更新日:2025年10月30日
避妊や生理痛の軽減などを目的としてピルの服用を検討し、「ピルの副作用が出やすい人は?」と気になっている人もいるでしょう。ピルの服用により血栓症の副作用が出やすい人として、喫煙習慣がある人や高血圧症の人などが挙げられます。
本記事では、ピルの副作用の症状や血栓症の副作用が出やすい人の特徴、ピルと血栓症の関係、副作用の対策について解説します。
ピルはもともと、避妊を目的として開発された薬です。ピルには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つの女性ホルモンが含まれています。ピルには低用量ピルや中用量ピル、アフターピルなどがあり、用途によって適したピルは異なります。
一般的にピルといえば、低用量ピルを指すことが多いでしょう。低用量ピルは、中用量ピルやアフターピルよりもエストロゲンの含有量が少ないものの、副作用が出るリスクがあります。
ピルの種類については、「ピルの種類を一覧で解説!違いや服用するメリット」でも解説しているので参考にしてください。
ピルの副作用のうち、飲み始めてから1~3か月ほどで自然に改善される症状をマイナートラブルと呼び、その症状として以下の例が挙げられます。
これらの症状が起こる原因は、ピルに含まれる女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンです。服用を開始して間もない頃はホルモンバランスの変化によりマイナートラブルが起こりますが、1〜3か月程度継続して服用するとホルモンバランスが整うため、自然に症状が治まります。マイナートラブルはあくまでも一時的な症状であり、大きな病気につながる可能性は低いでしょう。
「ピルを飲むと太る」と聞いたことがある方もいるでしょう。しかし、低用量ピルと体重増加の間に、直接的な因果関係はないとされています。
低用量ピルに含まれるプロゲステロンの作用により、一時的にむくみの症状が現れるケースがありますが、それは水分によるもので脂肪がついたわけではありません。脂肪増加による肥満を心配する必要はないでしょう。
ピルの服用によるがんのリスクについて、心配になる方もいるかもしれません。ピルの服用により卵巣がんや大腸がん、子宮体がんのリスクが低下するとされている一方、乳がんや子宮頸がんのリスクはわずかに上昇する可能性があるとされています。
ただし、乳がんのリスク増加については、エストロゲンを多く含む中用量ピルが主に使用されていた時代に実施された研究もあり、現在の主流である低用量ピルを用いた場合には、リスクが増加しない可能性があるとされています。
ピルとがんとの関係性については、「ピルの服用と癌(がん)発症リスクの関係性とは?癌の予防方法についても解説」でも解説しています。
低用量ピルの服用により、血栓症の一種「静脈血栓症(VTE)」の発症リスクがわずかに高くなります。血栓症とは、血液にできる小さな塊が心臓や肺、脳などの血管を詰まらせ、その先の組織や臓器が壊死してしまう病気です。
発症確率は極めて低いものの、血栓症の症状を事前に把握しておきましょう。
これらの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診しましょう。
低用量ピルは、誰でも服用できるわけではありません。副作用が出やすい人には特徴があり、その特徴に該当する人は、服用できないケースや服用にあたり慎重な判断を要するケースがあります。
以下に該当する場合は、低用量ピルを服用できません。
また、以下に該当する場合は、服用にあたり注意が必要です。
自身の状態をよく確認し、医師に相談したうえで服用しましょう。
ピルの副作用のうち、重篤な副作用として血栓症が挙げられます。特に持病がなく健康な方であれば、低用量ピルの服用により血栓症を発症するリスクは極めて低いでしょう。しかし、喫煙者や糖尿病などの持病がある人は、副作用が出やすい傾向があります。ここでは、ピルの服用により血栓症の副作用が出やすい人の特徴について解説します。
ピルの服用により血栓症の副作用が出やすい人は、喫煙者です。タバコに含まれている物質は、血栓症のリスクを高めます。タバコの煙には約4000種類の化学物質が含まれており、そのうち200種類以上は有害物質とされています。特にニコチンは血管を収縮させる働きがあり、National Library of Medicineの調査によると、喫煙者は喫煙していない人と比べて静脈血栓症のリスクが1.43倍になるとされています。
また、ピルを服用している喫煙者は、ピルを服用せず喫煙していない方に比べ、8.8倍静脈血栓症のリスクが上がったとされています。
ピルに含まれているエストロゲンは血液を固まりやすくする作用があり、喫煙していると、血栓症リスクを高めてしまいます。ピルの服用を考えている喫煙者は、禁煙を検討しましょう。
参考:National Library of Medicine「Smoking increases the risk of venous thrombosis and acts synergistically with oral contraceptive use」
