更新日:2026年09月25日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
「以前よりも抜け毛が増えている気がする…」と、何かの病気の予兆ではないかと不安を感じる方もいるかもしれません。毎日50〜100本程度の抜け毛は正常な範囲で、必ずしも病気とは限りません。ただし、抜け毛の急増や部分的な脱毛、頭皮や全身の症状を伴う場合は、病気が隠れていることもあります。この記事では、病気による抜け毛と正常な抜け毛の見分け方や原因になりうる病気の種類、適切な受診先と対処法を解説します。
髪が多く抜けている気がすると、「病気なのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、抜け毛の増加は必ずしも病気のサインとは限りません。

髪の毛は「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルを繰り返しており、休止期に入った髪が自然に抜け落ち、新しい髪に生え変わります。そのため、毎日50〜100本程度の抜け毛は正常な範囲内と考えられています。
こうしたサイクルを理解したうえで、抜け毛が病気によるものか判断するには、脱毛量だけでなく期間や部位、症状などを総合的に検討しましょう。
季節変動や休止期などの生え変わりのタイミングによっては、一時的に抜け毛が増えることがあります。
また、抜け毛の量は日によっても異なります。ブラッシングをしなかったり数日頭を洗わなかったりすると抜け毛が髪に絡んだまま抜け落ちずに溜まり、その後の洗髪時に多く抜けたと感じることもあるでしょう。
このような日々の増減は、ヘアサイクルなどに伴う自然な変動の範囲内です。髪の健康状態は、短期間の抜け毛の量ではなく、長期的な変化や頭皮の状態から判断しましょう。
抜け毛の背景に何らかの病気が隠れていないか判断するポイントは、主に以下の3つです。
それぞれの症状がないか、確認しておきましょう。
これまでの抜け毛の量と比べて突然抜け毛が増えた場合は注意が必要です。枕や排水口に残る髪の量やシャンプー時の抜け毛の量などをチェックし、急な変化が感じられた場合、何らかの問題が生じている可能性があります。
分け目が広がった、前頭部や頭頂部だけが薄くなってきたなど、頭の特定の部分だけが薄くなる場合、円形脱毛症やAGAなどの脱毛症が疑われます。
かゆみや赤み、痛みなどの皮膚症状が併発している場合は、頭皮の炎症や感染症が原因の可能性があるため注意が必要です。頭皮のトラブルを放置すると症状が悪化する恐れがあるので、早めに皮膚科に相談しましょう。

抜け毛が一時的に増えただけで、病気と断定できるわけではありません。ただし、背後に何らかの疾患が隠れている場合は治療が必要です。原因を正確に特定するためにも、まずは医師への相談を検討しましょう。
ここでは、抜け毛と病気の関連性を判断するためのセルフチェックポイントをご紹介します。抜け毛の本数は参考程度に考え、以下の特徴に当てはまる点がないかを確認しましょう。
| 症状・状態 | 受診する目安 | 受診先 |
|---|---|---|
| 抜け毛の量が明らかに増加している | 数週間続いた場合 | 皮膚科 |
| 部分的に髪が抜けて、地肌が目立つ | できるだけ早く | 皮膚科 |
| 頭皮の赤み・かゆみ・フケ・痛みがある | できるだけ早く | 皮膚科 |
当てはまる場合は、専門的な治療が必要なサインかもしれないので、皮膚科の受診を検討しましょう。
抜け毛の量が明らかに増え、数週間~数ヶ月以上続く場合は、何かしらの問題が起きている可能性があります。
短期的な変化であれば、季節変動や生え変わりによる一時的なものの可能性があります。このケースでは、数日から1週間程度で元に戻るのが一般的です。
しかし、抜け毛の増加が数週間続く場合は、一過性の現象ではない可能性があります。数週間継続して明らかに抜け毛の量が増えているようであれば、皮膚科に相談することが推奨されます。
頭髪全体ではなく、部分的に髪が抜けて地肌が目立つようになった場合は、円形脱毛症や牽引性脱毛症などの可能性があります。
単発型や多発型の円形脱毛症はコイン大の円形または楕円形の脱毛斑ができる脱毛症です。自己免疫反応が関与すると考えられており、アトピー素因などが関連する場合があります。

