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更新日:2024年03月06日

円形脱毛症は繰り返す?再発する原因と治療方法、予防について解説

この記事のまとめ
  • 円形脱毛症を繰り返してしまう原因には、円形脱毛症の病型の変化や治療の中断が上げられる
  • 円形脱毛症は自己免疫疾患、遺伝、アトピー素因によって発症する
  • 円形脱毛症の根治治療は確立されていないが、ステロイド局所注射など高い有効性が確認された治療法はある
  • アトピー性疾患や内分泌疾患の既往がなく、発症から一年以内に治療を受けた場合、患者の約8割が回復する
  • 単発型や多発型など、円形脱毛症の病型にあった治療を行うことが重要

円形脱毛症は、一度治ったとしても再発しやすい病気です。一度再発を経験すると、治ってもまたすぐに再発するのではと不安になってしまう方もいらっしゃるでしょう。

円形脱毛症を繰り返す原因を正しく知ることは、症状を早く改善し、再発を防止することにもつながります。本記事では、円形脱毛症が繰り返し起こる理由、ストレスとの関連性、再発を防ぐために日常生活で出来ることについて解説します。

円形脱毛症が繰り返し起こる原因

円形脱毛症は、年齢や性別を問わず誰でも発症する可能性があります。日本皮膚科学会の発行する「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版では、初めて円形脱毛症を罹患した場合、80%の患者が一年以内に回復することが報告されていますが、円形脱毛症は再発率の高い病気です。何故繰り返してしまうのか、その原因として考えられているものを3つ解説していきます。

病型の変化

円形脱毛症には単発型、多発型、全頭型、蛇行型、汎発型の5つの病型があります。初めて罹患する場合、コイン大の脱毛斑がひとつだけ出現する単発型が多いです。

単発型に初めて罹患した場合は特に治療しなくても自然治癒する可能性が高いですが、再発すると複数の脱毛斑が出る多発型や、頭部全体が脱毛する全頭型に移行する確率が高く、放置すると再発を繰り返し、症状を進行させる可能性があります。

治療の中断

円形脱毛症の治療を開始すると、回復期の過程でメラノサイトの活動が低下し、部分的に白髪が生えてくる可能性があります。メラノサイト細胞が正常に働くまで回復すれば髪の毛は黒くなりますが、それまでに治療の効果に不安を感じて、途中で治療を止めてしまうケースが多いのです。

効果を感じ難いことや、白髪が生えてきたことを理由に治療を止めてしまうと、円形脱毛症の再発や症状を進行させてしまう結果につながります。

円形脱毛症の治療法については、「円形脱毛症の治療方法とは?原因やセルフケアについて解説」を参照してください。

回復期の油断

円形脱毛症の病態には抜け毛が進行する進行期と、抜け毛が落ち着き脱毛斑が固定化する病状固定期があります。

進行期には髪の毛を引っ張ると数十本単位で抜け落ちますが、病状固定期には髪の毛を引っ張っても抜けなくなります。この後、回復期に入ると脱毛斑から産毛が生えてきますが、そのままどんどん回復していく部分と、再び脱毛してしまう部分が混在していることも多くあります。

一部に髪の毛が生えてきたから大丈夫だろうと油断して治療を止めてしまうと、再び脱毛を繰り返してしまうことになりかねません。

病型の変化を自分で見極めることは難しいため、治療を止める際には、医師の判断を仰ぐようにしましょう。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版

円形脱毛症の主な原因

そもそも、円形脱毛症はなぜ起きるのでしょうか。円形脱毛症はひとつの原因によって発症するのではなく、さまざまな要因が複合的に合わさることによって発症する可能性が高い病気です。

ここでは、円形脱毛症を引き起こすと考えられている3つの原因を挙げていきます。

自己免疫疾患

円形脱毛症は、毛包組織に対する自己免疫疾患が原因と考えられています。自己免疫疾患は、体を守るための免疫作用に異常が起こり、自身の細胞や組織を攻撃してしまうことで起きる疾患です。

円形脱毛症診療ガイドラインには、円形脱毛症の患者は甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE(全身性エリテマトーデス)など自己免疫性疾患を併発している例が多いという報告があります。

遺伝的要因

円形脱毛症診療ガイドラインによると、円形脱毛症の患者の約8.4%に家族内発症があり、親等が近い程発症率は上がるといわれています。

また、順天堂大学と東海大学による円形脱毛症の患者と健常者のゲノム遺伝子を比較する実験の結果、CCHCR1という遺伝子にアミノ酸置換があることがわかってきました。このリスク遺伝子を持っていると、髪の毛のキューティクルに変化が現れ、毛髪の表面が毛羽立ちます。この毛髪の異常が、自己免疫に異物とみなされる要因になっている可能性が高いとされています。

