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更新日:2024年03月21日

前立腺肥大を治せばEDも治る?前立腺肥大とEDの関係性について詳しく解説

この記事のまとめ
  • 前立腺肥大は加齢とともに発症し、排尿障害、蓄尿障害、排尿後障害が見られる
  • 前立腺肥大の原因ははっきりしていないが、遺伝的要因、食生活の乱れ、高血糖・肥満などが考えられる
  • 前立腺肥大とEDの関係性は深く、EDは前立腺肥大が原因の1つとなっている
  • 前立腺肥大の治療をした結果、EDになる可能性もある

男性の加齢に伴って起こる前立腺肥大は、EDになる原因となることがあります。

また、前立腺肥大の治療を始めた結果、EDになるというケースもあり、正しい知識をつけたうえで治療することが重要です。

本記事では、前立腺肥大とEDの関係性について詳しく解説します。前立腺肥大とEDの両方を改善するためにはどうすればいいか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

前立腺肥大とは

ここでは、前立腺肥大の概要を解説するとともに、症状や原因についても紹介します。

前立腺肥大の概要

前立腺とは男性にのみある器官で、直腸と恥骨の間に位置し、尿道を取り囲んでいる場所にあります。尿道を取り巻いている内腺と、その外側に存在する外腺で構成されており、前立腺肥大が発生するのは内腺です。前立腺の役割は、前立腺液と呼ばれる精液の一部を作ったり、精子に栄養を与えたり、精子を保護を行ったりすることです。

前立腺肥大は、この前立腺が肥大することで起こる状態です。前立腺は通常の場合クルミくらいの大きさですが、前立腺が肥大すると、卵やみかん程度の大きさにまで膨れ上がります。

前立腺は30代後半から肥大し始めます。東京女子医科大学病院によると、前立腺が肥大する割合は、40代では40%、50代では50%、60代では60%、70歳代では70%の人に見られ、85歳までにはほとんどの男性の前立腺が肥大しているとされています。

ただし、前立腺が肥大したからといって必ず症状が出るわけではなく、症状が出るのは前立腺が肥大した方のうち4人に1人程とされています。

参考: 東京女子医科大学病院「前立腺肥大症」 おしっこ新ライフ「ー排尿トラブルを起こす男性の病気ー 前立腺肥大症

前立腺肥大の症状

前立腺肥大の主症状は排尿障害、蓄尿障害、排尿後障害です。

排尿障害は、前立腺が肥大した結果、尿道が圧迫されることで起こります。排尿障害の主な症状は、尿が出にくく力を入れないと尿が出ない、尿が分かれて出てくる、尿の勢いが弱い、排尿をしたいという気持ちはあるのになかなか出てこない、といったものです。

これらの症状と同じくらい多く見られるのが蓄尿障害です。蓄尿障害の主な症状は、頻尿です。頻尿の基準には具体的な目安はありませんが、主に昼間は8回以上、夜間は就寝後1回以上排尿のために起きる場合、頻尿とされることが多いです。頻尿となる理由は、前立腺が肥大することによって膀胱が圧迫され、尿が膀胱に貯められなくなるためであると考えられています。

また、急に排尿が猛烈にしたくなるというのも蓄尿障害の特徴です。これを尿意切迫といいます。頻尿と尿意切迫を2つ併せて過活動膀胱と呼び、前立腺肥大の方のうち50~70%が過活動膀胱を合併していると考えられています。

さらにもう1つ見られるのが排尿後障害です。排尿後障害の代表的な症状が残尿感で、排尿をしたのにスッキリした感じがせず、またトイレへ行くということを繰り返してしまうものです。また、排尿後に尿がぽたぽた垂れてきてしまう排尿後尿滴下も、排尿後障害の症状です。

これらの排尿に関係する症状を統合してLUTSと呼びます。LUTSの症状を国際前立腺症状スコアに則って数値化し、数字が高ければ高いほど前立腺肥大症と診断されます。

参考:泌尿器科学教室「前立腺肥大症

前立腺肥大の原因

前立腺肥大の原因はまだはっきりと分かってはいないものの、男性ホルモンが影響しているのではないかと考えられています。

加齢に伴って、男性ホルモンを含む性ホルモン環境は変化します。ホルモンの環境が変化した結果、前立腺が肥大するのではないかと考えられているのです。

前立腺肥大になりやすい人

ここからは、前立腺肥大にはどのような人がなりやすいかについて、解説します。

家族に既往歴がある人

前立腺肥大は遺伝的な要因が強いとされています。

特に、父親あるいは兄弟が前立腺肥大の手術をしたことがある場合、自分も前立腺肥大となる可能性が高いとされています。前立腺肥大症診療ガイドラインによると、リスク比率は、遺伝的要因がない人を1とした場合、父親で1:3.5、兄弟で1:6.1となっています。

また、一卵性双生児の前立腺肥大症のリスクは二卵性双生児の約3倍ともいわれています。

しかし、これだけ遺伝的要因に関するデータが出ていながらも、なぜ遺伝的に前立腺肥大になりやすくなるのか、どの遺伝子が前立腺肥大と関係しているのかについては現在も研究中とされています。