また、髪型によるストレスで生じる牽引性脱毛症では、生え際や分け目など髪を強く引っ張る部位に沿って脱毛が起こります。常にポニーテールやきつめの三つ編みなどをしている方は特に注意が必要です。
これらの局所的な脱毛は単なる生理的な抜け毛とは異なるため、気づき次第すぐに医師に相談することが大切です。
抜け毛に加えて頭皮に赤みやかゆみ、フケ、痛みなどの症状がある場合は、皮膚疾患の可能性があります。
頭皮の赤みやかゆみは、脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎、乾癬などの皮膚疾患で見られます。ほかにも、乾燥性皮膚炎やアトピー性皮膚炎、蕁麻疹などさまざまな原因が考えられ、自分で原因を特定することは難しいでしょう。
また、これらの病気はアレルギー反応や炎症、感染などが原因であると考えられるため、皮膚科での治療が必要です。早めに皮膚科の受診をご検討ください。
髪が抜ける原因になりうる病気には、頭皮で起こる脱毛症だけでなく、甲状腺や貧血、膠原病といった全身(内臓)の病気も含まれます。原因によって受診先や治療法が異なるため、まずはどのような病気が関係するのかを把握しておくことが大切です。医師の診断のもとで原因に合わせた対応を行うことで、症状の改善につながる場合があります。
| 髪が抜ける原因になりうる病名 | 受診先 |
|---|---|
| 男性に多い:AGA(男性型脱毛症) | 皮膚科・AGA専門クリニック |
| 女性に多い:FAGA(女性型脱毛症)・びまん性脱毛 | 皮膚科 |
| 自己免疫が関与:円形脱毛症 | 皮膚科 |
| 全身疾患:膠原病(全身性エリテマトーデスなど) | リウマチ・膠原病内科 |
| ホルモン異常:甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病) | 内科・内分泌内科 |
| 血液・栄養:鉄欠乏性貧血 | 内科・婦人科 |
| 代謝の低下:肝機能の低下 | 内科 |
| 頭皮トラブル:脂漏性皮膚炎・乾癬など | 皮膚科 |
| 感染症:梅毒など | 皮膚科・感染症科 |
| 産後脱毛(分娩後脱毛) | 婦人科・皮膚科 |
| 薬剤性脱毛(治療薬の影響) | 薬を処方してくれた医師 |
| 感染後:COVID-19後の脱毛(休止期脱毛として) | 皮膚科 |
| 外力・習慣:牽引性脱毛症・抜毛症 | 皮膚科・心療内科・精神科 |
ここでは、髪が抜ける原因になりうる病気を紹介します。脱毛の原因や適切な受診先を知るためにお役立てください。
AGA(男性型脱毛症)は、徐々に抜け毛が進行し、生え際や頭頂部の毛髪が薄くなっていく進行型の脱毛症です。10代でも発症する可能性があり、年を重ねるほど発症率が高まる傾向があります。
AGAが発症する原因は、さまざまな要因が関連しているとされていますが、遺伝や男性ホルモンの影響が大きいと考えられています。
AGAは徐々に進行していくため早期の発見が大切です。早い段階で対処することで進行を遅らせる効果が期待できるとされているため、AGAの可能性が疑われる場合は、早めに皮膚科やAGA専門クリニックに相談しましょう。
FAGA(女性型脱毛症)は女性に見られる脱毛症です。男性のAGAとは異なり、生え際が後退したり頭頂部の毛が薄くなるのではなく、分け目やつむじが透けて見えるなど髪全体のボリュームが減るのが特徴です。
FAGAの原因は、加齢や出産によるホルモンバランスの変化や遺伝的な要素が考えられます。FAGAには、健康的な髪に欠かせないエストロゲンという女性ホルモンが関わっています。したがって、分泌量が変化しやすい妊娠・出産時や、更年期などに毛のボリュームが減ったと感じる方が多いようです。
抜け毛だけでなく、月経不順や顔のほてりなどの更年期に関する症状も伴う場合は、婦人科と皮膚科の両方に相談するのがよいでしょう。
円形脱毛症は自己免疫性疾患の一種で、髪が円形に抜け落ちる疾患です。
抜け毛の増加に気づいたとき、自己判断で対処するのは危険です。ここでは、様子を見てよいケースと早めに受診すべきケースを明確にし、適切な対応方法をご説明します。
抜け毛の増加が軽度であれば、まずは生活習慣の改善から始めるとよいでしょう。以下のような偏った食事や睡眠不足といった生活習慣は、抜け毛を増やす要因となることがあります。

具体的には、以下のような生活習慣の改善を意識しましょう。

