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更新日:2024年02月15日

テストステロンは薄毛の原因?日常生活でもできる薄毛の改善方法も解説!

この記事のまとめ
  • 薄毛の原因はテストステロンではなく、テストステロンが変換されたジヒドロテストテロンである
  • ジヒドロテストステロンに変換させる5αリダクターゼII型は遺伝や加齢によって増加する
  • 生活習慣の見直しや服薬治療により、ジヒドロテストステロンを減らし薄毛を改善できる可能性がある

男性ホルモンの一種であるテストテロンが薄毛に関係していると聞いたことがある方もいるかもしれません。実際は、テストステロンは薄毛の直接的な原因ではありません。薄毛に関係するのは、テストステロンが5αリダクターゼと結びつくことによって生じるジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれる酵素です。 ここでは、テストステロンと薄毛の関係について解説します。本当の薄毛の要因を知り、適切な対処を行いましょう。

テストステロンは薄毛の原因ではない

テストステロンの値が高いからといって必ずしも薄毛になるわけではありません。まずはテストステロンがどんな役割をするホルモンなのかを知っておきましょう。

テストステロンはどんなホルモンなのか

男性ホルモンの一種であるテストステロンは、男性が、男性として生きていくうえでなくてはならない非常に大切なホルモンです。テストステロンの働きは次の3つです。

筋肉を増強する

テストステロンは筋肉増強に関係するホルモンです。さまざまな細胞へ結合して筋肉を太くするように指令を出す働きがあります。 20代などの比較的若いときには少しトレーニングをしただけで筋肉がつきやすいのに、40代頃になると若いころより筋肉がつきにくくなったと感じるのは、加齢によってテストステロンの分泌量が減少しているためといわれています。スポーツをしている方においてはホルモン補充療法などでテストステロンを補充して筋肉を増強させる方もいるようです。

筋トレと薄毛の関係については、「筋トレをするとはげるって本当?筋トレと薄毛の関係について解説」を参照してください。

参考:日本メンズヘルス医学会「メンズヘルスコラム

性欲・性衝動に関係する

テストステロンは、性欲や性衝動など性に関わる領域にも作用します。ドーパミンを増やして興奮作用をアップさせたり、勃起に関わったりする役割を担います。また、フェロモンを発生させ、性欲を引き起こすのもテストステロンの作用であるといわれています。

オナニーと薄毛の関係について詳しく知りたい方は、「オナニーでハゲるって本当?医学的根拠やハゲになる原因について解説」も参考にしてみてください。

精神面へ影響する

テストステロンは、大脳に作用し、前向きな思考や決断力に影響すると言われています。さらに、人の気力ややる気などの精神的な面にも影響を及ぼします。

薄毛の原因はジヒドロテストステロン

テストステロンの分泌量が多かったとしても、薄毛に直結するとは考えにくいです。薄毛の原因になるのは、テストステロンが5αリダクターゼという還元酵素によって変化してできた「ジヒドロテストステロン(DHT)」です。ここからはジヒドロテストステロンと薄毛の関係性を解説していきます。

ジヒドロテストステロンと薄毛の関係性

ジヒドロテストステロンとは、テストステロンが5αリダクターゼII型の作用で変換されたものです。このジヒドロテストテロンが、頭頂部と前頭部の毛母細胞にある受容体(レセプター)と結合すると、ヘアサイクルの成長期が短縮し、薄毛を引き起こします。そのためAGAにおいては、頭頂部と前頭部の髪が、ほかの部位と比べて薄くなっていくのです。

テストステロンの量に関わらず薄毛になる

薄毛の原因になるのは、ジヒドロテストステロンですので、テストステロンの分泌量が多いからといって必ずしも薄毛になることはありません。逆に、テストステロン量が極端に少ない場合には、それを補うために5αリダクターゼの活性が高まり、より薄毛になりやすくなると言われています。

また、テストステロン補充療法中の方が薄毛になったというような報告もありません。仮にテストステロンが少なくても、5αリダクターゼII型が多く存在していればジヒドロテストステロンに変換されてしまうため、結果的に薄毛にはなるのは免れられません。

ジヒドロテストステロンについては、「ジヒドロテストステロンとは?AGAとの関係性や抑制する方法を解説」でも詳しく解説しています。

テストステロンがジヒドロテストステロンに変換されやすくなる理由

テストステロンがどの程度ジヒドロテストステロンに変換されるのかは、人によって異なります。テストステロンがジヒドロテストステロンに変換されやすい理由は次のとおりです。

遺伝

テストステロンをジヒドロテストステロンに変換させてしまう5αリダクターゼの活性度、毛母細胞にある受容体の感受性は、遺伝的要素が非常に強いといわれています。特に、X染色体上に存在する遺伝情報が強く影響します。男性の場合、X染色体は母親からしか受け継ぐことはできません。

つまり、母方の家系にAGAの方がいる場合には、テストステロンがジヒドロテストステロンに変換されやすく、AGAとなる可能性が高いといわれています。男性ホルモンの受容体の遺伝子は隔世遺伝するともいわれているため、母方の祖父母にAGAの方がいる場合にはより一層、自分もAGAになるリスクが高いといえるのです。

