更新日:2024年02月15日
ジヒドロテストステロンとは?AGAとの関係性や抑制する方法を解説
- ジヒドロテストステロンはAGAの発症原因になる
- AGAの発症は、ジヒドロテストステロン量よりも5αリダクターゼの活性度が関与する
- ジヒドロテストステロンは食事や禁煙で減らせる
- ジヒドロテストステロンはクリニックの治療で減らせる
抜け毛や薄毛を引き起こすAGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が大きく関わっています。この記事では、ジヒドロテストステロンとAGAの関係性や、今日からできるジヒドロテストステロンを減らす方法も紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
ジヒドロテストステロンとは
ジヒドロテストステロンとは、男性ホルモンの1種で、テストステロンと5αリダクターゼが結合することで生成されます。ジヒドロテストステロンは年齢によって作用する役割が異なり、各成長段階における役割は以下のとおりです。
- 胎児期:男性生殖器の形成
- 思春期:体毛・筋肉量の増加、ニキビ・声変わりの発現、精子の生成
- 成人期:AGAの発症、前立腺肥大
このように、ジヒドロテストステロンは男性の身体の成長において欠かせないホルモンです。
特に、胎児期や思春期の男性の発育に必要不可欠で、胎児期では男性器の形成、思春期においては体毛や筋肉量の増加、声変わりの発現に関与しています。男性らしい身体づくりを支えているという点では、なくてはならないホルモンであると言えます。
また、成人期においても、筋肉量や血液量の維持に関与しているため、活き活きとした生活を送るうえで重要な男性ホルモンです。 一方で、AGAや前立腺肥大、ニキビ、体毛の増加にも関わるなど、好ましくない効果も発生します。
ジヒドロテストステロンとAGA(抜け毛・薄毛)の関係性
ここでは、ジヒドロテストステロンがAGAの発症にどのように関わるか、AGAのメカニズムや発症の原因について詳しく解説します。 AGAが発症するメカニズムは以下のとおりです。
- 男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素と結合し、ジヒドロテストステロンに変換される
- ジヒドロテストステロンが頭頂部や生え際付近のアンドロゲンレセプター(受容体)に結合し、脱毛因子であるFGF-5などを生成する
- FGF-5をはじめとする脱毛因子は、毛髪の成長期を短縮させるため、毛髪が十分に育たず抜け毛・薄毛を引き起こす
ジヒドロテストステロンの働きにより、正常なヘアサイクルが乱され、毛髪の成長を阻害することが、AGAが発症する主な要因となっています。
ジヒドロテストステロンとAGAの関係性については、「AGAには男性ホルモンが関係している?AGAの原因と治療法を解説」でも詳しく解説しています。
ジヒドロテストステロンが増える原因
テストステロンの数値自体に個人差はあまりありませんが、ジヒドロテストステロンが増える原因に大きく関わるのが、5αリダクターゼの活性度です。遺伝により5αリダクターゼの活性度が高い人は、ジヒドロテストステロンが増えやすいことが証明されています。
また、筋トレによってジヒドロテストステロンが増加するという話を聞いたことがあるかもしれませんが、それには医学的な根拠はありません。筋トレによって増加が認められているのはテストステロンで、テストステロンが増えるだけではAGAは発症しません。
5αリダクターゼついて詳しく知りたい方は、「5αリダクターゼとは?AGAとの関わりや抑制する方法について解説」も参考にしてみてください。
ジヒドロテストステロンが多い人の特徴
ジヒドロテストステロンの増加は、血中ではなく毛髪に現れます。ジヒドロテストステロンが多いかどうかは、実際にジヒドロテストステロン量を測る検査を行わなければ分かりませんが、次の方はジヒドロテストステロンが多い可能性があります。
- 生え際や頭頂部の薄毛がすでに進行している
- 家族親族に薄毛やAGA発症者がいる