働く世代は最低6時間の睡眠が必要とされています。睡眠の質と量を確保するためには、睡眠前のスマートフォンの使用を避け、規則正しい生活リズムを保つことが大切です。また、バランスのよい食事を心掛け、特にタンパク質や亜鉛、鉄分、各種ビタミンなどの髪の成長に必要な栄養素を意識して摂取するとよいでしょう。さらに、シャンプーの際は事前にブラッシングと予洗いをして十分に汚れを落としたうえで、爪を立てないように洗うのがポイントです。
なお、先に述べたような病気が疑われる症状がある場合は、生活習慣の改善だけに頼らず、早めに医師へ相談しましょう。
参考:厚生労働省「知っているようで知らない睡眠のこと」
以下のような症状がある場合は、早期の診断と治療が重要となる脱毛症の可能性があるため、症状が気になった時点でなるべく早く皮膚科に相談しましょう。
| 症状 | 可能性がある病名 | 皮膚科に相談すべき理由 |
|---|---|---|
| 円形に抜けた | 円形脱毛症 | 放置すると複数の脱毛斑が出現し、悪化する恐れがあるため |
| 頭皮症状(かゆみや赤み、フケ、痛みなど)が強い | 皮膚疾患(脂漏性皮膚炎や乾癬など) | 放置や自己判断での市販薬利用で治りにくいため |
| 生え際・頭頂部が薄い | AGA | 進行性であり、早期治療でより多くの選択肢から治療法を選べるため |
また、女性で分け目やつむじが透けて見えるなど髪全体のボリュームが減ったと感じる場合、FAGAの可能性があるため、皮膚科もしくは婦人科に相談することをおすすめします。
抜け毛と共に全身症状がある場合は、皮膚科だけでなく内科や婦人科の受診も検討しましょう。特に以下の症状がある場合は、甲状腺疾患などの内分泌疾患が関連している可能性があるため、内科や内分泌内科の受診をおすすめします。
また、抜け毛と同時に月経不順や生理痛の悪化、不正出血などの月経トラブルが起こっている場合、ホルモンバランスの乱れが原因となっている可能性があるため婦人科を受診しましょう。
オンライン診療とはインターネットを通じて自宅や好きな場所から診察を受けられるサービスのことです。スマートフォンやパソコンを使い、カメラ付きビデオ通話で医師が症状の経過や頭皮の状態を確認し、治療法を提案します。なお、音声だけでの通話での診療はできません。
症状によっては対面診療が望ましいケースもあるので、自分の症状がどちらに向いているのか把握しておくことが大切です。ここでは、それぞれに向いている人の特徴を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
オンライン診療は以下のようなケースに特に適しています。
AGAやFAGAの初期相談は、オンライン診療が向いています。状態の確認や治療方針の説明はカメラ付きビデオ通話で行うのが基本です。
また、通院のための移動時間や待ち時間を省けるため、時間を作るのが難しい方や通うのが難しい方にとって便利な手段となるでしょう。
また、「抜け毛が気になるけれど、病院に行くほどでもない」と迷っている場合、まずは気軽に受診しやすいオンライン診療で相談するのがおすすめです。
以下のようなケースでは、オンライン診療より対面診療が望ましいと考えられます。
頭皮に赤みやかゆみ、痛み、発疹など炎症症状がある場合は、詳細な診察が必要になるため画面越しではなく直接診てもらうのが望ましいといえます。オンラインでのカメラ映像では見えにくい皮膚の状態や微細な変化も、対面診察では確認できるためです。
また、脱毛が急速に進行しているケースや倦怠感や発熱など全身症状を伴うケース、円形脱毛症の疑いがあるケースも対面診療をおすすめします。これらは早期に治療を開始したほうがよいほか、検査が必要になることがあるためです。
医療機関を受診する際、通常は以下のような内容を聞かれます。聞かれた際に、スムーズに答えられるよう事前に準備しておきましょう。
これらの情報をもとに、患部などを総合的に診ることで、医師はどのような治療をするか判断します。また、服薬中の薬を確認するのは薬剤性脱毛の可能性を判断するためだけではありません。今後処方される可能性のある薬と、現在服用中の薬との飲み合わせなどを確認する目的もあるため、関係がないように思えることでもしっかり伝えましょう。

ここでは、髪が抜ける病気に関するよくある質問について回答します。抜け毛が気になる方はぜひ参考にしてみてください。
ストレスで髪は抜けますか?
