更新日:2026年09月02日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
テストステロンとは何か、知りたい方もいるかもしれません。テストステロンは心身の健康を支えており、減少すると意欲の低下や不眠、性欲減退などを引き起こす要因となるホルモンです。本記事では、テストステロンの働きや心身におよぼす影響などを解説します。減少により引き起こされる症状や、分泌量を増やすための生活習慣、薄毛との関係についてもまとめました。当てはまる症状が続く場合は、医療機関で原因を確認しましょう。
テストステロンは、主に男性の精巣(睾丸)で作られる男性ホルモンの一種で、男性らしい身体的特徴の形成や維持に欠かせないものです。思春期には声変わりや体毛の増加、筋肉の発達などを促し、成人後も心身の健康を維持する働きを担っています。 また、テストステロンは身体機能だけでなく、意欲や集中力といった心の健康、さらには認知機能にも関わっています。そのため、心身の不調がある場合は、症状とテストステロン値を含めて医療機関で評価を受けることが大切です。 テストステロンの分泌量は20〜30歳代でピークを迎え、その後の変化には個人差があります。テストステロン値の急激な低下は、いわゆる男性更年期障害(LOH症候群)の主な原因となるでしょう。 以下に、テストステロンの基礎知識をまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な生成場所 | 男性:精巣(睾丸) 女性:卵巣・副腎・脂肪 |
| 分泌のピーク | 20〜30歳代 |
| 加齢による変化 | ピーク後は個人差を伴い変化。急激な低下はLOH症候群の要因 |
| 心身への関与 | 身体的特徴の形成・維持、意欲・集中力、認知機能 |
| 女性の場合 | 分泌量は少ないが、筋肉量・骨量・気分などに関与 |
なお、テストステロンは女性の体内においては、主に卵巣や脂肪、副腎で作られます。男性に比べて分泌量は少ないですが、女性の健康維持にも欠かせないものです。女性においてもテストステロンは健康維持に関与しており、筋肉量や骨量、気分などに影響すると考えられています。更年期ではエストロゲンが大きく減少しますが、テストステロンも加齢に伴い変化します。

テストステロンが正常なレベルで分泌されると、意欲の向上や性機能の維持、生活習慣病のリスク低減など、心身にさまざまな影響をもたらすでしょう。 ここでは、テストステロンがもたらす主な効果を紹介します。
テストステロンは心の健康を保ち、仕事や日常生活における意欲や集中力の向上を支える、活力の源といえるでしょう。テストステロンは脳の記憶中枢である海馬でも合成されており、テストステロンを受け取るアンドロゲンレセプターは海馬のメイン回路(CA1領域)にあるグルタミン酸神経に多く発現しているとされています。テストステロンは、この回路にあるアンドロゲンレセプターに結びつくことで、情報を伝達するシナプスを強化する働きがあるのです。 つまり、テストステロンは脳機能にも関与し、意欲や集中力、認知機能にも影響すると考えられています。これにより、仕事や日常生活における情報の整理や集中力への良い影響が期待できます。
テストステロンは筋肉を太くする信号を発信し、筋肉内のタンパク質合成を促します。適切な範囲のテストステロンは、筋肉量の維持に役立ちます。 また、テストステロンは骨の健康維持にも欠かせません。テストステロンは骨芽細胞という骨を作る細胞の活動を促し、骨密度の低下を防ぐ効果が期待できます。
テストステロンは、男性の性機能維持を心と体の両面から支えています。テストステロンは脳内の受け取り部分に作用して性欲(リビドー)を湧き上がらせる一方、体に対しては血管を広げる一酸化窒素(NO)の産生を促します。これにより、陰茎への血流をスムーズにして勃起をサポートしているのです。 男性は二次性徴期に精巣が発達し、テストステロンの分泌が増えて生殖器の発達や陰茎の増大、性欲や勃起頻度の増加が起こります。しかし、テストステロンが減少すると関心そのものが薄れるだけでなく、物理的な反応も低下します。 つまり、テストステロンはパートナーとの良好な関係を維持し、プライベートな時間においても充実感を得るための要素の一つといえるでしょう。 なお、テストステロンの力を最大限に活かすためには、血管が健康であることも欠かせません。日々の食事や適度な運動を通じて血管の健康を保ち、心身の活力を維持することを意識しましょう。
テストステロンは、生活習慣病の予防にも関係しています。テストステロンは筋肉量の維持および体脂肪量のコントロールに寄与し、インスリン感受性(インスリンの効きの良さ)を保つ効果があるためです。したがって、内臓脂肪の蓄積を抑え、糖尿病や肥満のリスクを低減させる可能性があります。 また、テストステロンは、血管機能との関連も指摘されています。ただし、この恩恵を十分に受けるためには、受け皿となる血管そのものが健やかであることが大切です。生活習慣病のリスクを低減するためには、定期的な健康診断に加え、ホルモンバランスと血管の健康の両面に注意を払いましょう。

