更新日:2024年03月13日
筋トレをするとはげるって本当?筋トレと薄毛の関係について解説
- 筋トレをしたからといって直接はげに結びつくことはない
- 筋トレによって男性ホルモンや活性酵素が増えるため、はげるという誤解につながっている
- 筋トレをすることで血流改善や成長ホルモンの分泌が起こるため、むしろはげの対策になる
- 筋トレ後は、頭皮の汗を放置せず、洗ったり汗を拭きとったりすると良い
男性の中には、体を鍛えるために筋トレをしているという方も多いでしょう。しかし、筋トレによって髪が薄くなったりはげたりするといううわさを耳にして、自分がはげてしまうのか不安になっている方もいるかもしれません。
そこで本記事では、筋トレとはげることの関係性について解説します。また、筋トレがむしろはげの対策になることや、筋トレ後の頭皮ケアについても紹介するため、筋トレを習慣にしている方はぜひ参考にしてみてください。
筋トレではげることはない
結論からいうと、筋トレをしたからといってはげることはありません。はげはAGAと呼ばれる男性型脱毛症によるものが多く、AGAの発症には主に遺伝的な要因が関係しているとされています。
AGAは、男性ホルモンの1種であるテストテロンが、5αリダクターゼという酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)という男性ホルモンに変換されることで引き起こされます。このジヒドロテストステロンが男性ホルモンレセプターに結合することで脱毛因子が分泌され、AGAが進行していきます。 5αリダクターゼには活性度という指標があり、この活性度が高い人ほどテストステロンをジヒドロテストステロンへと変換させやすくなります。
5αリダクターゼの活性度や男性ホルモンレセプターの感受性が高いと薄毛になりやすい傾向があり、これらは遺伝による要因が大きいとされているため、筋トレとはげには関係性がないとされているのです。
AGAについてについて詳しく知りたい方は、「AGAとは?抜け毛・薄毛が進行する男性型脱毛症について分かりやすく解説」も参考にしてみてください。
筋トレをするとはげると言われる理由
それではなぜ、筋トレをするとはげるといわれているのでしょうか。筋トレをするとはげるといわれている理由には次の2つが考えられています。
筋トレをするとテストステロンが増えるため
筋トレをするとテストステロンの分泌が促進されるため、はげる原因になるという誤解が生まれたと考えられます。
前述したように、テストステロンは5αリダクターゼと結びつくとジヒドロテストステロンとなりますが、5αリダクターゼの活性度が高くなければ、テストステロンが増えてもジヒドロテストステロンが増えることはありません。
また、テストステロンの分泌のピークは20代とされていますが、20代の若い年齢の方のAGA発症率は、ほかの年代と比べて低くなっています。 つまり、筋トレによってテストステロンの分泌量が増えたとしても、それが直接はげる原因にはならないのです。
テストステロンと薄毛の関係については、「テストステロンは薄毛の原因?日常生活でもできる薄毛の改善方法も解説!」でも詳しく解説しています。
筋トレをすると活性酵素が増えるため
筋トレなどの激しい運動をすると、体内に活性酵素が増えます。活性酵素の過剰な産生は細胞を傷害する働きがあるため、毛髪の細胞にも悪影響があるとされるようになったと考えられます。
しかし、人の体内には、活性酸素を抑制し細胞組織の修復や再生を行う抗酸化酵素がもともと存在しています。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)・カタラーゼ・グルタチオンペルオキシダーゼなどの内因性の抗酸化酵素や、ビタミンC・ビタミンE・カロテノイド類・カテキン類など外因性の抗酸化物質が、活性酵素の産生を抑え細胞のダメージを修復します。 つまり、筋トレによって活性酵素が増えるからといって、はげるほど細胞がダメージを受けるとは考えにくいのです。
筋トレははげの対策になる
筋トレは、むしろはげの対策になると考えられています。その理由は次のとおりです。
体を動かすことで血流が良くなる
筋トレをして体を動かすと、血流が良くなり、髪の成長に良い影響をもたらすと考えられています。 髪の毛を成長させる毛母細胞は、毛乳頭部にある毛細血管から栄養を受け取り髪の毛を成長させていきます。つまり、体を動かして血流を良くすることで、毛母細胞に栄養を運搬する能力が高まり、髪の成長を促すことができます。
成長ホルモンが分泌される