加齢

テストステロンの分泌量は加齢に伴い減っていきます。一般社団法人日本内分泌学会によると、テストステロンの分泌量は20歳代をピークに徐々に減少していきますが、40歳代になるとさらに減っていきます。テストステロンが体内から減ってしまうと、5αリダクターゼII型の活性度がより高まるとされており、薄毛になるリスクも高まります。

参考:一般社団法人日本内分泌学会「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)

ジヒドロテストステロンへの変換を抑える方法

これまでに述べてきた通り、テストステロンがジヒドロテストステロンに変換されなければ、薄毛になるリスクは低いといえます。テストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのを抑えるためには、薬剤を用いた治療のほか生活習慣の見直しも有効です。推奨されるアクションについて、具体的に説明します。

内服薬による治療

テストステロンのジヒドロテストステロンに変換されるのを抑えるために、内服薬でコントロールする方法です。代表的な治療薬として、以下の2つの薬剤があります。

フィナステリドの内服治療

フィナステリドは、5αリダクターゼII型の活動を阻害する薬剤です。薬剤名は先発薬がプロペシア、後発薬がフィナステリドで、どちらも同様の効果があります。「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」によると、2年間および3年間の内服継続によって、軽度改善以上の効果が68~78%見られており、AGA治療においてフィナステリドの服用は推奨されています。 副作用には、性機能の低下として勃起機能不全、射精障害、精液量減少、リビドー減退がありますが、発症頻度は約1~5%程度です。

フィナステリドについて詳しく知りたい方は、「フィナステリドの効果とは?副作用や服用時の注意点についても説明」も参考にしてみてください。

参考:公益社団法人 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

デュタステリドの内服治療

デュタステリドもフィナステリド同様に、5αリダクターゼII型の活動を阻害する作用がある薬剤です。先発薬はザガーロ、後発薬はデュタステリドという名称です。デュタステリドは、I型とII型の両方の5αリダクターゼに作用します。I型は後頭部の薄毛の原因と考えられており、全体的に薄毛が気になる方は、ザガーロを選択する傾向にあるようです。

副作用としては、フィナステリドと同様に性機能低下などの症状が見られる可能性があります。発症頻度は約17%程度で、フィナステリドと比較すると副作用が出現しやすいです。

参考:グラクソ・スミスクライン株式会社「ザガーロカプセル 製造販売承認申請書添付資料

生活習慣の改善

ジヒドロテストステロンの生成を抑えるためには、薬を服用するだけではなく日常生活でもできることがあります。 実践すべきこととして、以下の3つを紹介します。

食生活を見直す

実は食事の中には、テストステロンがジヒドロテストステロンに変換するのを抑制する働きを持つものがあります。1つ目は、牡蠣やレバーといった亜鉛を多く含む食材です。亜鉛には、5αリダクターゼの働きを抑制する作用があり、摂取することで薄毛の予防になると言われています。

2つ目は納豆やキムチといった発酵食品です。発酵食品に含まれるアミノ酸、ポリグルタミン酸も、5αリダクターゼの働きを抑制する作用が期待されています。

3つ目はみかんの皮です。みかんの皮に含まれるd-リモネンにも、5αリダクターゼの働きを抑制する作用が期待されています。ジャムやクッキーなど加工をすれば、効率よく摂取できるかもしれません。

日常生活における食事のバランスを見直しつつ、これらの食材を積極的に摂取していきましょう。

積極的に有酸素運動をする

ジヒドロテストステロンは汗とともに体内から排出することができます。そのため、汗をかく有酸素運動を行うことで、薄毛の予防に繋がる可能性があります。 運動によってテストステロンの分泌量は増加するとされていますが、5αリダクターゼII型の量は変わらないため、薄毛を助長するリスクは低いといえるでしょう。

禁煙をする

体内のジヒドロテストステロンの量は喫煙をすると多くなることが分かっています。米国で1994年に実施された調査によると、喫煙者は非喫煙者と比較してジヒドロテストステロンの量が14%高いというデータがあります。 現在喫煙している方は、禁煙すれば薄毛の予防に繋がるかもしれません。

参考:National Library of Medicine「The relation of smoking, age, relative weight, and dietary intake to serum adrenal steroids, sex hormones, and sex hormone-binding globulin in middle-aged men

まとめ

男性ホルモンの一種であるテストステロンが体内に多いからといって、直接薄毛になるわけではありません。薄毛の原因は、テストステロンから変換されて作られる、ジヒドロテストステロン(DHT)です。ジヒドロテストテロンが体内で増えなければ、薄毛になるリスクを下げられるといえます。日常生活の見直しや内服薬による治療で、ジヒドロテストテロンを減らせ、薄毛になる可能性を低くできます。薄毛が気になるという方は、AGAクリニックもしくはオンライン診療を利用して、薬の服用を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修:

牧野 潤医師

慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会専門医。 医師免許取得後、株式会社ボストンコンサルティンググループにてヘルスケア・IT領域にて従事。 現在は慶應義塾大学医学部助教、美容医療を主としたJSKINクリニックを経営・監修、オンライン診療サービス「レバクリ」監修。

<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本乳癌学会