テストステロンが減少すると、上記のような心身の不調が現れる可能性があります。ただし、これらの症状は個人差があり、すべての人に同じように現れるわけではありません。
テストステロンが減少すると、疲労感や活力の低下などを感じるようになります。たとえば、以下のような症状を実感する場合があるでしょう。
これらの症状は、「朝起きても疲れが取れない」「以前なら簡単にできていた作業が億劫に感じる」といった形で現れることがあります。このような症状にテストステロン低値を伴い、ほかの疾患が除外された場合は、LOH症候群と診断されることがあります。 ただし、疲労感や活力の低下はほかの原因でも起こります。原因がテストステロンでない可能性もあるため、日常生活に支障が出るほどの症状が続く場合は医療機関で相談するのが望ましいでしょう。
テストステロンの減少は生活習慣病のリスクを高める要因となります。特に注意すべきは、内臓脂肪の蓄積です。テストステロンには脂肪の燃焼を促す働きがあるため、分泌量が低下すると腹部に脂肪がつきやすくなります。これは単なる見た目の変化に留まらず、メタボリックシンドロームの引き金となるものです。 また、テストステロンにはインスリン感受性を高く保つ働きがあるため、不足すると血糖値が上がりやすくなり、糖尿病のリスクを上昇させる可能性があるでしょう。さらに、血管の柔軟性を保つ物質(NO)の働きも鈍くなるため、動脈硬化の進行を早め、心血管疾患を招く恐れもあります。

生活習慣の改善は、テストステロン値の維持・低下予防につながる可能性があります。それぞれ詳細や理由について解説するので、ご自身の生活に合わせて参考にしてみてください。
筋力トレーニングや有酸素運動は、テストステロンの分泌を促します。筋力トレーニングでは、筋力の増加によってテストステロンがさらに分泌され、それがまた筋肉や骨を強化するという好循環を生み出せます。また、有酸素運動による肥満の解消も欠かせません。テストステロン減少の原因の一つは肥満です。適度な有酸素運動で脂肪を燃焼させることで、ホルモンバランスの維持につながる可能性があります。 ただし、長時間の激しい有酸素運動は、身体がストレスを感じてテストステロン値を下げてしまう可能性があります。無理のない範囲で、適度な運動量の継続を意識しましょう。
栄養バランスの良い食事は、テストステロンの生成に欠かせません。特に亜鉛は、テストステロンの合成に関わるミネラルですが、意識して摂取しないと不足しがちになります。亜鉛の含有量が多い牡蠣や牛肉(赤身)、卵やナッツ類などを献立に取り入れると良いでしょう。 そのほか、タンパク質やビタミンDの不足を改善することで、テストステロン値が向上する可能性が示唆されています。タンパク質に含まれるアミノ酸は、テストステロンの分泌を促します。また、ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にして筋力を高める効果が期待できるため、間接的にテストステロンの分泌を促せるでしょう。ビタミンDは、魚類やきのこ類に多く含まれています。 また、テストステロンを合成するエネルギー源として、体内には適度な糖質が必要です。過度な糖質制限はテストステロン値の低下を招く恐れがあるため、適量を摂取することが大切です。
質の良い睡眠によって促される成長ホルモンは、テストステロンの分泌に関係します。成長ホルモンは入眠直後に最も多く分泌されるため、このときに深い眠り(ノンレム睡眠)にあることが大切です。 以下では、質の良い睡眠をとるために必要なことをまとめています。就寝前はスマートフォンやパソコンの使用を控え、寝室を暗く静かに保つことが推奨されています。

また、テストステロンはストレスの影響を受けやすい性質を持っています。過度なストレスを感じると、抗ストレスホルモンであるコルチゾールが大量に分泌され、テストステロンの生成が抑制されるためです。 つまり、テストステロン値を高く保つためには、ストレスを溜め込まないことが大切です。ヨガで心身をリラックスさせたり、好きな趣味に没頭したりするなど、自分に合った方法でストレスを解消し、テストステロンが働きやすい環境を整えましょう。
過度な飲酒と喫煙は、テストステロンの分泌を阻害する要因の一つです。特にアルコールの過剰摂取はテストステロン低下と関連することが知られています。大量の飲酒は体にとってストレスとなり、脳からの「ホルモンを作れ」という命令を乱します。その結果、細胞にダメージを与え、テストステロンを減らしてしまうのです。 喫煙も同様に悪影響を与えます。タバコに含まれる有害物質は血管を収縮させ、精巣への血流を阻害するものです。これにより、テストステロンの合成能力が低下する可能性があります。 お酒やタバコをいきなりゼロにするのが難しい方は、休肝日を作るなど段階的に減らす取り組みが選択肢となります。テストステロンは生活習慣によって変動しやすいため、小さな積み重ねが活力の維持につながる可能性があります。

