更新日:2023年12月22日
ビオチンは髪への効果があるの?ビオチンの成分と効果について解説
- ビオチンはビタミンB群に属する水溶性ビタミンの一種
- アミノ酸の代謝に関与し、肌や髪をきれいにするなどの効果が期待される
- ビオチンは食事から簡単に摂れるので不足することはあまりない
- ビオチンが不足した場合は、薄毛を誘引させる可能性がある
- ビオチンはキノコやレバー、卵などから摂取できる
ビオチンは、肌や髪を健康にしてくれるビタミンの1種です。薄毛対策の一環として、ビオチンのサプリメントの使用を検討している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ビオチンの概要や効果を詳しく説明します。また、ビオチンが不足した場合の影響や摂取方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ビオチンとは
ビオチンとは、ビタミンB群に属する水溶性ビタミンのことです。一般的にビオチンと呼ばれますが、ビタミンHと呼ばれることもあります。ここでは、ビオチンという名称で解説していきます。
ビオチンは、主にタンパク質と結合した状態で存在しており、ビオチンを人の体内で利用するためには、タンパク質から離して遊離させる必要があります。厚生労働省によると、食事で摂取したビオチンをタンパク質から遊離させて使用できる率は80%程度とされています。
ビオチンは、さまざまな食品から摂取できることに加えて、腸内細菌によって合成できるため、通常の食生活で欠乏することは少ないといわれています。成人の1日の摂取目安量はさまざまな見解がありますが、厚生労働省では1日50µg程度としています。
参照元:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
ビオチンの効果
ここからは、ビオチンの効果について紹介していきます。
健康な肌をつくる
ビオチンの効果として代表的なのが、健康的な肌を作る効果です。
ビオチンは、カルボキシラーゼというアミノ酸の代謝を行う酵素の働きを助ける補酵素としての役割があります。アミノ酸はタンパク質を分解した結果作られるもので、糖や脂肪とともにエネルギーを作り出したり、コラーゲンなどのタンパク質を合成したりするときの材料になります。コラーゲンは、健康的な肌や爪を作るために必要な材料です。そのため、ビオチンを摂取することで健康的な肌を作ることにつながるのです。
また、ビオチンを補充することで、肌のトラブルが改善するケースがあります。医療現場では、にきびやアトピー、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう/膿のあるブツブツが繰り返し発生する疾患)の治療にビオチンが使われることもあります。
さらに、ビオチンには皮膚炎の改善効果も期待できます。皮膚炎やかゆみの原因となるヒスタミンの生成を抑え、ヒスタミンを尿を通じて排泄させる作用があることから、皮膚の炎症やかゆみを防止することにもつながるのです。
髪の生成をサポートする
ビオチンは、肌だけでなく髪の生成もサポートしてくれます。
髪の主成分であるタンパク質の一種ケラチンは、複数のアミノ酸が連結してできたものです。ビオチンは糖や脂質、タンパク質の代謝を助けてアミノ酸代謝に対して有用に働きます。また、アミノ酸は亜鉛の働きによって髪の成分であるケラチンに再合成されます。つまり、ビオチンを摂取しアミノ酸の代謝を促すことで、髪の生成を助ける効果があると考えられるのです。
また、髪の土台となる頭皮を健康に保ったり、毛細血管の血流を促進したりすることで、毛包に栄養を届けやすくする作用も期待できます。そのため、AGA治療の際にビオチンを補助として活用している医療機関もあります。
さらに、ビオチンは色素細胞を活発化させることから、白髪の改善などにも高い効果が期待されています。とはいえ、ビオチンは医薬品ではないので、劇的な改善効果があるというよりも、改善効果をサポートをしてくれるものと捉えておくと良いでしょう。
疲労を回復する
ビオチンには疲労回復効果も期待できます。
人間は、運動をするときにブドウ糖を燃やしてエネルギーを作り出しますが、このときにブドウ糖を燃やした燃えカスとして乳酸が発生します。この乳酸は疲労物質ともいわれ、乳酸が溜まると人は筋肉痛になったり疲れを感じたりするのです。そして、この乳酸は肝臓に運ばれると分解されて再びブドウ糖となります。この過程を糖新生と呼びます。
ビオチンには血液中に貯まる疲労物質である乳酸を分解して、糖新生を助ける働きがあるため、疲労回復の効果が期待できます。
肥満を改善する
ビオチンは、視床下部にある摂食亢進系という神経に影響を与え食欲を抑制する効果があります。日本ビタミン学会によると、ビオチンの視床下部での作用を検討した研究では、過剰量のビオチンは摂食抑制と顕著な体重増加抑制を示し、高脂肪食による肥満と高血糖状態を抑制する結果がみられたとしています。
また、肝臓と脂肪組織にも作用し脂質代謝を促進させる効果もあるため、ビオチンを摂取することで肥満を改善されることにつながるでしょう。