参考:日本泌尿器科学会「前立腺肥大症診療ガイドライン

肥満・高血糖の人

肥満や高血糖の人は、前立腺肥大にもなりやすいとされています。

ただし、肥満や高血糖が前立腺肥大とどのように関係しているかについては、研究中の段階にあります。

前立腺肥大とEDの関係性

前立腺肥大はEDの原因の1つとなるとされています。

EDはLUTSの重症度と関連していることから、前立腺肥大が大きくなり重症となるほどEDも重症化するのではと考えられているのです。

また、前立腺肥大症とEDの発症メカニズムには、交感神経の過剰な活動や骨盤内の血行の悪化、血管を広げる成分の産生不足という共通点があります。

共通するメカニズムがあるからこそ、前立腺肥大症とEDは同時に起こりやすいと考えられます。

EDの症状について詳しく知りたい方は、「EDの症状とは?EDの治療法や改善すべき生活習慣も解説」も参考にしてみてください。

前立腺肥大の治療方法

前立腺肥大の治療をすることでEDが改善する可能性があります。前立腺肥大の治療はさまざまなものがありますが、今回はED改善への効果も期待できる、内科的治療と外科的治療にフォーカスを当てて解説します。

内科治療

内科的治療では内服薬を使用して前立腺肥大を治療します。

第一選択薬として使用されるのが、α1アドレナリン受容体遮断薬です。α1アドレナリン受容体遮断薬は、前立腺と膀胱部分にある平滑筋という筋肉の緊張に関わる、α1アドレナリン受容体を阻害する薬です。前立腺肥大による尿道の閉塞を緩和させ、排尿障害を軽減します。

薬剤を使用した方のうち約3分の2の方が症状を緩和したと前立腺肥大症診療ガイドラインにて報告されています。

主な副作用には、起立性低血圧、疲れやすい、射精障害、鼻詰まり、頭痛、眠気があります。

α1アドレナリン受容体遮断薬の次に推奨されているのが5α還元酵素阻害薬です。5α還元酵素阻害薬は、前立腺の細胞を成長させるジヒドロテストステロンの産生を抑え、前立腺肥大を改善させる薬剤です。α1アドレナリン受容体遮断薬で十分な効果が得られない場合、5α還元酵素阻害薬が用いられます。

参考:日本泌尿器科学会「前立腺肥大症診療ガイドライン

外科的治療

薬物治療の効果が不十分である場合や、症状が中等度から重度である場合、尿閉や尿路感染症、血尿・膀胱結石などといった合併症がある場合には、手術をします。

手術では、腫れた部分を切除したり、前立腺そのものを切ったりします。また、近年では高出力のレーザーを照射して腺腫を蒸散させる方法が取られることがあります。手術は体への負担が大きいため積極的には行われないものの、日常生活への支障や生命のリスクがある場合には最優先で行われるでしょう。

前立腺肥大の治療をした結果EDになることも

治療によっては、治療をした結果EDになるという可能性もあります。ここでは、どんな治療によってEDが起こってしまうのか、解説します。

内科的治療

5α還元酵素阻害薬を使用した場合、2.0~9.6%の割合でEDが生じると前立腺肥大症診療ガイドラインには記載されています。

逆に、α1アドレナリン受容体遮断薬においてはEDの改善効果が認められています。α1アドレナリン受容体遮断薬で前立腺肥大を治療した場合においては、EDも治療できる可能性が期待できます。

参考:日本泌尿器科学会「前立腺肥大症診療ガイドライン

外科的治療

前立腺肥大症診療ガイドラインによると、前立腺肥大症の外科治療におけるEDの発現頻度は0~12.5%とされています。

手術によってEDが改善されたという報告はなく、手術による治療は術中操作による神経の損傷などにより、EDになるリスクが懸念される治療方法になります。

EDの治療方法については、「EDの治療方法は?原因やED治療薬について詳しく解説」を参照してください。

参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]

前立腺肥大の予防方法

前立腺肥大は日常生活の中で予防することが可能です。ここからは、日常生活において前立腺肥大を予防する方法を紹介します。

食習慣を見直す

食習慣を見直すことで、前立腺肥大の予防へと繋げられます。前立腺肥大には、これといって原因となる食材はなく、食べてはいけない物はありません。

一方で、前立腺肥大を改善させる食材は存在します。以下で紹介する食材を食べることで、前立腺肥大の抑制効果が期待できるでしょう。

  • 野菜
  • 穀物
  • 大豆製品

これらの食材には女性ホルモンであるエストロゲンと似た作用をもつイソフラボノイドやリグナンという物質が含まれており、前立腺肥大症の抑制因子となるとされています。

また、これらの物質は 5α還元酵素抑制作用も有していることから、EDの改善にも合わせて効果があると考えられています。

排尿を我慢しない

尿は我慢せずになるべくすぐに出すようにしましょう。

前立腺および膀胱、尿道への刺激を繰り返していると、前立腺肥大の症状が出やすくなると考えられています。おしっこを我慢することで、膀胱へ継続した刺激が加わってしまうため、尿意を感じたら早めに出しきりましょう。

まとめ

前立腺肥大は、加齢に伴い多くの男性にみられます。排尿にまつわる症状がみられるのは4人に1人程度で、症状が見られた場合に前立腺肥大症と診断されます。

前立腺肥大症とEDはそのメカニズムからも密接な関係性があるとされているため、EDにも悩んでいるのであれば前立腺肥大の治療は必要といえるでしょう。

しかし、前立腺肥大症の治療をすることによってEDになる可能性もあります。そのため、専門医に相談をして適切な治療を受けることが、前立腺肥大とEDの改善につなげられるといえるでしょう。

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この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会