更新日:2024年02月14日
生え際の産毛はAGAの初期症状?治療法とセルフケアについて解説
- 生え際の産毛が目立つ原因はヘアサイクルの乱れである
- ヘアサイクルが乱れる原因は、AGAである可能性が高い
- AGAは、AGA専門クリニックで治療可能
- 治療薬には、AGAの原因となるDHTの生成を抑える内服薬を使用する
- セルフケアで生え際の産毛を太くするには、生活習慣の改善やストレスの解消を行う
生え際の産毛が目立ってくると、生え際が後退して見え、ヘアセットも決まらなくなってしまいます。生え際の産毛はAGA(男性型脱毛症)の初期症状である可能性も考えられるため、早めに専門医に相談することが重要です。
本記事では生え際の産毛の原因からAGAの初期症状、治療法や生え際の産毛を改善するためのセルフケアについて解説します。
生え際に産毛が生える原因は?
生え際の産毛の原因は、ヘアサイクルの乱れだと考えられます。ヘアサイクルとは、毛髪が成長し始めてから抜け落ちるまでの周期のことです。
ヘアサイクルは新しい髪の毛が生えてきて長く太くなる成長期、髪の成長が弱まる退行期、髪の成長が止まる休止期の3つに分けられます。正常なヘアサイクルでは成長期が3〜5年、退行期が2週間、休止期が2〜3ヶ月で、休止期が終わると再び成長期に入ります。 生え際の産毛が目立つ場合は、このヘアサイクルが乱れ、産毛が太く長く成長しないうちに退行期、休止期に移行していることが考えられます。
ヘアサイクルに乱れが生じるのはなぜか、その理由はさまざまです。栄養の偏りや睡眠不足など生活習慣の乱れ、不衛生な頭皮環境が悪影響を及ぼしている場合もあります。しかし、生え際の産毛や後退が目立つ場合、ホルモンの作用により脱毛を引き起こすAGA(男性型脱毛症)が原因である可能性が高くなります。
ヘアサイクルについて詳しく知りたい方は、「ヘアサイクル(髪の毛の周期)とは?オンライン診療でAGA対策を!」も参考にしてみてください。
AGAの初期症状
AGA(男性型脱毛症)の初期症状として、次の3つが挙げられます。
- 抜け毛が増える
- 生え際や頭頂部の髪が薄くなる
- ヘアセットがしにくくなる
AGAは放置すると症状が進行し、時間が経つと治療を行っても髪の毛の再生が難しくなる場合も考えられる病気です。当てはまるものが多い場合は一度専門機関を受診することをおすすめします。
抜け毛が増える
AGA(男性型脱毛症)により髪の成長期が短縮されてしまうため、抜け毛の量が増えます。
人の髪の毛は1日に100本程度抜けるといわれています。しかし、起床時に枕に髪の毛がたくさん残っていたりシャンプー時にたくさん髪の毛が抜けたりする場合は、AGAによる脱毛が疑われます。抜け毛の中に太い毛と細い毛が入り混じっている場合も、成長途中の髪の毛が抜けている可能性があるため、注意が必要です。
生え際や頭頂部の髪が薄くなる
AGAは、男性ホルモンの1種であるDHT(ジヒドロテストステロン)が、前額部や頭頂部の男性ホルモンレセプターに結合することによって、脱毛を引き起こします。DHTは男性ホルモンの1種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素によって変換されることで生成されます。
脱毛を引き起こす5αリダクターゼは、主に前頭部や頭頂部に多く分布しているため、生え際の後退や頭頂部の薄毛が目立つようになります。生え際の産毛に加え、頭頂部の地肌が透けて見える場合はAGAの可能性が高いでしょう。
ヘアセットがしにくくなる
AGA(男性型脱毛症)を発症すると、生え際や頭頂部の髪の毛が十分に成長することができず、軟毛化します。ヘアセットの際には、髪の毛一本一本のハリやコシが重要です。軟毛化でハリやコシが失われた弱い髪の毛が増えると、髪の毛の立ち上がりが悪くなり、ヘアセットがしにくくなります。
最近髪型がきまらないと感じることが増えた場合は、注意が必要です。
AGAの治療に使用される主な治療薬
AGAは、AGA専門クリニックで治療が可能です。治療は、日本皮膚科学会のAGAガイドラインで推奨されている治療法に基づいて行われます。ここでは、クリニックでAGAと診断された場合、具体的にどのような治療を行うかを解説していきます。
フィナステリド・デュタステリド
AGAの原因であるジヒドロテストステロンは、男性ホルモンの1種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素と結合することで生成されます。フィナステリド、デュタステリドはどちらも5αリダクターゼの働きを抑える内服薬であり、ジヒドロテストステロンの生成を妨げ、脱毛を抑制する効果があります。
どちらの薬もごく稀に肝機能障害やED(勃起不全)などの副作用が報告されており、特に生殖器系の副作用においては、デュタステリドの方がわずかに高い傾向があります。 フィナステリドとデュタステリド、どちらの薬を使うかは、症状の進行度合や副作用を踏まえ専門医とよく相談して決めることが重要です。
