AGAの発症と進行には、テストステロンのDHTへの変換量に加えて遺伝的要因や年齢、生活習慣なども影響します。これらの要素が複雑に絡み合って、個人ごとの薄毛パターンが決まるのです。
参考:国民生活センター「AGA治療、植毛」
AGAは男性ホルモン「テストステロン」が5α-還元酵素と結合し、ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることで発症します。DHTが毛乳頭細胞の受容体と結合して脱毛因子が生成され、髪の毛の成長期が短くなることでAGAが進行します。
AGAの進行を食い止めるためには、医師の処方による治療薬の使用や栄養バランスの取れた食事、質の高い睡眠の確保などの対策が重要です。また、筋トレによるテストステロン値の一時的な上昇が、すぐにAGAの進行につながるわけではありません。適度な運動によって血行が促進され、頭皮環境を改善する効果を期待できます。AGAに悩んでいる場合は、医師に相談してみましょう。