更新日:2024年03月13日
勃起はできるのに射精にいたることができず、自分は射精障害ではないかと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。射精障害と一言で言ってもさまざまなタイプが存在し、タイプによって治療方法も異なります。
本記事では射精障害の種類とその原因、治療方法、ED(勃起不全・勃起障害)との違いなどについて紹介しています。射精障害でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
射精障害とは、勃起はできるが何かしらの原因によって射精ができない疾患です。射精障害には複数のタイプがあり、射精不能、逆行性射精、早漏、遅漏などがあります。ここでは、それぞれの射精障害について解説します。
膣内射精障害とは、射精障害の中でも膣内で射精が行えない状態のことを指します。膣内障害の方の多くはマスターベーション時には射精が可能ですが、パートナーとの性行為時に射精ができない場合が多い傾向にあります。
射精が行えない原因としては、性行為時に射精をしなければいけないという過度なプレッシャーなどによる心理的問題や、普段のマスターベーションの習慣により腟内に挿入した感覚では十分な快感を感じられないことなどが挙げられます。
腟内射精障害につながってしまうマスターベーションの習慣は、いわゆる床オナや、射精時に必ず両足を伸ばすなどの性行為時には行わないような姿勢での射精、過度な刺激によるマスターベーションです。
射精不能(無射精)とは、勃起や絶頂は可能だが、何らかの理由によって精液が出ない状態のことを指します。
人によっては特定の状況のみ精液が出ない場合と、状況に関わらず常に精液が出ない場合があります。また、状況によっては絶頂感を得ることができる場合とできない場合があります。
原因としては、薬の副作用や前立腺がん、前立腺肥大の手術による影響、糖尿病などによる神経障害、低テストステロン血症(LOH症候群)があります。治療するにあたって検査を行い、MRIによって射精管が閉塞しているかどうかを確認するなどして原因の判別を行います。
逆行性射精とは精液が尿道側ではなくて、膀胱側へ逆流してしまう現象のことを指します。
射精は本来、精子および精巣の分泌液などが前立腺内・後部尿道内へ送られ、膀胱頚部が閉塞することで膀胱への逆行性射精を防止します。そして、骨盤周りの筋肉が律動的(リズミカル)な収縮を行うことで精液が押し出され、射精に至ります。
逆行性射精は膀胱頚部が閉塞することができず膀胱へ精液が逆行してしまい、射精感があるのに実際に外部へ出る精液が少量か全く出ない状態となります。
原因としては、糖尿病などによる神経障害で膀胱頚部が閉塞できないこと、腹部や骨盤周りの手術による後遺症などによって、膀胱頚部や骨盤周りの筋肉が正常に機能していないことなどが挙げられます。
また逆行性射精は、不妊症の男性側の原因の1つとされており、妊活や不妊治療においても重要な疾患と言えます。
早漏は、一般的には射精までの時間が短い症状のことを指します。早漏は国際性機能学会 (ISSM)によって以下のように定義されています。
その他にも「男女両者が性的関係を楽しむために十分な射精をコントロールできないこと」が定義として使用されることも多くあります。
また、早漏のタイプには遺伝的に生まれつき早漏な人と、後天的に早漏になった人の2パターンが存在します。
原因としては遺伝的に中枢神経系のホルモンや受容体の発現数が多いことや、加齢による筋力低下や血行不良、男性ホルモン量の減少、ストレスによる自律神経の乱れなどが挙げられます。
早漏について詳しく知りたい方は、「早漏とは?原因や早漏を改善させる治療、トレーニング方法について解説」も参考にしてみてください。
参考:National Library of Medicine「An evidence-based definition of lifelong premature ejaculation: report of the International Society for Sexual Medicine Ad Hoc Committee for the Definition of Premature Ejaculation」
遅漏とは、一般的に射精までの時間が長く、性行為時に射精ができない状態を指します。
明確な定義はありませんが、本人の意思とは関係なく射精までの時間が非常に長くかかることが多く見られます。原因としては、薬の副作用などによって絶頂まで達しづらいことや、ストレスや射精に対する過度なプレッシャーによって十分な快感を得ることができないことなどが挙げられます。