ミノキシジル
ミノキシジルは、患部に直接塗布するタイプの外用薬です。髪の毛を生成する毛母細胞を増殖させ、発毛を促し毛量を増やす効果があります。AGAがある程度進行している場合、フィナステリドなどでAGAの進行を抑制する治療に加えて、ミノキシジルの外用薬を併用することが多いです。患部に直接塗布するため、皮膚が弱い場合、かゆみや赤みが出ることがあります。
AGA治療薬については、「AGA治療薬の種類・効果・副作用について、ガイドラインに基づいて解説」でも詳しく解説しています。
参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会ガイドライン」
治療開始後の初期脱毛について
AGAの治療を始めると、治療初期に脱毛が増えることがあります。これを初期脱毛と呼びます。初期脱毛は、乱れていたヘアサイクルが正常に戻り、発毛が促されて古い髪の毛が抜けることで起こります。 AGAの治療薬であるフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルを使用すると、初期脱毛が強く出ることが多いです。早ければ薬の内服・使用を始めて1週間で抜け毛が増える場合もあります。
初期脱毛は治療開始から2ヶ月程度で落ち着く場合がほとんどです。心配する必要はありませんが、長引く場合や、抜け毛だけでなく強いかゆみやかぶれがある場合はすぐに医師に相談しましょう。
生え際の産毛を太くするセルフケア
髪の毛を太くし、生え際の産毛を目立たなくするためには、日常生活でのセルフケアも重要です。生え際の産毛が目立つ原因がAGAの場合でも、治療とあわせてセルフケアを行うことで早く改善させることが期待できます。ここでは産毛を太くするためのセルフケアについて紹介していきます。
生活習慣を改善する
栄養の偏った食事や睡眠不足はAGAの進行を促進させてしまう可能性があります。高脂質・高カロリーな食事は頭皮環境を悪化させ、睡眠不足は髪の成長を促す成長ホルモンの分泌に悪影響を及ぼすためです。食生活を見直し、質の良い睡眠をとることが大切です。
食事では、髪の毛の主成分であるタンパク質を多く含む肉類や大豆製品、タンパク質の合成に欠かせない亜鉛や、毛母細胞を活性化させるビタミンB2を含む牡蠣やレバーなどを意識して食べると良いでしょう。 また、質の良い睡眠をとるためには、就寝の1〜2時間前にぬるめのお湯で入浴することがおすすめです。お湯の温度は39~40℃で、10~15分浸かるのが目安です。
ぬるめのお湯に浸かることで副交感神経が優位にはたらき、脳の興奮を落ちつかせリラックスすることができます。入眠もしやすくなるでしょう。
ストレスを解消する
過度なストレスは自律神経を乱し、頭皮の血流を阻害してしまいます。頭皮の血流が悪くなると、髪の毛に十分な栄養が行き届かず、抜け毛を促進させる可能性があるため、できるだけストレスを溜めない生活を心がけましょう。好きなことに没頭する時間を持つことや、心の内を誰かに話すこともストレスの軽減につながります。
頭皮環境を整える
頭皮を清潔に保つことは育毛の第一歩。頭皮環境が悪くなると髪の毛が細くなり、薄毛につながる可能性が高くなります。良い頭皮環境とは、血行が良く、皮脂と水分のバランスが適切な状態を指します。
髪の毛は毛根にある毛母細胞が細胞分裂を繰り返すことで成長するため、頭皮環境が悪化して血行が悪くなると、毛母細胞に十分な栄養が行き渡らず、細く抜けやすい髪の毛が生えてきてしまうのです。
とはいえ、皮脂を落とすために一日に何度も洗髪したり、洗浄力の高いシャンプーを使ったりすると頭皮が乾燥し、かゆみやフケの原因になってしまいます。アミノ酸系のシャンプーなどヘアケア用品は肌に優しいものを選び、入浴時などに頭皮のマッサージをするのもおすすめです。
マッサージをするときは爪を短くし、指の腹や手の平の付け根部分で頭皮をほぐすようにやさしく行いましょう。マッサージは1日3〜4分で十分です。やりすぎると頭皮にダメージを与えてしまうので、注意しましょう。
髪の毛を太くする方法については、「髪が細くなった…?太くする方法や原因について解説」でも詳しく解説しています。
まとめ
生え際の産毛が目立つ原因はヘアサイクルの乱れです。ヘアサイクルの乱れにはAGAが関与している可能性が高く、AGAの初期症状には産毛の増加や生え際の後退が挙げられます。
AGAは進行性であり、治療を始めないと薄毛の範囲が広がる可能性があるため、症状を改善したいと考えているなら放置は禁物です。ガイドラインで推奨されている効果の高い治療法があるので、少しでも気になる場合は早めに専門機関を受診することをおすすめします。 また、生活習慣やヘアケアの見直しなど、セルフケアを取り入れることで産毛を太くすることも期待できます。生え際の産毛が気になってきたら、そのままにせずできることから取り組んでいきましょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会