ストレスや自律神経の変化が毛包の環境に影響を与える可能性があります。また、強い肉体的・精神的ストレスによってヘアサイクルが乱れ、休止期脱毛が起こることもあります。休止期脱毛では、ヘアサイクルの休止期に入る髪の割合が増え、抜け毛が増加し、頭部全体にびまん性の抜け毛が増えるのが特徴です。ストレスによる抜け毛は一般的に一時的なものとされ、ストレス要因が軽減されることで徐々に変化が見られる場合があります。
しかし、ストレスが長期間継続する場合や、強いストレスが繰り返し訪れる場合は、抜け毛も慢性化する可能性があります。その場合は、自然回復が難しいケースがあるので、医療機関を受診することをおすすめします。
急激なダイエットで髪が抜けるのはなぜ?
急激なダイエットによる抜け毛の増加は、主に栄養不足と代謝変化の2つの要因が関係しています。
厳しい食事制限によって髪の成長に必要なタンパク質や鉄分、亜鉛、ビタミンなどの栄養素が不足します。髪の毛の主成分はケラチンというタンパク質であり、栄養不足は直接髪の成長に影響を与えるため注意が必要です。
また、エネルギー配分を生命維持に重要な器官に優先的に行うよう代謝が変化します。髪の成長は生命維持に優先される機能ではないため、このような状況では髪への栄養供給が後回しになりやすいのです。
ダイエットによる抜け毛は、軽度であれば食事内容を見直すことで比較的短期間で回復しますが、長く続くようであれば医師に相談しましょう。
内臓の病気が原因の抜け毛は治りますか?
原因となる病気の治療を進めることで、抜け毛の症状が和らぐ場合があります。甲状腺疾患や貧血などでは、治療で状態が安定すると、数ヶ月かけて少しずつ髪の状態が戻っていくのが一般的です。ただし、回復の度合いや期間は病気の種類や程度によって異なります。まずは原因を特定するために、気になる症状があれば医療機関を受診しましょう。
女性の抜け毛で婦人科を受診すべき症状は?
女性の抜け毛は内分泌(ホルモン)の変化と密接に関連していることが多いため、以下のようなケースでは婦人科の受診を検討しましょう。
・月経異常(生理不順や過多月経、無月経など)
・産後の抜け毛が1年以上続く場合や極端に抜け毛が多い場合
・甲状腺疾患の疑いがある(倦怠感や体重変化、のどの腫れ、動悸など)
・貧血症状がある(めまいや疲れやすさ、顔色の悪さなど)
これらの症状がある場合、抜け毛の原因が婦人科での治療を要する病気である可能性が高いと考えられます。適切な検査を受け、抜け毛の根本原因を特定して治療をするためにも婦人科を受診することをおすすめします。
髪が抜ける量が増えたからといって、すべてが病気のサインであるとはいえません。ヘアサイクルによる一時的な変動も多いため、短期間の変化に過度な不安を抱く必要はないでしょう。 ただし、突然抜け毛が急増した場合や、特定の部位だけが薄くなる場合、頭皮の赤みや痛みを伴う場合は注意が必要です。 病気が関係する抜け毛を見分けるポイントは、「抜け毛の急増」「局所的な脱毛」「症状の併発」の3つです。 数週間以上続く明らかな抜け毛の増加や、円形・部分的な脱毛、頭皮のかゆみや赤みといった症状がある場合は、医師への相談を検討しましょう。 背景には、AGAやFAGA、円形脱毛症、頭皮の皮膚疾患に加え、甲状腺疾患、貧血、膠原病といった全身(内臓)の病気が隠れていることもあります。 頭皮の症状はまず皮膚科、全身症状を伴う場合は内科や婦人科など、症状によって受診先が異なるため自身の状態に合わせて受診しましょう。 放置すると悪化する病気もあるため、抜け毛が気になる場合は生活習慣を見直しつつ、病気が疑われる症状があるときは早めに受診することが回復への第一歩です。
厚生労働省「知っているようで知らない睡眠のこと」
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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自己免疫性疾患とは、免疫に関わる抗体が、自身の細胞を異物だと誤認して攻撃してしまう疾患のことです。自身の細胞が攻撃されることで毛包の活動が抑制され、脱毛斑が現れます。
脱毛斑は1ヶ所のこともあれば、進行して複数ヶ所や頭部全体に現れることもあります。

