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更新日:2024年02月15日

円形脱毛症を早く治す方法は?初期症状や病型から治療法やセルフケアを解説

この記事のまとめ
  • 円形脱毛症には単発型や多発型などの種類があり、それぞれの特徴により治療法や回復までの期間が異なる
  • 進行を抑えるステロイドパルス療法や脱毛斑を治療するステロイド局所注射など効果の高い治療法がある
  • 爪の凹凸など円形脱毛症の初期症状や原因を知り、早めに専門医の診察を受けることが重要
  • 睡眠や食生活、ストレスの軽減など生活習慣を改善することで治癒を早めることができる
  • 医療用ウィッグなどを活用することで脱毛斑を気にせず生活することも大事

円形脱毛症は脱毛を主な症状とする、見た目に影響を及ぼす病気です。内臓疾患など重篤な症状につながるものではありませんが、発症すると生活の質を低下させ、周りの目を気にするあまり心の負担を大きくする可能性があります。

本記事では、円形脱毛症の原因や病型を解説し、治療法や治癒までの期間、皮膚科での治療法と並行して出来るセルフケアなどについて紹介していきます。

円形脱毛症を早く治す方法は?

円形脱毛症は早期に皮膚科を受診し、治療を開始することで進行や悪化を抑制し、早く治すことが期待できます。円形脱毛症ガイドラインでは、脱毛範囲が広範囲になると治癒までに時間がかかり、回復が困難になる場合もあることが報告されています。回復率は脱毛範囲が広い程下がる傾向にあり、脱毛範囲が頭部全体の25%以下の場合、回復率はおよそ68%、脱毛範囲が50%以下の場合では回復率は32%まで下がります。

できれば初期症状の段階で専門医の診察を受け、脱毛斑が広がる前に治療することが重要です。

参照元:日本皮膚科学会「円形脱毛症ガイドライン2017年版

円形脱毛症の初期症状

円形脱毛症を早く治すためにも、まず初期症状を把握しましょう。該当する症状があれば、迷わずに皮膚科を受診することで、悪化を防ぎ、より早い治癒につながります。

円形脱毛症の代表的な初期症状には、次の2つが挙げられます。

抜け毛の急激な増加

円形脱毛症の抜け毛は、かゆみや痛みといった予兆を感じることなく、突然大量に抜けるという特徴があります。ブラッシング時に髪の毛が途中で切れるようにごそっと抜ける場合は、円形脱毛症を疑いましょう。

爪の凸凹

円形脱毛症の発症を伴う症状として、爪にできる点状の小さな凸凹が挙げられます。これは爪甲点状陥凹(そうこうてんじょうかんぼつ)といい、ストレスなどによる免疫異常が原因で現れる症状です。

円形脱毛症は免疫異常と密接な関連があると考えられているため、爪の変化があればすぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

円形脱毛症の原因

抜け毛や爪の変質といった円形脱毛症の初期症状は、なぜ起きるのでしょうか。それには円形脱毛症を引き起こす原因が大きく関係しています。円形脱毛症の原因は主に以下の3つです。

自己免疫疾患

円形脱毛症は免疫機能に異常が生じ、自分の細胞や組織を異物として攻撃してしまう自己免疫疾患の一種と考えられています。Tリンパ球が毛根を保護する毛包組織を異物として排除することで髪の毛が抜け、結果として脱毛斑が生じてしまいます。

また、甲状腺疾患・尋常性白斑・SLE・関節リウマチなどの関連疾患を合併していると、重症化する可能性が高くなります。

アトピー素因

アトピー素因とは、アトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎の内、どれかひとつ以上を自分自身や家族が持っていることを指します。

円形脱毛症ガイドラインでは円形脱毛症患者の約40%がアトピー素因を持つことが報告されており、アトピー素因の有無が治療後の予後に大きく関連することもわかってきています。

遺伝的要因

円形脱毛症を発症した患者の約8.4%に家族内発症が認められ、親等が近しいほど発症率が上がることがわかっています。アトピー素因も遺伝する可能性が高いため、生来の体質的に円形脱毛症を発症しやすい方がいることが指摘されているのです。