気分の落ち込みや性機能の低下などはテストステロン以外の原因で起こっている可能性もあります。「疲れが溜まっているだけ」と自己判断するのではなく、気になるときは医師にご相談ください。

テストステロンは、AGA(男性型脱毛症)の発症に間接的に関与しています。AGAはテストステロンが5αリダクターゼという酵素の作用によって、DHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることで発症するものです。 DHTが頭頂部や前頭部の毛乳頭細胞にある受容体と結合すると、脱毛因子TGF-βやDKK1が生成されます。これにより毛母細胞の増殖が抑えられ、ヘアサイクルの成長期が短縮し、髪が十分に太く長く成長する前に抜けやすくなるとされています。DHTは髭や体毛の成長に関与する一方で、頭皮では毛包のミニチュア化を引き起こすことがあります。
テストステロン値の測定は、主に血液検査で行われます。テストステロン値は日内変動が大きく、午後からは低下する傾向があるため、採血は午前中(できれば午前11時頃まで)に行うのが一般的です。検査では「総テストステロン」と「遊離テストステロン」の両方を測定することが多いです。 2022年に改訂されたLOH症候群の診療基準では、主診断に総テストステロン値が用いられ、250ng/dL未満が低値の目安とされています。従来は遊離テストステロン値が主に使われており、現在も参考指標として測定されています。
| 指標 | 低値の目安 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 総テストステロン | 250ng/dL未満 | 2022年改訂版で主診断に用いる |
| 遊離テストステロン | 7.5pg/mL未満 | 参考指標。8.5〜11.8pg/mLは境界域とされる |
検査結果は年齢や個人差を考慮して判断されます。また、治療の必要性については、数値だけでなく、そのほかの症状なども含めて総合的に判断されるでしょう。 テストステロン値の検査は泌尿器科やメンズクリニックで受けられます。なお、レバクリを通じた診療では、テストステロン値の検査は行っておりません。
ここでは、テストステロンに関する悩みや疑問について、Q&A形式で解説します。ホルモンバランスを管理するための参考にしてください。
テストステロン値は朝と夜で変わりますか?
テストステロン値は1日のなかで刻々と変化していくのが特徴です。一般的に、テストステロンの分泌は夜明け前から午前11時頃にピークを迎え、午後になると減少していきます。その後、夕方から深夜にかけて再度低下し、深夜に最も低い数値となる仕組みです。この変動幅には個人差があり、午前中と深夜の差がかなり大きい場合もあります。
女性にもテストステロンはありますか?
女性にもテストステロンは存在します。主に卵巣と副腎で作られ、男性よりもかなり少ない量が分泌される仕組みです。女性においても、筋肉の維持や骨の健康、性欲や気分の安定などに関わっているとされています。更年期では女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少する一方、テストステロンは減少ペースがゆるやかで、健康維持を担います。
テストステロンはサプリメントで増やせますか?
サプリメントで直接増やせるわけではありませんが、間接的にサポートできる可能性はあります。亜鉛やビタミンDなどが不足している場合は、サプリメントで補うことで栄養面から健康維持をサポートできる場合があります。ただし、栄養は食事で摂るのが基本で、すでに十分摂れている人がサプリメントを追加しても大きな効果は期待できないでしょう。心身の不調などの症状が続く場合は医療機関の受診も検討してください。
テストステロンが増えると顔つきが変わるというのは本当ですか?
思春期には骨格や筋肉の発達、皮脂分泌の増加による肌質の変化が現れることがあります。一方、成人男性ではテストステロン値の変動による顔つきの変化はそれほど顕著ではありません。ただし、意欲や活力が向上することで、表情や雰囲気が変わることはあるかもしれません。
テストステロンとは、主に男性の精巣で作られる男性ホルモンの一種です。筋肉や骨格の形成だけでなく、意欲や集中力の向上、性機能の維持、生活習慣病のリスク低減など、心身の健康維持に重要な役割を果たしています。 テストステロンが減少すると、疲労感の増加や活力の低下を招くほか、性機能の低下などの症状が現れる可能性があります。また、内臓脂肪の蓄積といった生活習慣病のリスクを高める要因となることもあるでしょう。 気分の落ち込みや性機能の低下といった不調が続く場合は、原因を自己判断せず、気になるときは医療機関にご相談ください。
記事を読んでAGAの治療に関心を持ったものの、こんな不安やお悩みはありませんか?
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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