更新日:2026年07月17日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
筋トレをするとはげるという噂を聞き、不安に思う方もいるかもしれません。筋トレが薄毛の原因になる医学的根拠はなく、むしろ適切な筋トレは頭皮環境を整える可能性があります。筋トレではげるといわれる理由は、筋トレで増えるテストステロンと、薄毛の原因であるDHT(ジヒドロテストステロン)が混同されやすいためです。薄毛が気になる場合、早めに医師へ相談しましょう。
筋トレと薄毛に直接的な因果関係は確認されていません。男性の場合、薄毛の原因はAGA(男性型脱毛症)の可能性があります。AGAは筋トレと関係なく、体質や遺伝的要因で発症するのが特徴です。
筋トレによって薄毛や脱毛症になるという医学的根拠は、現在のところ存在しません。薄毛の原因となり得るのは、AGA(男性型脱毛症)やストレス、不衛生な頭皮環境などです。筋トレはこれらの原因にはならず、むしろ健康的な体の維持につながります。
成人男性の薄毛の主な原因は、AGAです。AGAは思春期以降の男性にみられる進行性の脱毛症で、遺伝や体質が強く関係しているといわれています。AGAの原因物質は、男性ホルモンから作られるDHT(ジヒドロテストステロン)です。筋トレによって、DHTが増えるということはありません。
「筋トレではげる」という噂の真偽を正しく理解するには、まずAGAのメカニズムを知っておきましょう。ここでは、テストステロンとDHT(ジヒドロテストステロン)の関係から、そのメカニズムを解説します。
テストステロンは、筋肉や骨格の形成、意欲の維持などに関わる男性ホルモンの一種です。筋トレで刺激を受けると分泌が活発になり、血液中のテストステロン量が増えることが知られています。テストステロン自体は、男性にとって欠かせない有益なホルモンです。
問題となるのは、このテストステロンが「5αリダクターゼ」という酵素と結びついたときです。両者が結合すると、より作用の強い活性型の男性ホルモンであるDHTに変換されます。AGAの原因はテストステロンではなく、変換後のDHTです。
髪には、毛が伸びる「成長期」、成長が止まる「退行期」、毛が抜け落ちる「休止期」という周期(ヘアサイクル)があります。

成長期は数年単位で続き、太く長い髪が育つのが通常の状態です。 ところが、DHTが毛乳頭にあるアンドロゲンレセプター(受容体)と結びつくと、髪の成長を止める「脱毛因子」が出されます。

これによって成長期が極端に短くなると、髪は太く育ちきる前に抜け落ちてしまいます。その結果、細く短い髪が増え、全体的に薄毛が目立つようになるのです。
AGAの発症や進行には、5αリダクターゼの量や活性度、アンドロゲンレセプターの感度などが複雑に関わっています。 そして、これらの量や感度には、遺伝的な要因が大きく関与すると考えられているのです。
たとえ筋トレにより、テストステロンが増えても、5αリダクターゼの活性が低ければDHTは増えにくく、アンドロゲンレセプターの感度が低ければ脱毛因子も出にくくなります。つまり、「筋トレでテストステロンが増えること」と「AGAになること」はイコールではありません。
筋トレと薄毛に直接の因果関係がないにもかかわらず、なぜ噂が広まったのでしょうか。主な理由として考えられるものに加え、関連してよく聞かれるクレアチンの話題も取り上げます。
最も大きな理由は、筋トレによってテストステロンの分泌が促されることへの誤解です。前述したとおり、AGAの原因はテストステロンではなく、5αリダクターゼと結びついて生じるDHTです。筋トレで増えるのはあくまでテストステロンであり、それが自動的にDHTを増やすわけではありません。テストステロンとDHTを混同したことが、誤解の原因だといえます。
実際、テストステロンの分泌のピークは20代とされますが、20代のAGA発症率はほかの年代と比べてむしろ低めです。筋トレでテストステロンが多少増えても、それが直接はげる原因になるとは考えにくいでしょう。
「スクワットのような大きな筋肉を使う種目はテストステロンの分泌が多いため、はげやすいのでは」と心配する声もあります。確かに、スクワットやデッドリフトなど下半身・体幹の大きな筋群を使う高強度種目は、小さな筋肉を狙う種目に比べてテストステロンの分泌が高まりやすいといわれます。スクワットとテストステロンが結びつけて語られるのは、このためです。
しかし、スクワットでテストステロンが多く分泌されても、それが直接DHTを増やしたり、5αリダクターゼの量を増やしたりするわけではありません。
筋トレなどの激しい運動をすると、体内に活性酸素が増えます。活性酸素の過剰な産生には細胞を傷つける働きがあるため、毛髪の細胞にも悪影響があるのではないかと考えられたことも、噂の一因です。
しかし、人の体内には活性酸素を抑え、細胞組織の修復や再生を行う仕組みがもともと備わっています。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼといった内因性の抗酸化酵素や、ビタミンC・ビタミンE、カロテノイド類などの外因性の抗酸化物質が、活性酸素の産生を抑えダメージを修復します。筋トレで活性酸素が増えるからといって、はげるほど毛髪の細胞がダメージを受けるとは考えにくいでしょう。
筋トレをサポートするサプリメントとして人気のクレアチンについても、「飲むとはげる」という噂があります。これは、クレアチン25gを7日間、5gを14日間摂取するとDHTが上昇したと報告した小規模な研究が一部で取り上げられたことが背景にあります。ただし、この結果はその後同様の条件で再現されておらず、クレアチンとAGA発症との直接的な関係は明確になっていません。