参照元:日本皮膚科学会「円形脱毛症ガイドライン2017年版

ストレスと円形脱毛症の関係

長年、円形脱毛症はストレスが原因で発症すると考えられてきました。結論から言うと、ストレスは円形脱毛症の直接的な原因にはなりません。しかし、円形脱毛症は自己免疫疾患や遺伝的要因が複合的に重なって引き起こされる病気であり、感染症や疲労などの肉体的・精神的ストレスが発症の引き金となる可能性はあります。

また、ストレスは自律神経に異常をもたらし、血流を滞らせてしまいます。その結果、毛根に栄養が行き届かなくなり、抜け毛を引き起こす場合があるため、過度なストレスが円形脱毛症の回復を遅くする可能性も否定できません。

日頃からできるだけストレスを緩和するよう意識することは、健康な体作りのためにも大切です。

円形脱毛症は病型によって治療に時間がかかる場合がある

円形脱毛症には5つの病型があります。病型によって脱毛の広がり方に違いがあり、治癒までにかかる時間や治療法も異なります。 病型ごとに、特徴や治癒にかかる時間について解説します。

単発型

単発型は、コイン大の脱毛斑を1つ認める病型で、軽症例が多いです。初発の場合およそ8割が発症から1年以内に自然治癒しますが、他の病型に移行することもあります。自然治癒を期待して放置せず、医師の診察を受けることが大切です。

多発型

多発型は、コイン大の脱毛斑が2つ以上認められる病型です。単発型から移行するケースもあります。 複数の脱毛斑がまとまって発生することにより、脱毛範囲が広がることが懸念される病型です。

また、脱毛斑がたくさんできることで全頭型に移行する場合もあります。再発を繰り返しやすく、慢性化する可能性が高いため、注意が必要です。

円形脱毛症の多発型については、「円形脱毛症の多発型は完治できる?原因と治療法を詳しく解説」でも詳しく解説しています。

全頭型

脱毛の範囲が頭部全体に及ぶものを全頭型といいます。数週間から1〜2ヶ月までの間にかなりの量の髪の毛が抜けるため、本人や家族が驚いてしまうことがあります。単発型や多発型よりアトピー性皮膚炎の合併率が高く、回復までに長い期間を要することが特徴です。

蛇行型

蛇行型は、頭髪の生え際が帯状に脱毛する症状があります。後頭部から側頭部にかけて、片側だけでなく両側に発症することが多くあります。アトピー性皮膚炎の合併率が最も高く、難治性の症状です。

汎発型

汎発型は、髪の毛だけではなく、眉毛やまつ毛など全身の体毛まで抜け落ちる病型です。全頭型と同じく、発症すると数週間から1〜2ヶ月までの間に大量に脱毛します。蛇行型に次いでアトピー性皮膚炎の合併率が高い傾向にあり、難治性です。

円形脱毛症の治癒までの期間

単発型であれば、一般的に3〜4ヶ月で徐々に髪の毛が生え、自然治癒する場合もあります。しかし、発症から半年以上経過している場合や、脱毛範囲が広がっている場合、治療に長い時間がかかり回復が困難になるケースもあるため、放置は禁物です。

円形脱毛症の治療法

円形脱毛症の治療には、円形脱毛症ガイドラインで推奨されている効果の高い方法がいくつかあります。体質や年齢、病型によって受けられる治療法が異なるため、推奨度の高い治療法を解説します。

ステロイド局所注射

免疫反応を抑えるステロイドを脱毛斑に注射する治療法です。効果を実感しやすく、ガイドラインの推奨度も高い方法で、治療には健康保険が適用されます。 注射した部位にのみ発毛するため、全頭型や汎発型など範囲が広い場合にはほかの治療法との併用が望ましいです。

局所免疫療法

スクアレン酸ジブチルエステルなどの薬品で人工的にかぶれを起こし、免疫反応を抑制することで発毛を促す治療法です。症状を問わずに行えるため、円形脱毛症のさまざまな病型に対応可能です。ステロイド局所注射同様、局所免疫療法には健康保険が適用されます。