糖尿病を患っている方も、ピルの血栓症の副作用が出やすい人として挙げられます。糖尿病は、インスリンの作用不足により慢性的な高血糖状態になる病気です。高血糖状態が続くと血管の壁が傷つき、コレステロールが蓄積しやすくなります。蓄積したコレステロールは血管内にプラークを形成し、それが破裂すると血の塊が血管を塞ぎ、血栓症を誘発します。
ピルに含まれているエストロゲンも、血液を固まりやすくする作用がある物質です。糖尿病の症状と合わさることにより、血栓症のリスクを高めてしまいます。糖尿病の人がピルを服用したい場合は、医師に相談し慎重に判断する必要があります。
40歳以上の人も、ピルの血栓症の副作用が出やすい人として挙げられます。40歳以上になると、血管年齢の上昇により、心血管系障害のリスクが上がります。
ピルに含まれるエストロゲンの作用が加わると、血栓症のリスクはさらに高まります。そのため、40歳以上の人のピルの服用については、慎重な判断が必要です。
筋力が低下している人も、血栓症の副作用が出やすい人です。筋力が低下している場合、血管周囲にあるポンプ機能が低下し、静脈の流れが悪化します。静脈の流れが悪化すると、血管内に血液が停滞し、血栓症のリスクが上がります。その状態でピルの血液を固まりやすくする作用が加われば、血栓症リスクはさらに上がるでしょう。
日頃から適度な運動を心がけ、筋力を維持することが大切です。
高血圧症の人も、ピルの服用による血栓症の副作用が出やすい人です。高血圧症とは、血圧が正常よりも高い状態が慢性的に続く病気です。高血圧状態が続いた場合、脳や心臓の血管がもろくなり、血栓ができやすくなります。その状態でピルのエストロゲンの作用が加われば、血栓症のリスクを高めてしまいます。
そのため、高血圧症の人がピルを服用したい場合は、医師の慎重な判断が必要です。
片頭痛がある人も、ピルの服用による血栓症の副作用が出やすい人です。片頭痛は脳の血管がなんらかの原因で急激に拡張し、周囲にある三叉神経(さんさしんけい)を刺激することにより炎症物質が発生し、その物質が血管を拡張した結果、痛みを起こすと考えられています。
前兆を伴う片頭痛が起こる場合は、前兆を伴わない片頭痛患者よりも脳血管障害が発生しやすく、原則としてピルを服用できないとされています。また、前兆のない片頭痛がある人がピルを服用したい場合も、医師と相談したうえで慎重に判断することが必要です。
BMIが30以上の人も、ピルの血栓症の副作用が出やすい人です。BMIが30以上の場合、血管内の内皮脂肪や脂肪細胞から分泌される「PAl-1」の分泌が増加します。PAl-1は、血液を溶解する機能を制御するため、PAl-1が増加すると血栓症リスクが高まります。
BMIが30以上の人は、医師と相談したうえで服用を慎重に判断することが必要です。
長時間同じ姿勢でいることが多い人も、ピルの血栓症の副作用が出やすい人です。長時間同じ姿勢でいた場合、血流が滞って血栓ができやすくなります。デスクワークの人はもちろん、立ちっぱなしの仕事をする人や車・電車での移動時間が長い人も注意が必要です。
特に長時間の飛行機移動は、血栓症のリスクが高まる可能性があるとされています。長時間の移動による血栓症を予防する方法には、脱水を防ぐためにこまめに水分補給することや、下肢の運動、アルコールの摂取を控えることなどが挙げられます。
血栓症とは、なんらかの原因でできた血液中の血の固まりにより、血管が詰まる病気です。低用量ピルに含まれるエストロゲンには血液凝固作用があり、服用により血栓症のリスクがやや上昇します。
ここでは、低用量ピルの服用により血栓症が起こる確率や、血栓症が発症しやすいタイミングについて解説します。
低用量ピルを服用している場合の血栓症の発症率は年間1万人に3〜9人ほど、低用量ピルを服用していない場合の発症確率は年間1万人に1〜5人程度とされており、低用量ピルの服用により血栓症が起こる確率は低いと考えられます。
また、低用量ピルの服用により血栓症になり、命まで失うケースは10万人に1人以下とされており、事故や中毒など「稀な原因」とされるものと同程度です。
そのため、血栓症の副作用が出やすい人に該当する場合を除き、ピルの血栓症の副作用について過度に心配する必要はありません。ただし、リスクがあることについて理解しておくことが大切です。
血栓症が起こりやすいタイミングは、ピルの服用開始から3〜4か月以内の期間です。その後継続的に服用することにより、血栓症の発症リスクは低下します。
ただし、服用を4週間あるいはそれ以上の期間中断し、再度服用を始めた場合の血栓症のリスクは、飲み始めたときと同様に高くなります。服用の中断と再開を繰り返した場合、血栓症のリスクが高い状態が続くため、注意が必要です。
ピルの服用による副作用を避けるためには、定期的な受診や適度な運動、こまめな水分補給などの対策をとることが大切です。ここでは、ピルの服用による副作用への対策について解説します。
特に高血圧症やBMIが30以上の人など、ピルの副作用が出やすいとされている人は、副作用のリスクを回避するために定期的に診察を受け、不安な点があるときは医師に相談することが大切です。
