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更新日:2024年02月21日

勃起の仕組みとは?妨げとなる要因やEDに該当する硬さ・角度を解説

この記事のまとめ
  • 勃起は、陰茎に血流が多く流入することで起こる
  • 夜間勃起は、性的刺激とは関係なく、無意識的に起こるとされている
  • 勃起の妨げとなる要因は、自律神経の乱れや血管・神経障害
  • 勃起不全(ED)の治療にはED治療薬の服用が有効

勃起の仕組みは複雑で、血管や神経、さまざまな物質が正しく作用することが必要です。いずれのプロセスが欠けても、うまく勃起が行えなくなります。

本記事では、勃起の仕組みや勃起を妨げる要因について解説します。また、EDの診断における勃起の硬さや角度の指針も紹介します。

勃起に不安を抱え、勃起不全(ED)かもしれないと悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

勃起とは

勃起とは、男性の性器である陰茎が硬直し、膨張する現象のことです。

男性が性的刺激を受けて興奮し、陰茎が硬く立ち上がることを指します。勃起は性的興奮によって起こり、性的行為のために必要な身体の反応です。

勃起の兆候は幼少期から現れますが、幼少期の場合は性的興奮とは無関係で、身体の発達における自然な現象とされています。思春期に入ると、性的刺激による勃起が起こるようになります。 年齢により勃起力は変化するとされ、角度や硬さも変化していきます。硬さや角度が一般的な基準を満たしていない場合は、勃起不全(ED)の可能性も考えられるでしょう。

EDについて詳しく知りたい方は、「EDとはどんな症状?原因別の治療方法からセルフケアについても解説」も参考にしてみてください。

勃起の仕組みとは

男性器の勃起は、複雑なプロセスによって起こっています。以下に、勃起が起こる仕組みを解説します。

1.性的刺激を受けて脳が信号を送る

勃起のプロセスは、性的な刺激からはじまります。視覚・触覚・聴覚などのさまざまな刺激が、性的興奮を引き起こします。 脳が性的な刺激に応答し性的興奮を感知すると、陰茎に対して信号を送ります。

2.脳から陰茎に性的刺激が伝わる

脳が感知した刺激は、脊髄を通り副交感神経を伝って陰茎に伝達されます。

交感神経と副交感神経の2種類の自律神経のうち、勃起を支配するのは副交感神経です。副交感神経が優位に働いていると、脳からの信号が伝達されます。

3.一酸化窒素(NO)が血管を拡張させる

性的刺激により副交感神経から信号が伝わると、陰茎の血管に一酸化窒素(NO)が放出されます。

一酸化窒素(NO)は、血管内にcGMPという物質を増加させ、陰茎の平滑筋を弛緩させます。平滑筋が弛緩すると、陰茎の血管が拡張し、陰茎に十分な血液供給が行われるようになります。 平滑筋は陰茎の血管壁や海綿体を取り巻く組織に存在し、収縮状態では血液の流れを妨げています。

4.陰茎海綿体に血液が多く流れ込む

一酸化窒素(NO)とcGMPの働きにより平滑筋が緩み、陰茎の動脈の血管が広がると、陰茎海綿体に血液が多く流れ込みます。

陰茎海綿体はスポンジ状で、非勃起時には血液の流入が制限されており、少量の血液しか流れていません。 しかし、陰茎の血管が拡張されると、陰茎海綿体に多くの血液が流れ込み、スポンジ状の組織の体積が増大します。

5.陰茎が硬化する

陰茎海綿体に多くの血液が流入すると、陰茎が膨張し硬直することで、勃起が成立します。勃起が成立すると一定期間持続し、性的行為ができる状態になります。

血管を拡張する作用を持つcGMPは、勃起が解消されないようにも働きます。勃起を維持するために必要な血流と血液の滞在を促進し、性的快感が持続する役割を果たします。

6.勃起の解消

性的興奮が収まったり射精したりすると、勃起は解消されます。

勃起の解消には、陰茎海綿体に存在するPDE5という酵素が関わっています。PDE5は、勃起を維持するためのcGMPを分解する作用があります。 性的刺激が減少するとPDE5が活性化し、cGMPを分解して勃起状態が解消されます。

夜間勃起とは

夜間勃起または朝立ちは、健康な成人男性に自然に発生する現象です。夜間勃起は、性的刺激とは関係なく、睡眠サイクルに関連してレム睡眠時に無意識的に起こるとされています。

人は、睡眠時にレム睡眠とノンレム睡眠を約90分のサイクルで繰り返しています。レム睡眠中は夢を見やすく、脳が働いている状態です。この間に陰茎の血管が拡張し、血液が流れ込むため、勃起が起こることが一般的です。

また、朝目が覚める際はレム睡眠の状態であることが多いため、朝立ちが起こることがあります。

勃起の硬さや角度の適正は?