ステロイド外用療法

ステロイド外用療法では、注射ではなく、ステロイドを直接脱毛斑に塗布します。治療方法が簡易であり、保険治療に該当します。

副作用として、ニキビや毛包炎が発症することがあり、長期的に使用することにより皮膚の萎縮や血管拡張、陥凹をきたすこともあります。そのため、漫然と長期的にステロイド外用療法を行うことは推奨されていません。

ステロイド内服療法

薬を服用することで発毛を促す治療法です。発症後6ヶ月以内であることや、症状が急速に進行していることなど適用には条件があります。こちらも保険適用です。

高い効果のある治療法ですが、治療を止めた後の再発率が高いことや、肥満やムーンフェイスなどの副作用が起きる可能性があるため、服用の際は注意が必要です。

紫外線療法

紫外線を照射することで免疫反応を抑制する治療法です。紫外線両方も、保険適用の治療法です。照射する紫外線の長さによって複数の種類があり、病型を選ばない治療法となります。

冷却療法

ドライアイスや液体窒素で脱毛部位を冷却し、免疫反応を抑制する治療法です。自由診療となりますが、臨床試験では353症例中約6割に発毛効果が認められています。

ただし、広範囲の脱毛には効果が低いとされているため、症状によっては治療を受けられない場合もあります。

ステロイドのパルス療法

円形脱毛症には脱毛が進行する進行期と、脱毛が収まり脱毛斑が目立つ病状固定期があります。進行期には髪の毛を引っ張ると10回で50本以上切れるように抜けますが、病状固定期には抜けません。

脱毛が進行しており、脱毛範囲が全体の4分1以上に及ぶ場合、内服の10〜20倍のステロイドを3日間点滴し続けるパルス療法を行う場合があります。入院が必要となり、ムーンフェイスや糖尿病など重篤な副作用が出る可能性もあるため、治療中は全身の状態のチェックが欠かせません。

全頭型や汎発型で3ヶ月以上症状が続いている場合、パルス療法を行っても中止すると再び脱毛してしまう可能性が高いため、パルス療法は行ってはいけないとされています。

参照元:日本皮膚科学会「円形脱毛症ガイドライン

円形脱毛症の治療法については、「円形脱毛症の治療方法とは?原因やセルフケアについて解説」でも詳しく解説しています。

円形脱毛症の治療に市販薬は有効か

薬局やドラッグストアで気軽に購入できる薬で円形脱毛症に効果があるものがあれば、まずは使ってみたいと思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、残念ながら市販薬で円形脱毛症に特化した薬はほとんどありません。抜け毛や薄毛の予防に効果のある市販薬は多いですが、それらが円形脱毛症にも効果があるとは限らないからです。円形脱毛症にはさまざまな原因や病型があり、症状も人それぞれです。

市販薬で自分に合った薬を見つけることは難しいうえに、自己判断で薬を使うことは症状を悪化させる危険を伴います。市販薬を検討する前に、医師の診察を受けることをおすすめします。

円形脱毛症が治る前兆とは

円形脱毛症の治療を始めて回復期に入ると現れる兆候にはどのようなものがあるのでしょうか。副作用ではないかと不安になってしまわないように、回復期の兆候について把握しておきましょう。

回復期に現れる兆候は以下の3つです。

かゆみを感じる

円形脱毛症の回復期には、脱毛部位にかゆみを感じる場合があります。これは成長した髪の毛が頭皮に触れることが原因と考えられているため、一時的なものであれば心配しなくて大丈夫です。

ただし、かゆみが長く続いたり、赤みやフケが出る場合は速やかに医師に相談してください。

産毛が生えてくる

円形脱毛症が改善してくると、まず細くて柔らかい毛が生えてきます。目視で確認し難い場合もありますが、触れると産毛が生えてきたことを実感できるでしょう。

髪の毛は一般的に一ヶ月で1センチ伸びると言われているので、早い場合は産毛が生えてから約半年で脱毛斑が目立たなくなります。

白髪が生えてくる

円形脱毛症の回復期に白髪が生えてくることがあります。これはまず髪の毛を作る毛母細胞が回復し、その後に色素を作るメラノサイト細胞が回復するという毛髪の回復サイクルのためなので、心配する必要はありません。

