レバクリ

更新日:2024年03月13日

高血圧はEDを合併する可能性が高い?薬物療法や生活習慣についても解説

この記事のまとめ
  • 高血圧とEDは関連性があり、年齢が高いほど高血圧によるEDを発症しやすい
  • 高血圧の治療には薬物療法が主であり、複数の降圧剤を内服することもある
  • 高血圧の薬物療法により、勃起の発現が少なくなることがある
  • 高血圧の治療を受けていない場合、ED治療薬の内服ができない
  • 高血圧を改善させるには、薬物療法と併せて生活習慣の見直しも重要である

高血圧と診断されてから、勃起する回数が減ったと実感している方もいるのではないでしょうか。高血圧で勃起が発現しない場合は、EDを発症している可能性があります。

本記事では、高血圧とEDの関係性や高血圧の治療方法について解説します。また、高血圧の方がED治療薬を服用する際の注意点や、高血圧を改善する生活習慣についても紹介するので、高血圧によるEDに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

高血圧とEDの関係性

高血圧とEDには深い関係があります。ED診療ガイドラインによると、ある集団のED罹患率が9.6%であったのに対して、高血圧治療を受けている方では15%が完全EDを発症していたと報告されています。また、ED患者のうち41.2%が高血圧を合併していたとの研究報告もあります。

高血圧によるEDは、器質性EDと呼ばれています。器質性EDとは、血管や神経が傷害されて起こるEDです。勃起は、陰茎に血流が流れることで起こるのですが、高血圧を発症すると、血管内皮障害を起こし血液の流れが悪くなります。血液の流れが悪くなった結果、勃起が発現できなかったり、勃起を維持できなったりするのです。

厚生労働省によると、2017年の男性の高血圧患者数は約431万人です。平均すると20歳以上の約10人に1人が高血圧を発症していることになります。高血圧をそのままにしておくとEDの発症リスクが高くなることはもちろん、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる疾患を発症するリスクもあります。

器質性EDについて詳しく知りたい方は、「器質性EDは改善できる?原因や治療方法、セルフケアについて解説」も参考にしてみてください。

参考: 日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]」 厚生労働省「平成29年 患者調査の概況

高血圧とは

高血圧は、家庭で測った血圧で135/85mmHg以上、診察室で測った血圧では140/90mmHg以上の状態を指します。高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧があり、日本内分泌学会によると、高血圧患者の9割が本態性高血圧とされています。

ここでは、本態性高血圧と二次性高血圧について解説します。

参考:日本内分泌学会「二次性高血圧症(腎血管性高血圧を含む)

本態性高血圧

本態性高血圧とは、はっきりとした原因がわからない高血圧のことで、40歳以上の方に多いとされています。高血圧を発症している方の約9割が当てはまります。

考えられる原因には下記のものがあります。

  • 遺伝
  • 塩分摂取量
  • 肥満
  • 飲酒
  • 精神的なストレス
  • 自律神経系の異常
  • 重度の肉体労働
  • タンパク質や脂質の不適切な摂取
  • 喫煙

本態性高血圧の方は、はっきりとした原因がわからないため、生活習慣の見直しが重要です。生活習慣の見直しと薬物療法により、血圧を正常な値に改善させることができるでしょう。

二次性高血圧

二次性高血圧は、血圧が上昇する原因となる疾患を発症し、高血圧になるものを指します。20代で高血圧を発症した場合や、50歳以降に高血圧を発症した場合には、二次性高血圧が疑われます。高血圧の約1割の方が二次性高血圧です。

二次性高血圧の原因は、主に腎臓や内分泌系、血管の疾患に関するものが多く、下記のものがあります。

  • 腎臓病
  • 褐色細胞腫
  • 原発性アルドステロン症
  • 大動脈狭窄症
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 非ステロイド性抗炎症薬や漢方薬などの薬剤

二次性高血圧の治療では、原因となる疾患を治療しながら、血圧上昇の原因となる塩分を制限したり、禁煙を行ったりと、日常生活の見直しを並行して行います。また、腎臓病や大動脈狭窄の場合は、血管を拡張する手術を行うケースもあります。

高血圧の治療方法

高血圧の治療方法は、主に薬物療法です。第一選択として利用される降圧剤の例として、下記の3つが挙げられます。

  • 利尿薬
  • カルシウム拮抗薬
  • アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬

ここでは上記3つの薬剤に加えて、併用される機会の多いβ遮断薬と中枢性交感神経抑制薬についても解説します。

利尿薬

利尿薬は、腎臓で作られた原尿を再吸収する尿細管や集合管に作用します。主な作用は下記のとおりです。

  • ナトリウムの再吸収抑制
  • カリウムの再吸収抑制
  • 水の再吸収抑制

水分やナトリウムは過剰に摂取すると血圧を上昇させる効果があり、高血圧を引き起こします。水やナトリウムの再吸収を抑制する効果により、体内の水やナトリウムを尿として排泄することができ、降圧作用が期待できるのです。

