更新日:2026年07月29日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
「AGAの植毛で薄毛を根本的に解決したいけれど、費用やリスクが心配」という方もいるかもしれません。植毛は薄毛状態の頭皮に毛髪を移植する治療ですが、施術方法によって費用や傷跡の残り方などが異なるため、事前の理解が必要です。 この記事では植毛の種類や費用相場、メリット・デメリットなどを紹介します。植毛の前に検討したい投薬治療もあわせて説明しますので、薄毛治療で迷っている方は参考にしてください。
AGA(男性型脱毛症)の植毛とは、薄毛が気になる部分に毛髪を移植して見た目の改善を図る治療です。内服薬や外用薬が薄毛の進行を抑えることを目的とするのに対し、植毛はすでに薄くなった部位へ直接アプローチする点が特徴です。ここでは植毛の仕組みと、投薬治療との違いを説明します。
植毛は、AGAの影響を受けにくい後頭部や側頭部の毛髪を採取し、薄毛が気になる部分へ移植する治療です。なぜ後頭部などの毛を使うかというと、これらの部位の毛は脱毛因子の影響を受けにくく、移植後もその性質を保ったまま生え続けることが期待できるためです。
たとえば、後頭部の毛髪を前頭部の生え際や頭頂部に移植すると、定着後はその毛根が持つ正常なヘアサイクルを繰り返します。植毛はかつらや増毛のように外から補う方法とは異なり、自分の毛髪で薄毛部分を補う治療といえます。
植毛と投薬治療は、目的とアプローチが異なります。AGAの内服薬や外用薬は脱毛の進行を抑えたり発毛を促したりするのに対し、植毛は毛髪そのものを移植して、すでに薄くなった箇所を補う治療です。たとえば生え際がかなり後退してしまった部分は、薬だけでは元の状態に戻すことは難しい場合があります。
一方で投薬治療は手術を伴わず、費用も植毛より抑えやすい傾向があります。どちらが適しているかは薄毛の進行度や希望によって変わるため、両方の特徴を理解しておくことが大切です。
植毛は、移植する毛髪の種類によって自毛植毛と人工毛植毛の2つに分けられます。現在、医療機関で一般的に行われているのは自毛植毛です。人工毛植毛は効果や安全性の根拠が不十分なため、推奨されていません。
自毛植毛は、自分自身の毛髪を毛根ごと採取して移植する方法です。自身の髪の毛を用いるため、体の免疫機能がその髪を異物として認識しにくく、移植後に拒絶反応のリスクを下げられる点がメリットです。
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」では、自毛植毛術は82.5%以上の生着率が得られると報告されています。また、自毛植毛はAGA治療薬のフィナステリド内服やミノキシジル外用による効果が十分でない症例に対して、十分な経験と技術を有する医師が行う場合に限り、推奨するとのことです。つまり自毛植毛は、まず薬での治療を試したうえで検討する治療といえます。
人工毛植毛は、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維で作られた毛を植え込む方法です。新しく髪が生えるのを待つ必要がなく、施術直後から見た目を変えられる点はメリットとされてきました。しかし合成繊維は体にとって異物となるため、炎症や感染症などのトラブルが起こりやすい点が問題視されており、日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨されていません。日本国内で人工毛植毛に法的な規制はないものの、行っているクリニックは極めて少ないのが実態です。
自毛植毛の代表的な術式は、FUT法とFUE法です。それぞれ傷跡やダウンタイム、費用相場などに違いがあるため、特徴を理解して選ぶことが大切です。
FUT法は、メスを使って後頭部の頭皮を帯状に切り取り、そこから毛包を株分けして移植する方法で、「ストリップ法」とも呼ばれます。一度に多くのグラフトを採取できるため、広い範囲の薄毛に対応しやすい点が特徴です。一方で、以下のようなデメリットがあります。
広範囲の移植を考えている場合に選択肢となる術式です。
FUE法は、専用のパンチと呼ばれる器具で毛包を1つずつくり抜いて採取し、移植する方法です。メスを使わないため傷跡が点状で目立ちにくく、ダウンタイムが比較的短い傾向があります。ただし毛包を1つずつ手作業で採取するため、施術に時間がかかり、費用が高額になりやすい点に注意が必要です。傷跡をできるだけ目立たせたくない場合に適した術式でしょう。
