更新日:2024年01月31日
アボルブはAGA治療にも使用できる?効果や副作用、注意点について解説
- アボルブは、前立腺肥大症の患者が使用する治療薬
- アボルブの有効成分はAGA治療薬のザガーロと同じだが、基本的にAGA治療には使用されない
- アボルブの副作用は、リビドー減退や勃起不全、乳房障害など
- アボルブは重度の肝機能障害がある人は服用できない
アボルブは、前立腺肥大症の治療のために用いられる薬です。
AGA治療薬の一種であるザガーロと同じ主成分(デュタステリド)が含まれていることから、薄毛治療に効果があると言われていますが、AGA治療を目的としてアボルブが処方されることは原則としてありません。
この記事では、アボルブの効果や副作用、ザガーロとの違いについて説明します。
アボルブとは
アボルブ(販売名:アボルブカプセル)は、グラクソ・スミスクライン社が販売している前立腺肥大症の治療薬です。
アボルブの有効成分はデュタステリドで、AGA治療薬の一つであるザガーロと同じですが、それぞれ治療対象となる疾患が異なります。
アボルブの効果
アボルブには5αリダクターゼという還元酵素のⅠ型とⅡ型を阻害する働きがあります。
そもそも前立腺肥大症は、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンの増加が発症の原因の一つとして考えられています。ジヒドロテストステロンは、5αリダクターゼと男性ホルモンの一種であるテストステロンが結合することで生成されます。アボルブで5αリダクターゼを阻害することで、ジヒドロテストステロンの生成を抑制し、前立腺の肥大を抑えます。
前立腺肥大症を発症すると、頻尿になったり残尿感の症状が出たりしますが、アボルブを服用することで症状の改善を図れます。
アボルブの副作用
アボルブを服用した際に起こりうる副作用として下記の例が挙げられます。
- リビドー減退・勃起不全
- 倦怠感・腹部不快感
- 肝機能障害
- 脱毛症
- 乳房障害
- 抑うつ気分
それぞれについて解説します。
リビドー減退・勃起不全
アボルブを服用することで、リビドー(性欲)減退や勃起不全といった副作用が出る場合があります。
リビドー減退とは、性欲が減って性交渉に消極的になることです。勃起不全は、性的興奮を覚えても勃起せず、性交渉が難しくなる状態を指します。
リビドー(性欲)減退や勃起不全が起こるのは、アボルブが男性ホルモンのジヒドロテストステロンを抑制する作用があるためです。副作用の発症頻度は、リビドー減退と勃起不全のどちらも1%以上とされています。
倦怠感・腹部不快感
アボルブを服用すると、倦怠感や腹部不快感を覚える場合があります。
倦怠感と腹部不快感のどちらも起こる確率は1%未満とされていますが、万が一これらの副作用が出た際は、速やかに医師に相談しましょう。
肝機能障害
アボルブに限らず、薬は肝臓で代謝されることから、副作用として肝機能障害が起こる場合があります。副作用の発症頻度は1.5%とされており過度に心配する必要はありませんが、全身の倦怠感や食欲低下、吐き気などの症状が表れた際は、医師に相談しましょう。
脱毛症
頻度は不明とされていますが、アボルブを服用すると脱毛症が起こる場合があります。個人差はありますが、脱毛症の副作用は症状が出始めてから1ヶ月ほど続くとされています。
乳房障害
アボルブの発症頻度1%以上の副作用に、乳房障害があります。乳房障害の症状は、乳頭痛、乳房痛、乳房の不快感などです。
抑うつ気分
頻度は不明とされていますが、アボルブの服用により、抑うつ気分の副作用が起こる場合もあります。
アボルブの服用開始前と比べて気分が落ち込んだりやる気が失せたりしている場合は、医師に相談しましょう。
参考:KEGG「医療用医薬品 : アボルブ (アボルブカプセル0.5mg)」
アボルブを服用する際の注意点
アボルブの服用を検討している方に向けて、注意点を解説します。
AGAの治療には原則として使用しない
アボルブは前立腺肥大症の治療に使う薬で、原則としてAGAの治療には使用しません。