しかし利尿薬は、勃起機能への悪影響を及ぼす可能性があると報告されています。利尿薬を使用すると亜鉛が過剰に排泄される恐れがあるためです。亜鉛が不足するとテストステロンが減少し、男性の性機能が低下するとされています。

参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]

カルシウム拮抗薬

カルシウム拮抗薬の作用は、下記の3つです。

  • 冠動脈および末梢血管の拡張作用
  • 心収縮力の抑制
  • 刺激伝導の抑制

カルシウム拮抗薬を内服すると、血管拡張作用により長時間の降圧作用が期待できるため、高血圧治療に高い頻度で利用されています。

ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬を内服すると、降圧作用に加えて、動脈硬化の進行を抑制する効果もあると報告されています。 利尿薬同様、カルシウム拮抗薬も勃起機能への悪影響を及ぼす可能性があると報告されています。

参考: 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」 日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、血圧を上昇させる作用のあるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系のアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害する薬剤です。

ACE阻害薬の作用には下記のものがあります。

  • 血管収縮抑制
  • 体液貯留抑制
  • 交感神経活性の抑制

血管の収縮や体液の増加を抑制することで、血圧を下げる効果が期待できるのです。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は勃起機能への影響が少ないと報告されています。ただし、少ないながらも勃起への影響があることを理解しておきましょう。

参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]

β遮断薬

β遮断薬の作用は下記のとおりです。

  • 心拍数減少
  • 心収縮力の抑制による心拍出量の低下
  • 腎臓でのレニン産生の抑制
  • 交感神経抑制作用

心拍出量が減少すると、血液の循環量が減少するため、少ない圧力で全身の血液を循環させることが可能になります。また、レニンという酵素には血圧を上昇させる作用があり、β遮断薬によってレニン産生を抑制できることも、降圧作用に効果を発揮します。

β遮断薬は、高血圧治療の第一選択薬ではありませんが、第一選択薬で薬物療法を開始しても血圧コントロールがうまくいかない場合に使用されます。

また、β遮断薬は、勃起機能への悪影響があると報告されており、EDを引き起こす可能性があります。

参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]

中枢性交感神経抑制薬

中枢性交感神経抑制薬の作用は下記のものがあります。

  • 交感神経活動の抑制
  • 心拍出量の抑制
  • 血管抵抗の抑制

交感神経活動が抑制されると、血管の収縮や心拍数が減少し、降圧作用が期待できます。中枢性交感神経抑制は、単剤で使用すると水やナトリウムが体内に溜まってしまう副作用があるため、利尿薬と併用することが多い薬剤です。第一選択薬ではないため、基本的に単剤で使用する機会は少ないでしょう。

中枢性交感神経抑制薬は、副作用によりEDを引き起こす可能性があると報告されています。

参考:WILEY「Factors Affecting the Increased Prevalence of Erectile Dysfunction in Greek Hypertensive Compared With Normotensive Subjects

高血圧の方がED治療薬を服用する際の注意点

高血圧によってEDを発症している場合、ED治療薬を服用することでEDの治療を行うことができます。ただし、高血圧の方がED治療薬を服用する際は下記3つの注意点があります。

  • 高血圧治療薬とED治療薬を併用するには、医師の確認が必要である
  • 降圧剤の治療を受けていない方はED治療薬の服用ができない
  • 個人で輸入しない

1つずつ解説します。

高血圧治療薬とED治療薬を併用するには、医師の確認が必要である

高血圧治療薬とED治療薬を併用する場合は、医師に確認が必要です。併用した場合に想定以上の降圧作用を発揮する可能性があるからです。

高血圧治療薬の多くには血管拡張作用があります。ED治療薬であるバイアグラの副作用にも血管拡張作用があり、併用した場合に想定以上の効果を発揮して、急激な血圧低下を起こすリスクがあるのです。

高血圧の程度や内服している治療薬によっては、ED治療薬を内服できない可能性もあります。

ただし、薬物療法により血圧がコントロールできていると低リスク群に分類され、ED治療薬の内服が可能です。高血圧治療薬を服用していても血圧コントロールができていない場合、高リスク群に分類されるため、ED治療薬を内服できません。

そのため自己判断でED治療薬を内服することはせず、必ず医師に相談しましょう。

ED治療薬については、「ED治療薬の特徴は?3種類の薬の勃起力や即効性、持続時間・副作用を解説」でも詳しく解説しています。

降圧剤の治療を受けていない方はED治療薬の服用ができない

高血圧の治療を受けていない方はED治療薬の服用ができません。高血圧の状態でED治療薬を内服すると、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患を引き起こす危険性があるためです。

薬剤の説明書によると、ED治療薬であるバイアグラバルデナフィルは、安静時の収縮期血圧が170mmHgより高い、または拡張期血圧が100mmHgより高い方には禁忌とされています。シアリスは、安静時血圧が170/100mmHgより高い方には禁忌とされています。

高血圧が疑われておりかつ未治療の場合は、まず病院を受診し高血圧を治療することから始めましょう。

参考: 医療品医療機器総合機構「バイアグラ錠25mg/バイアグラ錠50mg/バイアグラODフィルム25mg/バイアグラODフィルム50mg」「シアリス錠5mg/シアリス錠10mg/シアリス錠20mg」 KEGG「医療用医薬品 : バルデナフィル