参照元:日本ビタミン学会「ビオチンによる糖尿病・肥満症・高血圧症の予防」
糖尿病を予防・改善する
ビオチンには、グルコースの取り込みや発現の抑制を遺伝子レベルで活性させる作用があり、糖尿病の改善効果があることが明らかになっています。この作用は1型及び2型のどちらの糖尿病にも改善効果が見込めます。
さらに、ビオチンは、骨格筋でのインスリン受容体の発現量を増加させ、末梢組織でのグルコースの利用を促進させます。これらの効果により、糖尿病の予防・改善に役立つことが示されています。
参照元:日本ビタミン学会「ビオチンによる糖尿病・肥満症・高血圧症の予防」
ビオチン不足による影響
ビオチンは腸内細菌叢で作り出せることと、普段口にする食品からしっかり摂れることから、規則正しい生活を送っていれば不足する可能性は少ないといわれています。しかし、極端に偏った食生活をした場合には、ビオチンが不足することがあります。
ここでは、ビオチン不足による体への影響について解説します。
薄毛を誘発する
ビオチンが不足すると、体内のアミノ酸代謝が悪化し、頭皮や髪の状態が悪くなります。この状態が続くと脱毛が起こり、薄毛の進行につながってしまいます。
薄毛の原因については、「はげたくない人は知っておくべき!薄毛の原因と自分できる対策について解説」を参照してください。
アトピー性皮膚炎を誘発する
ビオチンが過度に不足するとアトピー性皮膚炎を誘発することも分かっています。アトピーは遺伝的要因や環境的要因などによって発症すると考えられていますが、ビオチン不足も関係しているということが考えられています。
免疫不全症になる可能性がある
ビオチンが不足することでリウマチ、シェーグレン症候群、クローン病などになるリスクとの関連も示唆されています。ビオチンが体内で欠乏すると代謝や免疫機能に異常が出るため、免疫不全症といわれる上記の病気が出現する可能性があります。
糖尿病になる可能性
ビオチンが不足すると、インスリンの分泌能が低下するため、糖尿病のリスクが高まります。ビオチンは、糖の代謝に必要なカルボキシラーゼの補酵素であるため、ビオチンが不足すると糖代謝も不足します。そのため、1型および2型のいずれの糖尿病のリスクも高まることがわかっています。
ビオチンを効率良く摂るためには
ビオチンを普段の生活の中で効率よく摂ることができれば、薄毛の予防につながったり、薄毛改善のアシストができたりするかもしれません。
ここでは、ビオチンを効率よく摂るための方法について解説します。
食品から摂取する
特にビオチンの含有量が多い食品は、きのこ類や、レバーを中心とした肉、ナッツを含む種実、鶏卵、貝類や魚卵を含む魚介類です。
たとえば、鶏のレバーには、100gあたりに推奨摂取量の4倍以上のビオチンが含まれており、比較的容易に摂取が可能です。
また、大量に生卵を摂取した場合、卵白に含まれるアビジンという物質がビオチンと結合して吸収を妨げ、ビオチンが欠乏する可能性があります。卵は加熱するとアビジンが変性し吸収の妨げを抑えられるため、加熱してから食べると良いとされています。とはいえ、長期間にわたって大量に生卵を食べた場合にビオチン欠乏症がみられるため、一般的な食事量で生卵を摂取するだけなら問題ないといえるでしょう。
サプリメントから摂取する
サプリメントからの摂取も、効果的にビオチンを摂取できる方法の1つといえます。飲むタイミングは、食事と一緒に吸収されるよう、食後に飲むのがおすすめです。
ただし、サプリメントをたくさん飲んでも、薄毛に対する効果が強まるわけではありません。ビオチンは水溶性のビタミンなので、食事とサプリを組み合わせて多量にビオチンを摂取したとしても、尿として排泄されてしまうためです。
また、ビオチンの効果が現れるのは、一般的に半年から1年ほどの時間がかかると言われています。即効性を期待するものではないことは念頭に置いておく必要があるでしょう。
まとめ
ビオチンは、髪や肌を健康にする以外にも、疲労の軽減や肥満の解消など多くの効果が期待できます。食事からも摂取できるビタミンなので不足することが少ないうえに、尿から排泄されることから過剰摂取となる心配もありません。しかし、もしも不足した場合には薄毛の誘因となる可能性もあります。
ビオチンは、AGAの治療に使う医療機関もあり、ビオチンを活用することで頭皮を健康に保ったり、毛細血管の血流を促進したりといった効果が期待できます。その結果として毛包に栄養を届けやすくしてAGAの改善を助けてくれるかもしれません。
また、もしAGAを根本的に解決したい場合は、ビオチンの摂取だけでなく、専門の医療機関を受診することを検討してみても良いかもしれません。AGAクリニックでは、AGAそのものを改善させる治療を行ってくれ、薄毛の進行の抑制や発毛を促すことが可能です。近年はオンラインで受診できるクリニックも増えてきているので、手軽にAGA治療を行いたい方は、そちらを利用するのもおすすめです。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会