複数の研究を総合しても、クレアチンがテストステロンやDHTを増やすという一貫した結論は得られていないのが現状です。過度に不安になる必要はありませんが、心配な場合は摂取量を見直したり医師に相談したりすると安心でしょう。
筋トレははげる原因にはならず、適切に行えば、健康的な体づくりにつながる可能性があります。その理由を3つ紹介します。
筋トレで体を動かすと血流が良くなり、全身の健康維持に役立ちます。髪の成長には、血行促進が大切です。筋トレによって全身の血流が良くなることで、間接的に健康的な髪を育てる土台づくりにつながります。
筋トレをすると、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンの量が増え、健やかな頭皮環境の維持につながる可能性があります。成長ホルモンには、アミノ酸の吸収率を高め、髪の主成分であるタンパク質の合成を促す作用があるためです。
また、高強度の筋トレで生じる乳酸は脳を刺激し、成長ホルモンの分泌を促すとされています。筋トレ時の血液中の成長ホルモン濃度は通常時の5〜10倍にもなり、睡眠中と同程度まで増えるのが特徴です。成長ホルモンの分泌を活発にするには、高重量を扱う強度の高いトレーニングが良いとされています。
筋トレには、薄毛の一因であるストレスを発散する効果が期待できます。筋トレを行うと、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌されます。また、セロトニンの増加は睡眠の質の向上にもつながります。
ストレス自体が薄毛の直接的な原因になるわけではありません。しかし、ストレスによって睡眠や食事、生活の質が低下すると、髪の成長に悪影響を与える可能性があるため、注意しましょう。
筋トレ自体ははげる原因ではありませんが、トレーニング後のケアが不十分だと、汗や皮脂がたまって頭皮環境が悪化し、抜け毛のリスクが高まる可能性があります。ここでは筋トレ後におすすめの薄毛予防策を紹介します。
筋トレ後は、頭皮の汗や皮脂を落とすためにシャワーを浴びましょう。お湯の温度は37〜39℃程度のぬるま湯がおすすめです。これより高温になると、頭皮を守るべき皮脂まで洗い流してしまい、頭皮環境の悪化を招くおそれがあります。
また、頻繁にシャンプーで洗いすぎると頭皮が乾燥し、かえって環境が悪化します。筋トレ後はお湯のみで汗を流し、夜寝る前にシャンプーをして頭皮環境を整えると良いでしょう。
すぐにシャワーを浴びられないときは、頭皮の汗をタオルでしっかり拭き取りましょう。汗を放置すると皮脂とともに酸化し、細菌が繁殖しやすくなります。細菌が増えると頭皮環境が悪化し、炎症のリスクが高まってしまいます。トレーニング中からこまめに拭き取ると良いでしょう。
プロテインの摂取は、筋肉の回復だけでなく健康な髪づくりにも役立ちます。髪の主成分は、ケラチンというタンパク質です。筋トレで傷ついた筋肉の修復にもタンパク質が使われるため、筋トレ後にプロテインで補うと良いでしょう。ただし、プロテインには髪が増える効果はありません。あくまで、健康な髪のためのタンパク質補給として利用しましょう。
髪の健康には、筋トレとあわせて生活習慣を見直すことが大切です。筋肉の修復にも健やかな髪にもタンパク質は欠かせません。肉や魚、卵、大豆製品などの良質なタンパク質に加え、髪の成長を助けるビタミンB群・鉄分なども積極的に摂りましょう。
また、牡蠣やレバー、アーモンドなどに含まれる亜鉛、納豆や豆乳、豆腐などに含まれる大豆イソフラボンなども髪に良い食べ物といわれています。
さらに、過度な飲酒や喫煙は血行を悪くし、栄養素の吸収を妨げます。特に、過度な飲酒は栄養バランスの乱れを招くおそれがあり、髪の成長や筋肉の修復に良くありません。健康維持のために、控えましょう。
薄毛が気になりだした場合、AGAを発症している可能性があります。AGAによる薄毛は、セルフケアだけで改善するのは困難で、医療機関での治療が必要です。進行性の脱毛症のため、気になる方はできるだけ早く受診しましょう。
近くにAGA専門のクリニックがない方や忙しい方には、オンライン診療がおすすめです。オンライン診療では、スマートフォンやパソコンを利用して診察から薬の受け取りまでを自宅で行えます。プライバシーを守りながら医師に相談できる点もメリットです。医師に相談することで、自分の症状に合った治療薬を処方してもらえるでしょう。
筋トレと薄毛に直接的な因果関係はなく、「筋トレではげる」というのは誤解です。むしろ適切な筋トレは、血行促進や成長ホルモンの分泌、ストレス発散を通じて健康な髪づくりに役立つ可能性があります。
男性の薄毛の主な原因はAGAで、テストステロンが5αリダクターゼと結びついて生じるDHT(ジヒドロテストステロン)が関与するのが特徴です。筋トレでテストステロンが増えても、DHTが直接増えるわけではありません。AGAになるかどうかは、5αリダクターゼの量やアンドロゲンレセプターの感度など体質や遺伝で決まります。スクワットなど高強度の種目でテストステロンが多く出ても、心配する必要はありません。
薄毛が気になる場合は、筋トレ後に頭皮を清潔に保ち、生活習慣を見直しつつ、できるだけ早めに医師へ相談することをおすすめします。
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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