ジヒドロテストステロンの検査はAGAクリニックなどで行えますので、気になる方は受診してみましょう。
ジヒドロテストステロンを減らす・抑制する方法
ここからは、ジヒドロテストステロンを減らしたり抑制する方法を解説します。
食生活を見直す
食べ物や飲み物の中には、5αリダクターゼの活性を抑える働きが期待できるものがあります。5αリダクターゼの活性を抑える栄養素と、それが多く含まれる食品は下記のとおりです。
- 亜鉛:生牡蠣、豚レバー、牛肉、卵、ナッツ類
- ビタミンB6:まぐろ、鰹、牛レバー、鶏ささみ、バナナ、玄米
- イソフラボン:納豆、豆乳、豆腐、油揚などの大豆食品
- カテキン:緑茶、烏龍茶などの茶類
このうち、イソフラボンには5αリダクターゼの活性を抑えるだけでなく、女性ホルモンに似た働きもあり、毛髪にハリとツヤを与える効果も期待できます。また、カテキンにおいては、最近の研究で、大豆食品と同時摂取するとジヒドロテストステロンの抑制に効果があることも分かっています。
参照元:Oxford Academic「Soy Phytochemicals and Tea Bioactive Components Synergistically Inhibit Androgen-Sensitive Human Prostate Tumors in Mice」
禁煙をする
喫煙すると、体内のジヒドロテストステロン量が増加することが分かっています。喫煙習慣のある人は、禁煙することでジヒドロテストステロンの量を減らせる可能性があります。また、喫煙は頭皮の毛細血管を収縮させるため、頭皮の血流低下も引き起こします。血流が低下すると、必要な酸素や栄養素が運ばれなくなり、頭皮環境の悪化に繋がってしまうので、抜け毛・薄毛でお悩みの方は禁煙を検討しても良いでしょう。
クリニックで治療する
AGA治療を行えるクリニックでは、5αリダクターゼの働きを抑制する医薬品を処方してもらうことができます。また、5αリダクターゼの働きを抑制する内服薬以外にも、発毛効果のある外用薬や、頭皮に直接発毛成分や成長因子を注射するメソセラピーなど、さまざまな抜け毛・薄毛治療に対応できます。本格的にAGAを改善させたい方は、クリニックへの受診をおすすめします。
ジヒドロテストステロン以外の薄毛の原因
AGAの主な発症原因はジヒドロテストステロンの増加ですが、薄毛になる原因は、そのほかにもあります。ジヒドロテストステロンの増加以外の薄毛の原因は、以下のものがあります。
乱れた生活習慣
暴飲暴食や睡眠不足といった乱れた生活習慣は、薄毛の発症原因になることがあります。高カロリー高脂質の食事を摂り続けることで、血中コレステロールが増加し血流の悪化につながります。頭皮の血流が低下すると、毛髪の成長に必要な栄養素が行き届かなくなり、薄毛の原因になります。また、毛髪の成長を促すホルモンは睡眠時に多く分泌されるため、睡眠不足は薄毛の進行に繋がるでしょう。
薄毛と生活習慣の関係については、「薄毛は生活習慣で改善できる?薄毛を予防・改善するための生活習慣とは?」でも詳しく解説しています。
ストレス
過度なストレスによって、ホルモンバランスや自律神経の乱れが生じることも、薄毛の原因の1つです。ホルモンバランスや自律神経が乱れると、血管収縮を引き起こし毛髪の成長に必要な栄養素が行き届かず、薄毛の進行につながります。
頭皮環境の悪化
頭皮環境の悪化も薄毛の原因の1つ。頭皮の血行が悪かったり、皮脂・汚れの詰まりがあったりすると、毛髪の成長に悪影響を及ぼし薄毛の発症原因となることがあります。
まとめ
AGAの発症原因となるジヒドロテストステロンについて紹介しました。ジヒドロテストステロンは食事や禁煙といった生活習慣の見直しやクリニックでの治療によって減らせることが分かっています。すでに抜け毛・薄毛でお悩みの方や、家族親族に薄毛がいて遺伝することが心配な方は、専門医への早めの相談がおすすめです。専門医への相談は、クリニックでの受診だけでなく、オンライン診療で手軽に受診することもできるので、検討してみてください。
この記事の監修:
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会