筋トレをすることによって、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンの分泌量が増えることで、はげへの改善効果があると考えられています。 成長ホルモンは、アミノ酸の吸収率を上げて、タンパク質の合成を促す作用があります。髪の毛は大部分がタンパク質で構成されているため、成長ホルモンによって髪の成長を促す効果が期待できるのです。
また、筋トレを行うと、筋肉からエネルギーを生み出すために糖が分解され、乳酸を作り出します。乳酸は、脳を刺激し成長ホルモンの分泌を促すとされています。筋トレ時に発生する血液中の成長ホルモンの濃度は通常時の200倍程度とされ、睡眠中と同じ程度にまで増加します。
つまり、筋トレを行うことで成長ホルモンの分泌が促され、はげの改善につながる可能性があるのです。ちなみに、成長ホルモンの分泌を活性化するには、高重量を扱うような強度の高いトレーニングが良いといわれています。
ストレスを発散できる
筋トレをすることでストレスを発散でき、はげ・薄毛の予防や改善への効果も期待できます。 ストレス自体がはげの直接的な原因になるわけではありませんが、ストレスによって睡眠や食事、生活の質が低下するなどして間接的にはげにつながるリスクがあります。
筋トレがストレス発散に効果的と考えられる理由は2つあります。
1つは、筋トレをすることでセロトニンやテストステロンが分泌される点です。これらのホルモンが増加すると、ストレスが緩和される効果が得られます。また、セロトニンの分泌量が増えることで、睡眠の質の向上にも繋がり、さらにストレスを解消することができるでしょう。
もう1つは、アドレナリンやドーパミンというホルモンが分泌される点です。これらのホルモンは気持ちを前向きにするため、ストレス改善の効果が期待できます。
はげを予防する筋トレ後の頭皮ケア
筋トレが終わった後の頭皮をそのままにすると、汗や皮脂が溜まって頭皮環境が悪くなり、はげるリスクが高まるといえます。ここでは筋トレ後におすすめの頭皮ケアを紹介します。
シャワーを浴びる
筋トレ後は頭皮の汗を落とすために、シャワーを浴びるようにしましょう。このときのシャワーの温度は36℃〜38℃程度のぬるま湯にするのがおすすめです。シャワーの温度がこれ以上高くなると、頭皮を守るべき皮脂まで洗い流してしまうため、頭皮環境の悪化による抜け毛を招く可能性があります。
また、頻繁にシャンプーで洗髪すると、はげるリスクを高めてしまいます。筋トレ後はシャワーのお湯のみで頭皮の汗を流し、夜寝る前にシャンプーをして、頭皮環境を整えましょう。
頭皮の汗を拭き取る
筋トレ後にシャワーを浴びることが難しい場合には、頭皮の汗をタオルなどでしっかりと拭き取りましょう。頭皮の汗を放置していると汗と皮脂が酸化し、細菌が繁殖しやすくなります。細菌が繁殖すると頭皮の環境が悪くなってしまい、抜け毛のリスクが高まってしまいます。
すぐにシャワーで流せる環境でない場合は、筋トレをしている最中からタオルでこまめに頭皮の汗を拭きとるようにしましょう。
プロテインと髪の毛の関係については、「プロテインで髪の毛が増える?髪の毛への効果やおすすめの摂取方法を紹介」でも詳しく解説しています。
はげや薄毛が気になる場合はAGAの可能性がある
はげや薄毛が気になりだしたという場合、AGAと呼ばれる男性型脱毛症を発症している可能性があります。AGAは思春期以降の男性にみられる進行形の脱毛症で、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約30%とされています。
AGAは自己治療やセルフケアでの改善は見込めませんが、医療機関での治療によって薄毛を改善させることができます。また、AGAの治療は早期発見・早期治療をすることが重要です。現在はオンライン診療などで手軽に受診できるAGA専門クリニックなども増えているため、少しでもはげが気になる場合は、AGAかどうか早めに診断してもらうことをおすすめします。
参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
まとめ
筋トレには、男性ホルモンの分泌を促進したり活性酵素を増やしたりする効果がありますが、これらは直接はげる原因にはなりません。むしろ、血液循環を良くしたりストレスを解消したりしてはげを改善する効果が期待できます。しかし、筋トレ後に汗をかいた頭皮を放置すると、頭皮の環境が悪くなりはげの原因となるため、筋トレ後の頭皮のケアはこまめに行いましょう。
筋トレの有無にかかわらず最近薄毛やはげが気になるという場合には、AGAを発症している可能性もあります。AGAの場合には専門的な治療を受けなければ改善は見込めないため、医療機関で医師に相談し、適切な治療を受けましょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会