FUT法・FUE法のほかにも、いくつかの術式があります。CHOI法(ニードル法)は、植毛針を使って穴開けと植え込みを同時に行う方法で、1本ずつ移植できるため生え際を自然に仕上げやすい特徴があります。ロボット植毛は、FUE法の採取工程を機械で補助する方法です。いずれも専門的な技術や特殊な機器を要する分 、費用が高くなりやすい傾向があります。クリニックによって扱う術式は異なるため、カウンセリングで確認するとよいでしょう。
植毛の費用は、術式や移植するグラフト数によって異なります。
AGAは医学的には「男性型脱毛症」という疾患に分類されますが、生命や健康に重大な影響をおよぼす疾患ではなく、主に整容的改善を目的とした治療とみなされるため、医療保険は適用されません。自由診療に該当するため、クリニックによって費用が異なります。
自毛植毛の費用は、基本治療費にグラフト数あたりの単価を加えて計算されることが一般的です。
| 術式 | 基本治療費の相場 | 1グラフト単価の相場 |
|---|---|---|
| FUT法 | 約20~25万円 | 約500~1,000円 |
| FUE法 | 約20~30万円 | 約800~2,000円 |
総額の目安は植毛する範囲によって異なります。たとえば、500グラフトであれば数十万円程度ですが、前頭部から頭頂部など2,000グラフトにおよぶ広範囲な治療では100万円を超えることもあります。
人工毛植毛は、1回あたりの費用は約10〜20万円と自毛植毛より抑えられるとされてきました。ただし合成繊維の毛は生え変わることがないため、抜けた分を補う定期的なメンテナンスが必要です。
そのため、維持費がかさみ、結果的に高額になることがあります。前述のとおり人工毛植毛はガイドラインで推奨されていないため、費用面だけで判断しないことが大切です。
植毛の費用が高くなりやすいのは、保険が適用されない自由診療であることと、手間のかかる施術であることが理由です。自毛植毛は毛包を採取して移植するまで一つひとつ手作業で行うため、医師や看護師の技術料が費用に反映されます。
また、自由診療はクリニックが料金を設定できるため、同じグラフト数でも金額に差が出ます。グラフト単価のほかに基本治療費や麻酔代、検査費などが別途かかる場合もあるため、契約前に総額を確認しましょう。
植毛には、定着後は自分の髪として生え続け、メンテナンスの手間が少ないというメリットがあります。また、薬では効果を感じにくかった部位に直接アプローチできるのも利点です。
自毛植毛のメリットは、移植した毛が定着すれば、自分の髪として生え続けることが期待できる点です。移植した毛は一度抜けたあとに新しく生え、その後は通常のヘアサイクルを繰り返します。定着後はほかの髪と同じように、カラーやパーマも楽しめるでしょう。
自毛植毛は、移植した毛が定着すれば、その後の継続的なメンテナンスがほぼ不要になります。人工毛植毛のように定期的な植え足しなどを続ける必要がないため、定期通院の必要がありません。
ただし、植毛は移植していない部分のAGAの進行を止めるものではありません。既存の毛が薄くなっていく可能性は残る点に留意が必要です。
植毛のデメリットとして、高額な費用や傷跡が残るリスク、合併症の可能性がゼロではないことなどが挙げられます。また、AGAの原因にはアプローチできないことも理解しておきましょう。
植毛は外科手術であるため、傷跡やダウンタイム、合併症のリスクがあります。FUT法では線状、FUE法では点状の傷跡が残る可能性があり、術後しばらくは腫れや赤みが出ることもあります。
また、まれに露出した傷口から雑菌が侵入し、頭皮の感染症(毛嚢炎など)を引き起こす可能性もあります。リスクをゼロにすることはできないため、施術前に医師から十分な説明を受けることが大切です。
植毛はAGAの原因にアプローチする治療ではありません。AGAは、男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼの作用でDHT(ジヒドロテストステロン)へと変換され、このDHTがヘアサイクルを乱すことで脱毛を引き起こします。
前述のとおり、植毛はDHTの働きそのものを抑えるわけではないため、移植していない部分の薄毛は進行する可能性があります。AGAの進行を抑えるためには、植毛後もAGA治療薬の使用を検討する必要があるでしょう。