個人で輸入しない

ED治療薬を個人で輸入するのはおすすめできません。個人輸入によるED治療薬は偽薬が多く出回っており、偽薬を内服すると命の危険性があるのはもちろん、ED治療薬の効果が十分に得られない可能性もあります。

ED診療ガイドラインによると、PDE5阻害薬(ED治療薬)を個人で輸入して内服した結果、血糖を下げる効果のある薬が含まれており、低血糖発作を起こした例があると報告されています。

個人輸入は思わぬトラブルを起こす可能性があるため、必ずクリニックを受診して処方してもらいましょう。

バイアグラの個人輸入については、「バイアグラの個人輸入や輸入代行は違法?安全に入手する方法を詳しく解説」を参照してください。

参考:日本性機能学会/日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン[第3版]

高血圧を予防する生活習慣

軽度の高血圧であれば、生活習慣を見直すことで高血圧を改善させることができます。高血圧を予防する生活習慣は、下記の4つです。

  • 塩分を控える
  • 適切な運動をする
  • 飲酒を控える
  • 禁煙する

それぞれ解説します。

塩分を控える

塩分を控えることは、高血圧予防に重要です。厚生労働省によると、日本人の男性食塩摂取量は10.9gと、日本高血圧学会による目標値の6gより多くなっています。日本食は味噌汁や漬物といった塩分の高い食事が多いことに加えて、加工食品からの塩分摂取量も高いためと考えられます。

塩分を控えるためには薄味のものを食べる必要があります。薄味の食事を食べる場合は、レモンやわさび、ゆずや山椒などの調味料を使用すると、塩分が少なくても満足感を得られるでしょう。日常で購入する食品の栄養成分表示を確認し、ナトリウムや食塩の含有量が低いものを選ぶ意識改善も大切です。

参考: 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」 日本高血圧学会「学会活動等

適切な運動をする

適切な運動は、肥満や動脈硬化の予防に期待できます。

厚生労働省によると、20歳以上の日本人男性の肥満割合は33.0%と、約3人に1人が肥満となっています。年齢別に見ると、40歳~50歳代の方は約40%と肥満の割合が高くなっています。運動習慣のある男性は33.4%と、3人に1人です。しかし、40歳~50歳代の方は約20%と、5人に1人しか運動習慣のある方がいません。

20~30歳代から40~50歳代に入ってくると、運動や食事の点以外でも動脈硬化なども進行しうるため、高血圧になりやすいともいえます。

高血圧治療ガイドラインによると、運動をすることで、収縮期血圧が2~5mmHg、拡張期血圧が1~4mmHg低下が期待できると報告されています。運動は、高血圧に加え、体重や体脂肪の減少、2型糖尿病やメンタルヘルス不調の予防などにも効果を期待できます。また、肥満はテストステロンの低下をもたらし性機能に悪影響を与えるため、肥満が予防できるとEDの予防にもつながります。

高血圧の方が運動する場合、激しい運動をすると逆に負担となり悪影響があるため、ジョギングやランニング、踏み台昇降などの軽い運動を30分程度続けるように取り組むと良いでしょう、

参考: 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019

飲酒を控える

過度な飲酒は血圧を上昇させるため、高血圧を起こす可能性があります。高血圧の状態で多量に飲酒した場合、脳卒中やアルコール性の心疾患を発症するリスクもあります。

アルコールを多量に飲酒する習慣を続けるとアルコール依存症となる可能性があり、アルコール依存症はEDの原因になる点にも注意が必要です。アルコールを摂取する際は、1日で日本酒1合程度の量を目安にしましょう。

禁煙する

喫煙すると、ニコチンにより血管の収縮や交感神経が活発になり、血圧が上昇します。喫煙は高血圧だけでなく、肺に悪影響を及ぼし呼吸困難になるなどのリスクも抱えているのです。

禁煙に取り組むことで高血圧以外の疾患も予防できます。禁煙が難しいと感じる方は、禁煙外来の受診も検討しましょう。

まとめ

高血圧によるEDは、血管内皮障害が起こり血流が低下し、勃起の発現ができなくなる器質性EDです。高血圧を発症しているとEDも発症しているケースが多く、高血圧とEDは深い関係があります。

高血圧を発症した場合は、薬物療法で治療を始めましょう。薬物療法で高血圧のコントロールがうまくいくと、ED治療薬の内服が可能となり、勃起の発現に期待できます。

高血圧はそのままにしておくと、重篤な疾患を発症するリスクがあります。高血圧と診断されたら治療を開始し、合わせて高血圧を予防する生活習慣を取り入れてEDの改善に取り組みましょう。

レバクリでは、ED治療薬のオンライン処方を行っています。場所や時間にとらわれずにビデオチャットや電話で診察が受けられ、処方された薬は自宅など好きな場所に届きます。 診察は無料なので、ぜひご予約ください。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会