アトピー素因

アトピー素因とは、アレルギー反応を起こすIgE抗体が作られやすく、アレルギーになりやすい体質のことです。円形脱毛症の患者の半数以上が、何らかのアレルギー性疾患を持っていることがわかってきています。円形脱毛症診療ガイドラインによると、特にアレルギー性皮膚炎を持っていると、治療後の経過に大きく関与することが示唆されています。

また、アレルギー素因は遺伝する傾向があります。自己免疫疾患やアトピー素因は、専門機関で血液検査などの検査を受けることでわかります。脱毛以外に自覚症状がない場合でも、一度詳細な検査を受けることをおすすめします。

参考: 公益社団法人 日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」 順天堂大学「世界初、円形脱毛症の原因遺伝子を同定

ストレスは円形脱毛症の直接的な原因にはならない

円形脱毛症は、自己免疫疾患や遺伝的要因などを持つ場合に、疲労・感染症などの肉体的、精神的ストレスが引き金となって発症すると考えられています。そのため、ストレスそのものが直接的な原因になる可能性は低いとされています。

円形脱毛症診療ガイドラインによると、抑うつ状態と円形脱毛症を含む脱毛症の病型には関連性が認められておらず、精神的なストレスを自覚していない円形脱毛症患者も多いという報告もあります。

しかし、過度なストレスは円形脱毛症に限らず心身に様々な悪影響を及ぼすため、なるべくストレスを溜めない生活を心がけるようにしましょう。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

円形脱毛症の再発は防げるか

円形脱毛症診療ガイドラインによると、円形脱毛症は、一旦症状が改善したように見えても、数ヶ月で再び脱毛が始まってしまうケースが報告されています。また、初めて罹患してから5年以内に、約4割の患者に再発の傾向があるとされています。

円形脱毛症を根本から治す治療法はまだ確立されていませんが、これまでの研究により高い効果があることが実証されている治療法はあります。

ガイドラインが推奨している治療法は年齢や病型、脱毛範囲によって異なるため、自分に合った方法を探すことが重要です。

円形脱毛症が治るまでの期間

円形脱毛症による脱毛斑が治癒するまでにかかる期間には個人差があります。単発型で症状が軽度であれば、6ヶ月程度で脱毛斑がほとんど目立たなくなる場合も多いです。

一方、脱毛範囲が広くなる全頭型や汎発型になると、治癒までに数年かかるケースもあります。脱毛範囲が広く、発症から時間が経つ程回復率は下がっていくため、なるべく早く医師の診察を受けるようにしましょう。

円形脱毛症の治癒にかかる期間はあくまでも目安であり、気長に、気楽に考えることが大切です。

円形脱毛症が治る前兆については、「円形脱毛症が治る前兆とは?治りかけの症状を知っておこう」でも詳しく解説しています。

円形脱毛症を繰り返さないためには

円形脱毛症を繰り返さないためには、専門医の診療を受け、原因を特定し、早期に適切な治療を受けることが不可欠です。 また、普段の生活習慣を改善することで症状が軽減されるほか、円形脱毛症の再発防止にもつながります。

次の3つのことを意識して、円形脱毛症を繰り返さない体質を目指しましょう。

バランスの良い食事を摂る

タンパク質やビタミンB群、亜鉛などの栄養素には、髪の毛を作り、ハリやコシを維持する働きがあります。育毛作用のある栄養素を多く含んだ食べ物を積極的に摂ることで、円形脱毛症の再発を抑制させることができます。

円形脱毛症におすすめの食べ物について詳しく知りたい方は、「円形脱毛症におすすめの食べ物は?早く治すために必要な栄養や食べ物を解説」も参考にしてみてください。

質の高い睡眠をとる

心身の不調を癒す効果のあるノンレム睡眠を多くとるために、決まった時間に起床し、朝の光を浴びて体内時計を調整することも大事です。

就寝の3、4時間前にウォーキングなどの軽い運動をすることや、ぬるめのお湯に30分程ゆっくりと浸かる入浴方法も眠りを深くする効果があるため、おすすめします。

ストレスを溜めない

ストレスは円形脱毛症の直接的な原因とは考えられていませんが、ストレスは円形脱毛症を悪化させる可能性があります。ストレスにより自律神経に不調が出ると、頭皮の血流が悪くなり、毛根の栄養が不足します。その結果抜け毛が起こり、円形脱毛症を繰り返す遠因となることも考えられます。

オンとオフを切り換えて好きなことに没頭する時間を作るなど、日頃からストレスを発散させる工夫をしましょう。深呼吸もストレスを軽減させる効果があるため、忙しい方にはおすすめです。

まとめ

円形脱毛症はその原因や病型によって再発を繰り返す可能性の高い病気です。体質や症状に合った治療を早期に始めることで治癒する確率が上がり、回復までの時間も短くなります。 単発型は自然治癒することも多いですが、自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

また、病院での治療と並行しながら、食事や睡眠など、日常生活のちょっとしたことを意識的に変えることで再発防止につながるはずです。無理のない範囲で少しずつ取り組むようにしましょう。