有効成分が同じという理由から、AGA治療を検討している方の中には、ザガーロではなくアボルブを服用したいと考える方もいるかもしれません。しかし、アボルブは国からAGA治療薬としての認可を受けておらず、AGAへの有効性・安全性は明らかになっていません。また、アボルブをAGA治療のために服用して重大な副作用が出たとしても、使用目的が適正ではないため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となり、全額自己負担で副作用の治療を行うことになります。
AGA治療薬について詳しく知りたい方は、「AGA治療薬の種類と効果、副作用とは?」も参考にしてみてください。
女性と小児は服用できない
アボルブの添付文書によると、女性や小児への投与は禁忌とされています。
仮に男児を妊娠中の女性がアボルブを服用した場合、ジヒドロテストステロンが抑制されることで、男児の生殖器の形成に悪影響を与えるおそれがあります。また、小児に対するデュタステリドの安全性は明らかになっていないため、服用は禁止されています。
なお、アボルブを割ったり粉砕したりするのは避け、女性や小児の手の届く場所に置かないようにしましょう。アボルブの有効成分であるデュタステリドは経皮吸収される性質があり、破損・粉砕しているアボルブを女性や小児が触ると、成分が体内に吸収されるおそれがあります。
参考:KEGG「医療用医薬品 : アボルブ (アボルブカプセル0.5mg)」
重度の肝機能障害がある人は服用できない
アボルブは肝臓で代謝される薬のため、肝機能が低下している方が服用すると薬の代謝に時間がかかり、薬の血中濃度が高くなって強く効きすぎたり副作用のリスクが高まったりするおそれがあります。そのため、重度の肝機能障害のある方は服用が禁忌とされています。
重度の肝機能障害を患っていなくても、肝臓の既往歴がある方は医師に申告し、必要に応じて検査を受けてアボルブを服用できるか医師に判断してもらいましょう。
前立腺がんのPSA値に影響を与える
アボルブの服用により、前立腺がんの指標としてチェックされるPSA値が低くなるとされています。
アボルブを服用していることをPSA検査の前に医師に伝えておかないと、前立腺がんを見落とすことにつながるため注意が必要です。
併用注意薬がある
アボルブの添付文書によると、CYP3A4という酵素を阻害するリトナビルやクラリスロマイシンといった薬は併用注意とされています。CYP3A4は薬を代謝する酵素で、働きが阻害されると薬の血中濃度が高くなり、薬が効きすぎたり副作用が出たりするおそれがあるからです。
服用中の薬がある方は、必ず医師に伝えましょう。
参考:KEGG「医療用医薬品 : アボルブ (アボルブカプセル0.5mg)」
アボルブとザガーロとの比較
有効成分が同じアボルブとザガーロについて、共通点と相違点をご紹介します。
アボルブとザガーロの共通点
アボルブとザガーロの共通点は、有効成分がデュタステリドという点です。 また、5αリダクターゼの阻害によってジヒドロテストステロンの生成を抑制するという作用も共通しています。
アボルブとザガーロの違い
アボルブとザガーロの違いは、治療対象となる疾患です。アボルブは前立腺肥大症に、ザガーロは男性型脱毛症(AGA)の治療に使用されます。 また、用量にも違いがあり、アボルブは1錠0.5mgで、ザガーロは0.5mgと0.1mgの2種類があります。
ザガーロについては、「ザガーロ(デュタステリド)の効果と副作用を解説」を参照してください。
まとめ
アボルブについて、効果や副作用、注意点、ザガーロとの違いについて解説しました。アボルブは前立腺肥大症の患者が服用する薬で、基本的にAGAの治療には使用されません。AGA治療を検討している方は、皮膚科やAGA専門のクリニックで受診し、AGAの進行度や頭皮環境に合わせた治療薬を処方してもらいましょう。
レバクリでは、AGAのオンライン診療サービスを提供しています。オンライン診療であれば通院の手間や交通費などをかけずに医師に相談することが可能です。 診察は無料なので、ぜひ一度ご予約ください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会