植毛を検討する際、まずはAGAの内服薬や外用薬による治療を検討することが推奨されます。植毛が「毛を移動させる治療」であるのに対し、投薬は「薄毛の進行そのものを止める治療」であるためです。もし、AGAの進行を止めずに植毛だけを行うと、移植した髪の周囲が抜け続け、将来的に不自然なヘアラインになってしまうリスクも否定できません。
また、薬物治療を半年〜1年ほど継続することで、植毛をしなくても満足できる状態になる可能性もあるでしょう。
AGA内服薬には、フィナステリドとデュタステリド、ミノキシジルの3種類があります。
フィナステリドとデュタステリドは5αリダクターゼを阻害し、乱れたヘアサイクルを正常化して脱毛を抑制する薬です。5αリダクターゼにはl型とll型があり、フィナステリドはll型のみを阻害しますが、デュタステリドは両方を阻害します。
5αリダクターゼI型は側頭部や後頭部に多く、II型は前頭部と頭頂部に多く存在するとされているため、フィナステリドとデュタステリドでは作用範囲が異なると考えられています。
ミノキシジル内服薬の作用機序は完全には解明されていませんが、頭皮の血行促進やヘアサイクルの成長期の延長によって、発毛を促進する効果が期待される薬です。ミノキシジル内服薬は2026年6月時点では日本国内で未承認の薬であるため、医師の管理のもと輸入・使用されている点に留意しましょう。
AGAの治療で使われる外用薬(塗り薬)は、ミノキシジルが主流です。頭皮に直接塗ることで毛細血管を広げ、毛根に栄養を届けて発毛を促します。外用薬の場合、「M字の生え際だけ」「つむじ周辺だけ」など、気になる部分に狙いを定めて直接薬液を塗ることが可能です。
また、ミノキシジル外用薬はクリニックで処方されるだけでなく、ドラッグストアで購入できる市販薬(第1類医薬品)としても広く普及しています。

AGAの投薬治療では、内服薬と外用薬の併用も可能です。内服薬で脱毛を抑制し、外用薬で発毛を促すことができるでしょう。ただし、どの治療薬を使用するかは自己判断ではなく、医師との相談で検討することを推奨します。
ここでは、植毛に関する疑問や悩みについて、Q&A形式で解説します。
植毛をしたことは周りにバレますか?
傷跡や仕上がりは術式や個人差によりますが、術後1〜2週間程度は、傷跡やかさぶた、後頭部の刈り上げによって周囲に気づかれるリスクがあります。目立ちにくくする方法として、生え際などの移植部を髪で覆い隠せるように前髪を伸ばしておいたり、部分かつらを使用したりする方法があります。
植毛は何歳からできますか?
法律上の年齢制限はありませんが、18歳以上とするクリニックが多いようです。10代などの若年期はAGAの進行予測が立ちにくく、移植後に周囲の毛が薄くなり仕上がりに影響することがあります。将来の進行を見据えた計画が必要なため、医師と相談して判断することが大切です。
植毛後もAGA治療薬は続けたほうが良いですか?
既存の毛の薄毛進行を防ぐため、AGA内服薬の併用が検討されることがあります。植毛は移植していない部分のAGAの進行を止めるものではありません。AGA内服薬の使用をやめると、植毛した元気な髪だけが残り、その周囲にある元の髪が脱毛して不自然なヘアラインになる可能性があります。
そのため、AGAの投薬治療を続けて、既存の髪を維持させるのも一つの選択肢です。
AGA治療における植毛は、薄くなった部分に毛髪を移植する治療で、定着すれば自分の髪として生え続けることが期待できます。植毛には自毛植毛と人工毛植毛があり、自毛植毛はAGA治療の選択肢の一つとして推奨される一方、人工毛植毛は効果・安全性の面から推奨されていません。また、植毛はAGAの原因にアプローチする治療ではないため、まずは投薬治療で進行を抑える選択肢を検討してみてください。
なお、治療法の検討は、自己判断で行わないことが大切です。薄毛の原因や進行度には個人差があるため、自分に必要な治療は医学的な診断によって検討する必要があるでしょう。 「クリニックに足を運ぶのは少し恥ずかしい」「忙しくて時間が取れない」という方は、希望の場所から相談できるオンライン診療を検討してみてください。AGAは進行性の脱毛症なので、早めの相談がおすすめです。
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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