重症化すると治療が長引くこともあるため、円形の脱毛斑を見つけたらできるだけ早期に皮膚科を受診しましょう。
膠原病でも抜け毛が起こることがあります。膠原病は、免疫の異常によって皮膚や関節、内臓などに炎症が起こる病気の総称です。なかでも全身性エリテマトーデス(SLE)は国の指定難病で、皮膚症状の一つとして脱毛が見られる場合があります。
脱毛の現れ方には、髪全体が薄く細くなって切れやすくなるタイプと、頭皮に赤み(紅斑)を伴うタイプがあるとされています。発熱や関節の痛み、顔の発疹、強い倦怠感など、髪以外の全身症状をあわせて感じることが多いのも特徴です。脱毛と合わせてこれらの全身症状がある場合は、皮膚科に加えてリウマチ・膠原病内科などに相談しましょう。
甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、ヘアサイクルに影響を及ぼし、抜け毛を引き起こすことがあります。甲状腺ホルモンに関係する疾患としては、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や橋本病(慢性甲状腺炎)などが挙げられます。
バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、成長期→退行期→休止期のサイクルが短くなり、成長期の毛が休止期に移行しやすくなるため、抜け毛が増えてしまうのです。バセドウ病の場合、ほかにも動悸や発汗、体重減少などの症状がみられます。
一方、橋本病では甲状腺機能が低下し、毛包細胞の活動性が低下して毛髪の成長期が維持しにくくなることで、成長途中の毛髪が抜け落ちてしまいます。橋本病の場合、倦怠感や寒さを感じたり、便秘になったりするためこれらの症状が見られないか確認してみましょう。
脱毛以外にこれらの身体症状がある場合、内科や内分泌内科の受診を検討しましょう。
鉄欠乏性貧血は抜け毛の原因となることがあり、特に女性に多く見られる病気です。 鉄欠乏性貧血では、毛母細胞の細胞分裂に必要な鉄が不足するため、毛髪の成長期が短縮し、髪が細くなり早く抜けてしまうことがあります。 貧血による抜け毛は、全体的なボリューム低下や地肌が透けるといった変化が見られるのが特徴です。鉄欠乏性貧血では、抜け毛のほかにも疲労感や倦怠感、めまい、頭痛、息切れなどの症状を伴います。過度なダイエットや偏食、生理の出血量が多い方は注意が必要です。 食事だけで改善するのは難しいことも多いため、内科や婦人科での血液検査と治療を受けましょう。
肝臓は栄養やタンパク質の代謝を担う臓器のため、慢性肝障害や肝硬変などで肝機能が低下していると、髪の状態に影響する可能性があります。肝機能が低下すると毛母細胞の増殖に必要な蛋白・亜鉛・鉄・ビタミンなどが不足し、髪が成長しにくくなると考えられています。
ただし、肝機能の低下と抜け毛の直接的な関係を示す大きな研究は限られており、抜け毛だけで肝臓の状態を判断することはできません。倦怠感や食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるといった症状をあわせて感じる場合は、内科で相談しましょう。
頭皮のトラブルが抜け毛の原因になることもあります。脂漏性皮膚炎は頭皮や鼻、頬など皮脂の分泌が多い部位に炎症が起こるのが特徴です。乾癬は赤色に盛り上がった皮膚に銀白色のフケのような垢が付着する炎症性疾患です。
いずれも頭皮に発症するとフケやかゆみの症状が出ることがあり、掻いて悪化することで抜け毛が増えることがあります。
脂漏性皮膚炎の原因であるマラセチア菌はカビの一種で、抗真菌薬や、抗炎症作用があるステロイドを使用して治療するのが一般的です。乾癬の原因として、免疫異常や遺伝的要因などが関与すると考えられています。
いずれも自己判断での原因特定や治療は難しいので、皮膚科の受診を検討することが大切です。
梅毒などの感染症が原因で脱毛が起こることもあります。血液を介して全身に症状が広がる第二期では、不規則な斑状の脱毛が現れることがあります。
梅毒による脱毛には、全身の倦怠感や発熱、赤い発疹などの症状を伴うことが多く、適切な抗菌薬による治療が行われるのが一般的です。心当たりがある場合や、原因不明の発疹と脱毛が同時に起きている場合は、早めに皮膚科や感染症科を受診しましょう。