白髪が生えたからと不安を覚えて治療を中断することがないように注意しましょう。

円形脱毛症後の白髪について詳しく知りたい方は、「円形脱毛症後に白髪が生えるのはなぜ?原因と白髪を改善する方法を解説」も参考にしてみてください。

円形脱毛症に効果的なセルフケア方法

円形脱毛症の治療と並行しながら、生活習慣を改善することで進行を防ぎ、結果的に早く治すことにもつながります。日常の中でできる改善方法を、睡眠、食事、ストレスに焦点を当てて紹介していきます。

良質な睡眠をとる

睡眠には体と心の回復を促す作用があります。眠りにつく2〜3時間前に軽いランニングなどの運動をすると眠りが深くなり、回復作用が高まります。 また、入浴にも運動と同等の効果が期待されるため、38度のぬるま湯に30分、または42度のお湯に5分程つかることも推奨されています。

体内時計は24時間よりも長い周期のため、朝太陽の光を浴びることでリセットすることも必要です。

食生活を改善する

髪や頭皮を作るのに必要な栄養素である「タンパク質」「亜鉛」「ビタミンB群」を多く含む赤みの肉や大豆製品を意識することが大事です。ビタミンB群を阻害する甘いものや血流を悪くするコレステロールを増やす揚げ物を控え、バランスの良い食事を心がけましょう。

ただし、食生活の改善を意識し過ぎて過度な食事制限を行うことはストレスとなり、かえって体に良くありません。無理のない程度に取り入れていくことが大切です。

ストレスを緩和する

ストレスは自律神経に作用し、血管を収縮させ、毛髪に栄養を行き届かなくするだけでなく、自己免疫疾患や内分泌異常などのさまざまな疾患を誘引します。好きなことに没頭したり、何も考えずにリラックスできる時間を意識的に設け、ストレスを緩和するように努めることが大事です。

リラックスのためにできることの1つとして、瞑想をおすすめします。部屋の照明を落として目を閉じ、心を無にすることに専念してください。数分間の瞑想は、イライラを緩和し、心を落ち着かせる効果的な方法として知られています。

瞑想が難しい場合は、1分間ゆっくりと深呼吸をすると良いでしょう。ストレスのために浅くなった呼吸を意識的に深くすることで心身をリラックスさせる効果があります。

瞑想のほかには、自分の気持ちや感情を誰かに話すことでも、ストレスを緩和させる効果があります。悩みや不安をひとりで抱え込まず、思い切って人に打ち明けることも大切です。

円形脱毛症の隠し方

円形脱毛症は、発症すると人の目を意識してネガティブな気持ちになってしまうことも多い病気です。脱毛斑を目立たなくすることで心配や不安を改善し、心の負荷を軽くすることも必要でしょう。

ここでは、脱毛斑の上手な隠し方を紹介します。

ヘアスタイルを変える

脱毛斑が小さく単発である場合は、髪型を変えることで目立たなくすることができます。自分でアレンジすることが難しい場合、美容院で相談してみると良いでしょう。個室のある美容院や脱毛に特化した美容院であれば周りを気にせず相談できます。

ウィッグを活用する

自身の髪の毛で隠すことが難しい場合、ウィッグを活用することもおすすめです。特に医療用ウィッグは軽くて着け心地も良いものが多く用意されています。脱毛斑に直接貼り付けるタイプのものもあるので、試してみてください。

まとめ

円形脱毛症は早期の治療で回復率が上がるため、初期症状や原因を知り、なるべく早く医療機関を受診して治療を始めることが重要です。

また、治療を行いながら日々の生活スタイルを見直すことで体質が改善され、円形脱毛症の進行防止にもつながります。負担にならない範囲でストレスの少ない規則正しい毎日を心がけましょう。

見た目に悩んでいる場合、ヘアスタイルのアレンジや医療ウィッグを取り入れて不安を解消することをおすすめします。治らないと諦めずにできることから始めていくことが大切です。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会