「性行為に十分な硬さではない気がする」「以前より角度が低い」など、勃起はするけれど硬さや角度が適正なのか気になるという方もいらっしゃるでしょう。

ここからは、勃起時の硬さや角度の指針について解説します。

勃起の硬さのスケール

勃起の硬さを判定するには「勃起の硬さスケール(日本語版EHS)」を使用した方法が、一般的に用いられています。 EHSは、2007年にアメリカで開発されました。0~4のグレードで簡便に自己判断できるうえ、信頼性も高いとされています。

アメリカ版を元に、2009年に日本版として作成された基準は以下のとおりです。

グレード硬さのイメージ勃起硬度の自己評価
0陰茎は大きくならない
1こんにゃく陰茎は大きくなるが、硬くはない
2みかん陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない
3グレープフルーツ陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くない
4りんご陰茎は完全に硬く、硬直している

EDの定義は「満足な性行為を行うのに十分な勃起を得られない状態、または勃起が維持できない状態が持続する」です。

そのため、グレード0だけではなく、グレード1、2もEDと診断される可能性があるといえるでしょう。グレード3の場合も、勃起が持続しないなど、性行為に支障があればEDと診断される可能性があります。

参考:日本性機能学会「勃起の硬さスケール(日本語版EHS)

勃起の角度の指針

勃起の角度は俗説として、手のひらを広げた角度が、各年代の勃起角度のイメージという定義もあります。 薬指の側面(小指側)を地面と水平にして、手のひらを広げます。親指は20代、人差し指は30代、中指は40代、薬指は50代、小指は60代の勃起時の角度を現すといわれています。しかし、この説には医学的根拠はありません。

一般的に、年齢が上昇すると、陰茎と恥骨をつなぐ靱帯が緩くなり、勃起角度が下がる傾向があります。そのため、角度が低いだけではEDとは言い切れません。 しかし、陰茎は硬くなるほど上向きになります。勃起角度が低い場合は、硬さが足りていない可能性があります。

角度や硬さに問題が生じている場合は、ED治療を検討しても良いでしょう。

勃起の妨げとなる要因

陰茎が勃起するプロセスにおいて、勃起の妨げとなる要因は以下の例が挙げられます。

  • 自律神経のバランスの乱れ
  • 一酸化窒素(NO)の不足
  • 血管障害
  • 神経障害
  • 薬の服用

ここからは、勃起不全を引き起こすそれぞれの要因について解説します。

自律神経の乱れ

勃起は自律神経によりコントロールされており、自律神経の乱れは勃起不全の要因の一つです。

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つから構成されている神経です。 交感神経は、緊張や興奮時に活性化し、副交感神経は、リラックス時や休息時に活性化する神経です。勃起は、副交感神経によりコントロールされています。

ストレスや不安などの心因的な要因により自律神経のバランスが乱れると、交感神経が過剰に活性化し、副交感神経が抑制されます。すると、陰茎の血管が収縮し、血流が悪くなるため、勃起が起こりにくくなります。

一酸化窒素(NO)の不足

一酸化窒素(NO)の不足は勃起を妨げ、EDを引き起こす原因となります。

一酸化窒素(NO)は、平滑筋の弛緩を促して血管を拡張させ、血液の流れを増加させる役割を果たす物質です。性的刺激を受けたときに、陰茎の血管を広げて血液を陰茎に送り込むのを助けます。

しかし、糖尿病や高血圧などの慢性疾患や、喫煙などの生活習慣により、体内での一酸化窒素(NO)反応が低下する場合があります。 一酸化窒素(NO)反応が低下すると、陰茎への血液供給が不足し、勃起が難しくなります。

血管障害

血管障害も、勃起に影響を与える要因の一つです。 勃起は、性的刺激によって陰茎海綿体に血液が流れ込むことで起こります。しかし、血管が硬くなったり狭くなったりすると、血液が十分に流れ込まなくなり、勃起が起こりにくくなります。

血管障害の原因として挙げられるのは、高血圧や糖尿病、喫煙、過度の飲酒などです。 これらの疾患は血管が狭くなったり硬くなったりする動脈硬化を促進します。動脈硬化が進行すると、陰茎海綿体への血流が悪くなり、勃起不全となる可能性が高まるでしょう。

