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更新日:2024年01月10日

AGAには男性ホルモンが関係している?AGAの原因と治療法を解説

この記事のまとめ
  • AGAは男性ホルモンのDHT(ジヒドロテストテロン)がレセプターへ結合することでTGF-βを増加させ、薄毛へつながる
  • 男性ホルモン以外にも遺伝、血行不良、皮脂の過剰分泌、外的な要因で薄毛となる

AGAは、男性特有に発症する進行型脱毛症です。AGAを発症する原因には男性ホルモンが深く関わっており、特定の男性ホルモン量を抑えることができれば、AGAの進行を防ぐことができます。 この記事では、AGAと男性ホルモンにはどのような関係があるのか、男性ホルモン以外にも原因があるのかに加え、AGAであると確定した場合、どのような治療を受ければ改善するのかについて詳しく解説します。

AGAは男性ホルモンのDHTが関係している

男性ホルモンとひとことで言ってもさまざまな種類があります。たとえば、骨や筋肉を強くしたり毛を濃くしたりする男性ホルモンもありますが、薄毛の原因となる男性ホルモンも存在しています。AGAに関係しているのは、DHT(ジヒドロテストテロン)と呼ばれる男性ホルモンの一種です。DHTがなぜAGAを引き起こしてしまうのか、AGAとDHTの関係性についてまずは詳しく解説します。

DHT(ジヒドロテストステロン)とは

DHT(ジヒドロテストテロン)とは、男性ホルモンのテストテロンに5αリダクターゼが結びついた結果、発生するホルモンです。そもそもテストステロンには、骨格や筋肉量を増加したり、体毛を濃くしたりと男性らしい身体を作る作用があります。その他に、生殖機能の向上や心身の健康にも関与しており、男性には欠かせない重要なホルモンだといえるでしょう。

一方、5αリダクターゼは酵素の一種で、5αリダクターゼI型と5αリダクターゼII型に大別されます。5αリダクターゼI型は皮脂腺に分布して皮脂の分泌を促しています。テストテロンと結合してAGAの原因となるのは5αリダクターゼII型です。

DHTは、成人以降、AGAに加えて前立腺肥大の原因にもなると考えられており、男性にとって邪魔な存在と思われるかもしれません。しかし、胎児期には男性の外性器の発達へ関与したり、思春期には体毛や声変わりの発現などの二次性徴を促したりと、DHTは男性にとってなくてはならないホルモンなのです。 ジヒドロテストステロンについて詳しく知りたい方は、「ジヒドロテストステロンとは?AGAとの関係性や抑制する方法を解説」も参考にしてみてください。

DHTが薄毛を招くメカニズム

DHTは、テストステロンと5αリダクターゼの結合によって発生し、頭頂部や生え際に存在する毛乳頭細胞にある男性ホルモンのレセプターへと結合します。レセプターへ結合すると、脱毛因子と呼ばれるTGF-βが増加します。

TGF-βは、毛の成長を止めたり、脱毛させたりするように信号を発するものです。DHTが増え、男性レセプターと結合してどんどんTGF-βが増えると、毛髪の成長を抑制する信号が大量に発せられます。すると、成長が阻害される髪の毛が増え、薄毛が進行していくのです。

本来であれば、髪の毛の成長期は2~6年とされていますが、TGF-βが増えて髪の成長が阻害されると、髪の毛の成長期は数ヶ月~1年と短縮されます。そのため、髪1本1本の成長がままならずに、髪が抜け落ちる退行期へと向かってしまい、薄毛が進行します。

男性ホルモン以外にAGAとなる原因

AGAは男性ホルモンが原因となりますが、薄毛は男性ホルモン以外にも原因があるといわれています。ここでは、男性ホルモン以外にAGAとなる原因を解説していきます。なお、病気の影響およびホルモン補充療法など薬による影響は除外しています。

遺伝

男性ホルモン以外に、遺伝もAGAに関係していると考えられます。日本皮膚科学会ガイドラインの1つである「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」でも、遺伝の影響が報告されています。遺伝によって薄毛になる理由は、X染色体上に存在する男性ホルモンレセプターの多さや、5αリダクターゼの活性度の高さが受け継がれるためです。

男性からX染色体を受け継ぐことができるのは女性です。つまりX染色体は、父親ではなく母親側から引き継がれるため、母親の家系に薄毛の男性がいると、薄毛になる可能性が高いと考えられています。 特に、男性ホルモンレセプターの遺伝子は隔世遺伝すると考えられています。つまり、両親が薄毛ではないのに自分が薄毛になっているという場合には、隔世遺伝している可能性が高いといえるでしょう。

参考: 日本皮膚科学会ガイドライン 「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」 National Library of Medicine「Genetic variation in the human androgen receptor gene is the major determinant of common early-onset androgenetic alopecia