なお、血圧に関しては、家庭用血圧計を使用すると自宅でも手軽に血圧チェックができます。定期的な血圧測定により、自身の健康状態を把握しておきましょう。
適度な運動は、血液の循環を良好にし、血栓症のリスクを低減させます。
デスクワークや長時間移動などにより座っている時間が長い人は、一定時間ごとに立ち上がって歩いたり、軽くストレッチをしたりするとよいでしょう。また、運動する時間がとれるときは、ヨガやウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動を行うのがおすすめです。無理のない範囲で、運動習慣を取り入れましょう。
脱水状態になると血液の粘度が高くなり、血栓症のリスクが上がる可能性があります。そのため、こまめに水分補給することが大切です。ただし、アルコールやカフェインには利尿作用があり、過剰摂取すると脱水を招くおそれがあるため、お酒やコーヒーなどは飲み過ぎないよう注意が必要です。
ピルの副作用が出やすい人として喫煙者を挙げたとおり、タバコに含まれるニコチンは血管収縮作用があり、血栓症のリスクを高めます。1日の喫煙本数の増加とともに心血管系障害の発症リスクが上がるとされており、ピルの服用中は禁煙することをおすすめします。
脂肪や塩分が多い食べ物は、肥満や高血圧症を引き起こす恐れがあります。肥満や高血圧症は、血栓症のリスクを高める以外にも、さまざまな病気の原因になります。健康な体を維持するためにも、バランスの良い食事をとることを意識しましょう。
なお、大豆製品に含まれるイソフラボンは、血栓症を予防する作用があるとされています。栄養バランスのよい食事を心掛けつつ、大豆製品を意識的に食事に取り入れてみましょう。
長時間同じ体勢でいることが多い人には、弾性ソックスの着用がおすすめです。弾性ストッキングの着用により、足の静脈で血流が停滞するのを防止したり血液が心臓に戻るのをサポートしたりし、血栓をできにくくするとされています。弾性ソックスを履くとともに、足首を上げ下げする運動をすれば、より高い効果が得られるでしょう。
デスクワークや長時間移動で足のむくみが気になる人は、弾性ソックスを試してみてください。
ピルの服用時間の工夫により、副作用による日中の活動への影響を軽減できる可能性があります。ピルの服用によるマイナートラブルが起こりやすいのは、服用してから約2〜3時間後です。そのため、就寝前にピルを服用すれば、就寝中に副作用のピークが過ぎるため、副作用の辛さを回避できる可能性があります。
副作用のマイナートラブルに悩んでいる人は、服用するタイミングを見直してみましょう。
ピルの服用によりマイナートラブルの副作用が出やすい人は、吐き気止めや痛み止めなどの薬の服用により、マイナートラブルの症状を抑えるのもひとつの方法です。ただし、種類によってはピルとの飲み合わせが悪い薬もあるため、ほかの薬と併用したい場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。
ピルと飲み合わせが悪い薬については「ピルと飲み合わせに注意すべき薬は?飲み合わせの悪い飲食物やサプリも解説」でも詳しく解説しています。
副作用の症状が強く出る場合や、服用を開始してから3か月以上経過しても症状が軽減されない場合、服用しているピルが体に合っていない可能性があります。ピルは、種類によってエストロゲンの配合量やプロゲステロンの種類、主な効果が異なり、副作用も異なります。
ピルの種類を変更すれば、副作用を軽減できるかもしれません。決して我慢せず、医師と相談しながら自分に合ったピルを選びましょう。
ピルの服用により血栓症を引き起こすリスクは低いものの、副作用の可能性があることにより、不安を感じる人もいるかもしれません。しかし、低用量ピルには、避妊効果や生理痛の軽減などのメリットがあり、その効果を得たい人もいるでしょう。
ピルにはさまざまな種類があり、種類によってエストロゲンが含まれる量も変わります。医師に相談し、自分の体質や目的に合ったピルを処方してもらいましょう。
忙しくて病院に行く時間がない人には、オンライン診療がおすすめです。場所や時間にとらわれずにビデオチャットや電話で診察が受けられ、処方された薬は自宅などで受け取れます。ぜひ、活用してみてはいかがでしょうか。
ピルは正しく服用すれば避妊効果や生理痛の軽減など、さまざまなメリットが得られます。ただし、ピルのエストロゲンには血液凝固作用があり、血栓症のリスクがわずかに上がるのがデメリットです。ピルの血栓症の副作用が出やすい人として、喫煙者や40歳以上の人、肥満の人などが挙げられます。
ピルの服用を検討しているものの「副作用が出やすい人に該当しないか心配」「ピルの副作用がこわい」と感じている人は、まずは医師に相談してみましょう。
レバクリでは、ピルのオンライン処方を行っています。場所や時間にとらわれずにビデオチャットや電話で診察が受けられ、処方された薬は自宅など好きな場所に届きます。診察料は無料なので、ぜひご予約ください。

この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
※この記事は産婦人科専門医と共同で監修を行いました