また、事故や手術で血管が損傷した場合も、血流が悪くなり勃起不全となる可能性があります。

高血圧とEDの関係性については、「高血圧はEDを合併する可能性が高い?薬物療法や生活習慣についても解説」でも詳しく解説しています。

神経障害

神経障害も勃起を妨げる原因となります。 勃起は、脳から陰茎に神経伝達物質が放出されることで起こる現象です。神経に障害があると、脳から陰茎への神経伝達物質が十分に放出されなくなり、勃起が起こりにくくなります。

神経障害の原因として挙げられるのは、糖尿病や脳卒中、椎間板ヘルニア、パーキンソン病などです。これらの疾患は、神経の損傷や機能の低下を引き起こし、勃起不全の原因となる場合があります。

また、陰茎部の手術や骨盤の骨折などによって神経が損傷を受けた場合も、EDになることがあります。

薬の服用

薬の服用による副作用が、勃起の妨げとなる場合もあります。以下は、勃起不全を引き起こす可能性がある種類の薬剤です。

  • 降圧剤
  • 精神神経薬
  • 抗男性ホルモン剤
  • 抗潰瘍薬
  • 脂質異常症治療薬
  • 呼吸器官・アレルギー用剤

これらの薬剤は、それぞれ勃起をコントロールする神経や血管、男性ホルモンなどに影響を与えることで、EDを引き起こす可能性があります。

普段から薬を服用していて勃起不全の症状が現れた場合は、薬の副作用が原因の場合があるため、医師に相談しましょう。

勃起不全(ED)の治療方法

勃起力の低下を自覚したら、ED治療をはじめてみましょう。EDを改善するには、ED治療薬の服用とあわせて、普段の生活習慣の見直しも大切です。

ED治療薬の服用

勃起力の改善には、ED治療薬を服用する方法があります。ED治療薬の服用により、陰茎海綿体に血液が多く流入し、勃起が促進されます。

仕組みとしては、cGMPを分解するPDE5を阻害する作用によって、勃起をサポートします。PDE5を阻害し、cGMPの分解を抑制してcGMPの数を増やすことで勃起を促します。そのため、ED治療薬はPDE5阻害薬とも呼ばれます。

代表的なED治療薬には、バイアグラのほか、レビトラ、シアリスといった種類があります。それぞれ勃起力や持続時間などの特徴が異なるため、自分の状況・目的に合わせて選択しましょう。ちなみに、レビトラは2023年現在販売が中止されており、後発医薬品(ジェネリック医薬品)のバルデナフィルが使用されています。

ED治療薬は、泌尿器科やEDの専門外来、オンラインクリニックで受診し処方を受けることが可能です。勃起に不安を抱えている方は、ぜひ一度相談してみましょう。

ED治療薬については、「ED治療薬の特徴は?3種類の薬の勃起力や即効性、持続時間・副作用を解説」でも詳しく解説しています。

生活習慣の見直し

勃起不全(ED)の改善には、普段の生活習慣の見直しも大切です。 具体的には、以下のように生活習慣の改善を実践しましょう。

  • バランスの良い食事を摂る
  • 適度な運動を行う
  • 飲酒は適量を心掛ける
  • 禁煙する
  • ストレスを発散させる

高脂質、高カロリーなどの偏った食生活は、EDの原因となる生活習慣病を引き起こす恐れがあります。普段の食事に野菜や果物などを取り入れ、バランスの取れた食事を心がけましょう。

肥満はテストステロンの減少や糖尿病・高血圧のリスクを高めるため、付随してEDのリスクを高めてしまいます。肥満を解消するためには、適度な運動を取り入れましょう。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、ストレス解消にも役立ちます。

また、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、陰茎への血流を阻害します。EDのリスクを高める原因となるため、EDを改善するには禁煙がおすすめです。

ED治療薬の服用と並行して生活習慣を改善することで、勃起力の向上につながると考えられます。

まとめ

本記事では、勃起が起こる仕組みや、勃起の妨げとなる原因について詳しく解説しました。 勃起を妨げる要因は、血管障害や神経障害などさまざまです。いくつかの問題が絡みあっている場合もあるため、自身で要因を特定して改善するのは難しいといえるでしょう。 勃起できない、勃起時の硬さが低下している、などの悩みを抱えている方は、医療機関を受診してみるのはいかがでしょうか。問診・診察によって最適なED治療薬を処方してもらえれば、状況を改善できる可能性があります。 対面診療に抵抗がある方は、オンラインクリニックも検討してみましょう。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会