腟内射精障害と似ていますが、腟内射精障害は射精に至れないのに対し、遅漏の場合は最終的に射精に至れる点に違いがあります。
遅漏については、「遅漏とは?遅漏のタイプとその原因、治療方法、改善方法について解説」でも詳しく解説しています。
射精障害とは性行為時などに勃起はできるが射精ができない状態のことを指し、ED(勃起不全・勃起障害)は勃起そのものができない状態のことを指します。
また、勃起は陰茎に血液が流れ込み、陰茎海綿体に血液が充満することで勃起が起こります。EDは、血流障害や神経障害、精神的要因、薬の副作用などによって陰茎に流入する血液量が減少し、勃起ができない状態が発生します。
勃起の有無が2つの疾患を分ける大きな違いにあたり、射精障害とEDは別の疾患と考えられます。
EDについて詳しく知りたい方は、「EDの症状とは?EDの治療法や改善すべき生活習慣も解説」も参考にしてみてください。
基本的には専門機関へ受診し、原因の鑑別とそれぞれの原因に合わせた治療が行われます。
膣内射精障害の治療方法は、心理的な問題とマスターベーションの習慣に対して、それぞれ別々の治療を行う必要があります。
心理的な問題による場合は、パートナーとの話し合いや医師とのカウンセリングを行い、性行為や射精に対する苦手意識や過度なプレッシャーをなくすよう治療していきます。一度抱えてしまった意識を払拭するのは難しいことが多く、治療に時間がかかることがほとんどです。
マスターベーションの習慣が原因の場合は、マスターベーションの習慣を改善することや、性行時に射精するコツをつかみ射精を行えるようにすることなどが挙げられます。また、性行時に膣内に挿入して射精するのではなく、パートナーに手などで手伝ってもらい、パートナーがいる状況でも射精ができるように習慣づけるなどの方法で治療を行います。
射精不能(無射精)の治療方法は、射精管の閉塞を解除することで行います。そのため、重要なのが閉塞の原因を明確にするということです。
閉塞の原因が前立腺肥大や前立腺がん、糖尿病などは疾患自体の治療を行い、薬の副作用の場合は原因薬剤の使用中止か、別の薬へ変更をする必要があります。
また、低テストステロン血症(LOH症候群)の場合は生活習慣の見直しや、漢方薬の服用、男性ホルモンの補充療法などによる治療が行われます。
逆行性射精は、糖尿病などによる神経障害が原因の場合は原因となる疾患の治療、薬の副作用による場合は原因薬剤の使用中止か別の薬剤への変更が主な治療となります。
また、精液が全くでないわけではない場合、精液が膀胱側へ逆行してしまったとしても特に害にならないため、妊活や不妊治療の場合を除いて治療を行わないことも多くあります。
不妊治療の場合、逆行してしまった精液を尿中から採取したり、直接精巣などから精子を採取したりすることもあります。
早漏の治療方法は、遺伝的に生まれつき早漏な人の場合、中枢神経系のセロトニンやアドレナリンなどのホルモン量を調節するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などを使用する方法があります。
後天的に早漏になった人は、ストレスなどの原因の排除のほか、絶頂に必要な快感量を増やすスクイーズ法・ストップスタート法・感覚集中法などの早漏改善トレーニングを行うなどの方法があります。
スクイーズ法とは、射精しそうになったら陰茎への刺激を中止し、亀頭と亀頭の根元を握り射精しないようにコントロールする方法です。
またストップスタート法(セマンズ法)とは、射精しそうになったら陰茎への刺激を中止しますがスクイーズ法とは違い亀頭等への圧迫は行いません。
感覚集中法は、明確な作業や手順は決まっておらず、自慰行為などの際に筋肉への力の入れ具合や陰茎の敏感な個所を探り、射精や感じる快感をコントロールする方法のことです。
遅漏の場合は、原因となっている薬の使用中止か別の薬への変更、過度なストレスやプレッシャーが原因の場合はそれらの解消が治療方法となります。
具体的に改善する治療方法は存在しないため、それぞれの原因を取り除く手段が主にとられます。
射精障害は射精不能、逆行性射精、早漏、遅漏などさまざまなタイプがあり、原因ごとに適切な治療を行う必要があります。そのため、基本的には専門機関への受診がおすすめです。
また射精障害といっても全く射精が行うことができない人以外にも、射精量が少ない人や射精までの時間が一般の人とは違う人も含まれており、症状によっては治療が必要でない場合もあります。
今回の記事を参考にして自分がどのタイプか確認し、どうしても症状が気になる方は、泌尿器科を受診してみるのが良いでしょう。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)