更新日:2026年09月02日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
5αリダクターゼがAGAに関与すると聞いて、メカニズムや対処法を知りたい方もいるかもしれません。5αリダクターゼは還元酵素の一種で、男性ホルモンのテストステロンをAGAの原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)へ変換する働きを持つものです。本記事では、5αリダクターゼの種類やAGAとの関わり、抑制方法などを解説します。AGA発症の仕組みを知り、治療方法を検討するための参考にしてみてください。
5αリダクターゼは体内に存在する酵素で、男性ホルモンの代謝に関与します。この酵素は男性ホルモンのテストステロンを、より強力な作用を持つDHT(ジヒドロテストステロン)に変換します。 5αリダクターゼはテストステロン自体よりも、DHTへの変換後に毛包へ強く作用すると考えられています。テストステロンが5αリダクターゼの作用によりDHTへ変換されると、毛乳頭細胞へ作用し、毛周期を短縮することでAGAの進行につながる場合があります。 5αリダクターゼにはI型とII型があり、体内に分布する部位が異なります。
| 種類 | 主な分布部位 | 主な働き・関連 | AGAへの関与 |
|---|---|---|---|
| l型 | 全身の皮膚・皮脂腺、頭皮全体 | 皮脂分泌に関与、皮膚トラブルと関連 | ll型より小さい(間接的) |
| ll型 | 前立腺・髭、前頭部・頭頂部の毛乳頭 | AGA関連部位でのDHT産生に深く関与 | 大きい(直接的) |
ここでは、I型とII型それぞれの特徴を解説するので、まずは5αリダクターゼについて理解しましょう。
5αリダクターゼI型は、主に全身の皮膚や皮脂腺に存在し、頭部においては皮脂腺や皮膚に多く、頭皮では全体に分布する酵素です。5αリダクターゼI型の活性度が高いと皮脂の分泌量が増え、頭皮のベタつきや炎症を引き起こして間接的に薄毛に影響を与える可能性があります。 また、5αリダクターゼI型は全身の皮膚に広く分布していることから、過剰な皮脂分泌によるニキビなどの皮膚トラブルとも関連しています。ただし、I型による影響はあくまで皮脂分泌による「環境要因」が主であるため、AGAへの直接的な関与はII型より小さいといえるでしょう。
5αリダクターゼII型は前立腺や髭、前頭部や頭頂部の毛乳頭などに存在する酵素です。II型はI型と比較してAGA関連部位におけるDHTの産生に深く関与しており、活性度が高い場合は生え際の後退や頭頂部の薄毛に影響を与えると考えられています。 また、II型の特徴として、頭皮の毛乳頭細胞に多く存在することが挙げられます。DHTが毛乳頭細胞のアンドロゲンレセプターと結合すると、髪の成長を阻害する物質を生成し、ヘアサイクルが短縮されます。 なお、DHTは頭髪には脱毛を促す一方で、脇や髭などの体毛に対しては発毛を促進する作用を持つのが特徴です。
DHT(ジヒドロテストステロン)が毛乳頭細胞の受容体と結合することで生成される脱毛因子TGF-βやDKK1によって、毛包の成長シグナルが抑制され、成長を抑制するシグナルが発信されます。

このシグナルは毛包周囲の環境を悪化させることで、髪の基となる毛母細胞の増殖を抑制し、ヘアサイクルの成長期が極端に短縮されてしまうのです。 その結果、髪が十分に育つ前に抜け落ちるようになり、DHTの影響を受け続けた毛包は徐々に萎縮していきます。これにより毛包のミニチュア化が進行し、最終的には産生される髪も細く短い産毛のような状態へと変化するのです。