血行不良

血行不良により、毛包へ毛髪が成長するのに必要な栄養が届けられなかった結果、毛包の成長が阻害されて薄毛になっている可能性も考えられます。運動不足やストレス、栄養バランスの乱れなど、不規則な生活習慣が血行不良へとつながるため、生活習慣を整えるだけで薄毛が改善されることもあるかもしれません。

皮脂の過剰分泌

皮脂が過剰に分泌されると、頭皮の毛穴が詰まりやすくなります。すると、髪の毛が成長しても細いものとなってしまい、抜けやすくなるのです。 大正製薬の研究によると、粘度の高い皮脂成分であるトリグリセリドが、AGAの原因や進行に影響している可能性があるとされています。血行不良と同様、皮脂の過剰分泌もストレスや睡眠、さらに高脂肪食の摂取が原因と考えられており、日常生活を見直せば改善できる可能性があります。

参考:大正製薬「男性型脱毛症「AGA」患者の頭皮に粘度の高い皮脂成分(トリグリセリド)が多いことを発見

その他の要因

上記以外の要因として主に言われているのが外的な要因です。たとえば、使用しているシャンプーがあわない、帽子やヘルメットを長時間かぶっているといったものが薄毛の原因になっています。この場合、外的な要因を排除すれば薄毛の改善が期待できます。

クリニックで受けられるAGAの治療法

男性ホルモンが原因のAGAは、自然に治癒することはありません。そのため、AGAの症状を改善するにはクリニックでの治療が必要です。治療は主に皮膚科のクリニックでできます。クリニックで受けられる主要なAGAの治療方法は次の3つです。

外用薬治療

1つ目は、外用薬を用いて毛包を頭皮から刺激し、発毛を促進するという治療法です。AGAの治療薬で唯一外用薬として国内で認められているのはミノキシジルです。ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬であり内服薬として流通していました。内服薬のミノキシジルには副作用に多毛症がありますが、この副作用の多毛症をAGAの治療薬として応用したものがミノキシジルの外用薬です。特に5%ミノキシジルは「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」でも推奨度Aとなっており、実際に日本臨床毛髪学会の調査報告によると約35%の方において中程度あるいは高度のAGA改善が報告されています。

しかし、皮膚に直接使用するということもあり、副作用として掻痒感、紅斑、落屑、毛包炎、接触皮膚炎、顔面の多毛などが報告されています。5%ミノキシジルは発毛効果は高いものの、日本人の皮膚には刺激が強いということもあり、副作用に悩まされて使用が継続できなくなる可能性もある点には注意が必要です。

参考: 日本皮膚科学会ガイドライン 「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」 日本臨床毛髪学会「男性型脱毛症と薬治療

内服薬治療

錠剤を服用し、5αリダクターゼII型の活性を抑え、テストステロンがジヒドロテストステロンへ還元されないように阻害します。発毛に対して高い水準の根拠が報告されており、なおかつ重度の副作用の報告が少ないことから、医療機関でまず勧められるのが内服薬治療です。

AGAの内服薬治療で使用する薬剤は、主にフィナステリドとデュタステリドです。特に、フィナステリドは3年間の継続服用で約7割の方に軽度改善効果が認められており、特に軽度のAGAおよび40歳以下の若い症例に対して高い効果が報告されています。副作用としてはリビドー減少、ED、射精障害などの報告がありますが、因果関係は不明でごくまれとされています。内服薬治療は効果の有無にかかわらず6カ月間の継続が推奨されています。なお、内服を終了すると効果が消失するとされています。

AGAの治療薬の種類について詳しく知りたい方は、「AGA治療薬の種類・効果・副作用について、ガイドラインに基づいて解説」も参考にしてみてください。

植毛

外用薬及び内服薬での治療において全く効果がない場合の最終手段として検討されるのが植毛です。 自毛の植毛は国際的には実績が増えつつあり、また良好な生着率も報告されており、男女ともに認められています。一方で人工毛の使用は効果・安全性の根拠が不十分のため、行うべきでないとされています。

まとめ

薄毛になる要因はさまざまなものがありますが、AGAの場合男性ホルモンの1つであるDHTがレセプターへと結合し、毛髪が成長しなくなることで発症します。男性ホルモンが原因である場合には自然治癒が期待できず、クリニックや病院などでの治療をする以外改善の方法がありません。 クリニックではまず最初に外用薬治療、内服薬治療が提案され、それでも効果が見られなかった場合において植毛が検討されます。市販で購入できる薬剤もありますが、薬には副作用もあるため必ず医師へ相談し、クリニックやオンライン診療で薬を処方してもらうのが望ましいです。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会