産後の抜け毛は多くの人が経験する一時的な変化です。妊娠中に増加するエストロゲンとプロゲステロンによってヘアサイクルの成長期が長くなると、通常抜けるはずの毛髪が抜けにくくなります。出産後にエストロゲンの分泌量が減ることで成長期だった髪の毛が休止期に移行し、一気に抜け落ちるというのが産後脱毛の仕組みです。
産後脱毛は出産から1〜6ヶ月ほどで始まり、シャワー後やブラッシング時に目立つようになりますが、多くは自然に改善します。産後1年以上経っても抜け毛が続く場合は産後のストレスや自律神経の乱れなどほかの原因が考えられるため、婦人科や皮膚科に相談しましょう。
一部の薬剤は副作用として脱毛を引き起こすことがあります。抗がん剤や抗凝固薬、高血圧治療薬、高脂血症治療薬、抗うつ薬など、さまざまな薬剤で髪が抜ける可能性があります。
脱毛の程度や発現時期は個人差があり、薬剤の種類や量、体質によってもさまざまです。たとえば、抗がん剤の場合、治療開始から数週間以内に広範囲に及ぶ脱毛が見られます。一方で抗がん剤以外での脱毛は、服用開始から2~4ヶ月程度で生じることが多いです。いずれも服用中止から約3~6ヶ月程度で再び発毛すると考えられています。
薬の服用中止は自己判断で行うのではなく、抜け毛が気になる場合はまずは処方してくれた医師に相談しましょう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した後に、抜け毛が増える症例が報告されています。原因についてはまだ不明な点が多いものの、発熱や全身炎症、強い身体的ストレスなどによりヘアサイクルが乱れ、休止期脱毛が起こると考えられているようです。
新型コロナウイルス感染後の脱毛は、発熱や体調変化が起きた数ヶ月後に症状が出るといわれています。基本的には、脱毛の症状は一時的なもので、多くの場合は自然回復しますが、必要に応じて生活習慣の改善や外用薬などが検討されることもあります。
ただし、長期化する場合や極端に症状が重い場合はほかに原因がある可能性もあるため、症状が続く場合は皮膚科へ相談しましょう。
ポニーテールや編み込み、オールバック、コーンロウなど髪をきつく結ぶことで、髪の根元に慢性的な牽引力がかかり、引っ張られている部分のみ薄毛になるのが牽引性脱毛症です。髪型を変えたり結ぶ位置を変えたりすることで回復することが多いですが、長期間続くと永久的な脱毛になる可能性もあります。
髪型以外にも、帽子やヘルメットなどを日常的に被ることで牽引性脱毛症となることもあるため、髪を結ぶ習慣がない方も注意が必要です。
一方、抜毛症は心理的ストレスなどが原因で無意識に髪を抜いてしまう疾患です。自分で気づかないうちに髪を引っ張ったり、抜いたりする習慣があり、毛髪だけでなく眉毛や睫毛などを抜く場合もあるでしょう。
抜毛症はストレスや強迫観念と関連しているため、皮膚科だけでなく心療内科や精神科での治療が必要になることもあります。
治療が遅れると、症状の改善が遅れる可能性があります。症状に応じて適切な診療科を選び、早めに相談することが大切です。
以下のケースに当てはまる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
痛みや発疹、出血などの症状を伴う場合、感染症や炎症性疾患の可能性があります。また、発熱や倦怠感、食欲不振、体重の急激な減少などの全身症状がある場合も、内科疾患の可能性があるため注意が必要です。
これらの症状は自己判断で様子を見るのではなく、気になった時点でできるだけ早く医療機関にかかりましょう。

抜け毛が気になっても、病院に行くほどではないと自己判断し、つい「まずは市販の育毛剤やサプリメントで様子を見よう」と思うかもしれません。しかし、背景に治療が必要な病気が隠れていると、対処が遅れてしまうことがあります。数週間以上抜け毛が続く場合や、全身の不調を伴う場合は、早めに受診して原因を確かめることをおすすめします。
患部が分かりやすい写真を用意しておくとオンライン診療で役立つことがあります。症状が出てから受診までに時間が空く場合は、時間経過によってどう変化したかを写真に記録しておくと医師の診察に役立ちます。