5αリダクターゼがDHTを生成し、ヘアサイクルを短縮させます。AGA治療では、DHTの生成を防ぐために5αリダクターゼを阻害する治療薬を使うことが一般的です。毛包のミニチュア化が進む前に、乱れたヘアサイクルを正常化させることが大切といえます。
自分は5αリダクターゼの活性度が高いのかどうか、気になる方もいるかもしれません。以下に主な特徴をまとめました。
ただし、上記に該当したからといって、必ずしもAGAになるとは限りません。 ここでは、5αリダクターゼの活性度が高い可能性がある人の特徴として、遺伝的要素と体毛の濃さについて解説します。
AGAのなりやすさには遺伝的要素が関与しており、5αリダクターゼの活性やアンドロゲンの感受性もその一因と考えられています。家族歴がある人は、5αリダクターゼの活性度が高く、DHTの生成量が多いなどAGA関連の遺伝的素因を受け継いでいる可能性があります。 また、アンドロゲンレセプターがDHTにどれくらい反応するかという「感受性」も、遺伝的な要因の一つです。感受性を決定する遺伝情報は、X染色体上に存在します。男性はX染色体を母親から受け継ぐため、母方家系の薄毛傾向は自身の傾向の参考になりますが、それだけが将来の薄毛を決定するものではありません。 遺伝的要素があるからといって必ず薄毛になるわけではなく、遺伝的要素を受け継がない場合もあります。また、AGA以外の疾患や生活習慣などが間接的に影響する場合など、薄毛にはさまざまな原因が考えられるのです。
5αリダクターゼの活性度が高い人の特徴として、「皮脂の多さ」や「体毛の濃さ」も挙げられます。5αリダクターゼI型は皮脂の分泌に関わっています。そのため、皮脂が多い人はアンドロゲンの働きが活発な可能性があります。 また、髭の濃さはアンドロゲンの感受性を知るための目安の一つです。髭の毛包においては、DHTがアンドロゲンレセプターと結合すると「細胞成長因子」が誘導されます。これにより成長期が延長されるため、髭はより太く濃く育つのです。 しかし、前頭部や頭頂部ではDHTとの結合によって成長期が短縮されてしまうため、5αリダクターゼの活性度が高い人は、髭が濃くなる一方で、頭髪の薄毛に影響を与える可能性があります。
5αリダクターゼを抑制する代表的な治療薬として、フィナステリドとデュタステリドがあります。どちらの治療薬も医療機関を受診し、医師の処方を受けて入手することが推奨されます。個人輸入などで入手することは避け、医師の管理下で正しく服用してください。
フィナステリドは日本国内で承認されているAGA治療薬で、先発品は「プロペシア」、ジェネリック医薬品は「フィナステリド錠」の名称で処方されています。 フィナステリドは5αリダクターゼII型を選択的に阻害し、テストステロンからDHTへの変換を抑制する効果が期待される薬剤です。DHTを抑制しヘアサイクルを改善することで、抜け毛の抑制が期待されます。 フィナステリドは5αリダクターゼII型を阻害し、性欲低下や勃起機能低下などの副作用が報告されています。また、フィナステリドは前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA値を約50%低下させる可能性があるため、前立腺がんを診断する目的で血清PSA濃度を測定する場合は、医師に服用の旨を必ず伝えてください。 そのほか、フィナステリドの添付文書で報告されている主な副作用は以下のとおりです。
| 1~5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
|---|---|---|---|
| 過敏症 | そう痒症、じん麻疹、発疹、血管浮腫 | ||
| 生殖器 | リビドー減退 | 勃起機能不全、射精障害、精液量減少 | 睾丸痛、血精液症、男性不妊症・精液の質低下 |
| 肝臓 | AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇 | ||
| その他 | 抑うつ症状、めまい |
副作用は上記の頻度ですべての人に必ず起こるわけではありません。副作用の有無や症状、程度には個人差があります。 上記の過敏症はフィナステリドに限った副作用ではなく、どの薬においても起こり得ます。肝機能障害はまれですが報告されており、服用中に体調変化があれば医師に相談することが大切です。 フィナステリドの効果を実感できるまでの時期や程度には個人差がありますが、少なくとも6ヶ月間は医師の指示どおりに服用することが推奨されます。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」
デュタステリドも5αリダクターゼ阻害薬で、I型とII型の両方を阻害するのが特徴です。デュタステリドも日本国内で承認されており、先発品の名称は「ザガーロ」、ジェネリック医薬品は「デュタステリド錠」です。 フィナステリドとデュタステリドでは阻害する酵素のタイプが異なり、治療反応にも差が出る場合があります。

デュタステリドの添付文書で報告されている主な副作用は、以下のとおりです。
| 1%以上 | 1%未満 | 頻度不明 | |
|---|---|---|---|
| 生殖器 | リビドー減退、勃起不全 | 射精障害、精液量減少 |
ここでは、5αリダクターゼに関する疑問や不安について、Q&A形式で解説します。AGA治療薬の服用に不安があり、治療の開始を迷っている方は参考にしてみてください。
5αリダクターゼ阻害薬の効果が出るまでどのくらいかかりますか?
フィナステリドやデュタステリドは、少なくとも6ヶ月程度の継続服用で効果判定を行うのが一般的です。ヘアサイクルが正常化するまでに時間がかかるため、すぐに変化が出なくても自己判断で中止せず、医師の指示に沿って継続することが大切です。効果を実感できる時期や程度には個人差があります。
5αリダクターゼ阻害薬は一生飲み続ける必要がありますか?
服用を中止するとDHTの抑制効果が徐々に失われ、再びAGAが進行する可能性があるため、効果を維持したい場合は継続的な服用が必要です。ただし、一生飲み続けなければならないと決まっているわけではなく、年齢や進行パターン、生活環境の変化に応じて治療内容が見直される場合もあります。自己判断でやめず、医師と相談しながら調整しましょう。
5αリダクターゼは、テストステロンをDHTに変換させる酵素です。この酵素にはI型とII型の2種類あります。DHTが毛乳頭細胞のアンドロゲンレセプターに作用すると、ヘアサイクルが短縮され、髪が十分に成長する前に抜け落ちる原因となります。 家族に薄毛の人が多かったり、頭皮の脂っぽさや髭の濃さが気になったりする場合は、5αリダクターゼの活性度が高い可能性があるでしょう。 5αリダクターゼの働きを抑えるには、食べ物やサプリメントを頼るだけでは難しいとされています。医療機関で処方されるフィナステリドやデュタステリドなどのAGA治療薬による医学的なアプローチが必要です。 AGAは進行性の脱毛症のため、早期に医師に相談し適切な治療を始めることが大切です。まずは自身の状態を知ることから始めてみましょう。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠 添付文書」
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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| 睾丸痛、睾丸腫大 |
| 精神神経系 | 抑うつ症状、めまい |
| 肝臓 | 肝機能障害 | AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇 |
| 過敏症 | 発疹、そう痒症、じん麻疹、血管浮腫 |
副作用の有無や程度には個人差があり、すべての人に必ず起こるわけではありません。デュタステリドもフィナステリドと同様に、服用中に体調変化があれば医師へ相談しましょう。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠 添付文書」

食べ物やサプリメントだけでDHTの生成を抑えるのは難しいとされています。栄養バランスの良い食事は頭皮環境を整える土台です。AGAの進行が気になる場合は、5αリダクターゼを阻害する治療薬について医師にご相談ください。