更新日:2026年07月01日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
「フィナステリドを女性が服用できないのはなぜ?」と疑問に思われている方もいるかもしれません。その理由は、ホルモンの影響を懸念するためです。 本記事では、フィナステリドを女性が服用してはいけない理由について解説します。女性にも使える薄毛治療法もあわせて紹介するので、気になる方はぜひ参考にしてください。
フィナステリドは、男性型脱毛症(AGA)治療薬であり、女性には投与すべきではないとされています。また、妊娠中または妊娠の可能性のある女性では禁忌です。 禁忌とされている理由は、服用によりホルモンに影響を及ぼす恐れがあるためです。日本皮膚科学会のガイドラインでも、フィナステリドは女性に「行うべきでない(推奨度D)」とされています。フィナステリドと似た作用をもつデュタステリドも、女性に禁忌のAGA治療薬として知られています。
一般的なクリニックであれば、フィナステリドを女性に処方する可能性は低いでしょう。また、フィナステリドは、クリニック以外に個人輸入などで入手できますが、女性の服用リスクを考慮すると推奨できません。
フィナステリドはどの女性にも禁忌とされていますが、特に、妊娠中や授乳中の女性の服用が厳禁とされています。それは、フィナステリドにDHT(ジヒドロテストステロン)を抑制する作用があるためです。
医薬品医療機器総合機構の「フィナステリド錠 添付文書」では、DHT抑制作用によって、男子胎児の生殖器官の発育に影響を与える可能性が示されています。
つまり、妊婦のお腹にいる男子胎児の安全性を考慮するために、禁忌とされているのです。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」
フィナステリドは「妊娠の可能性がなければ飲んでも良い」と考える人もいるかもしれません。しかし、実際は、閉経後の女性に対する有効性は十分に示されておらず、女性型脱毛症に対して推奨されていません。たとえば、National Library of Medicineの「Lack of efficacy of finasteride in postmenopausal women with androgenetic alopecia」という論文では、閉経後の女性にフィナステリドを投与してもプラセボ(偽薬)と有意な差が出なかったと報告されています。
また、日本皮膚科学会のガイドラインでも、妊婦のみならず女性全体に行うべきでないとしています。有効性だけでなく、安全性を考慮したうえで閉経後も服用を避けるべきといえるでしょう。
フィナステリドは女性の服用だけでなく、女性の接触も禁忌といわれています。それは錠剤が破損した際に、成分に触れると肌から吸収される恐れがあるためです。ただし、服用中の男性との接触に関しては、敏感になる必要はありません。
フィナステリドは、皮膚からも吸収される性質(経皮吸収)があるため、服用だけでなく、割れた錠剤などに素手で触れることも避けなければなりません。フィナステリドの錠剤は通常、フィルムでコーティングされていますが、割れたり粉砕されたりすると成分が露出することがあります。その場合、皮膚から有効成分が吸収される可能性があり、特に妊娠中または妊娠の可能性がある女性では注意が必要です。
もし誤って触れてしまった場合は、すみやかに石鹸と流水で十分に洗い流しましょう。万が一、誤飲した際は、専門のクリニックへ相談してください。
パートナーや家族が服用している場合は、フィナステリドをピルケースに入れて保管し、女性や子どもの手が届かない場所で管理してもらいましょう。
フィナステリドをパートナーの男性が服用している場合、キスや精液を介して女性に影響を与える可能性は低く、過度に心配する必要はないといわれています。2026年4月時点で、フィナステリドを服用する男性とのキスなどの接触によって、女性の体に影響を与えるという報告はありません。
また、医薬品医療機器総合機構の「フィナステリド錠 添付文書」によると、精液中への移行量も「極めて微量(投与量の0.00076%以下)」だと報告されています。
ただし、妊活中の男性の服用は避けるべきとするクリニックもあります。妊活中のフィナステリド服用は、胎児への安全性を考慮して検討するべきでしょう。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」
女性の薄毛の原因がホルモンの影響であれば、以下の治療法が考えられます。
ここでは、女性が使える薄毛治療について、それぞれを解説します。
ミノキシジル外用薬は、男女ともに使用されている薄毛治療薬です。ミノキシジルの作用は、完全には解明されていませんが、以下の働きが期待できるといわれています。


また、ミノキシジルには、患部に直接塗布する外用薬と飲む内服薬があります。外用薬は厚生労働省から承認を受けていますが、内服薬は承認されていません。内服薬を利用する場合は、必ず医師と相談したうえで、医師の管理のもと使用しましょう。
スピロノラクトンは、高血圧やむくみの治療薬であり、近年では女性の薄毛やニキビの治療にも転用されている薬剤です。スピロノラクトンの主な働きは、利尿作用によって血圧を下げることです。ほかにも、男性ホルモンであるアンドロゲンの働きを抑える作用があり、この点が女性の薄毛治療に期待されています。
女性の薄毛でも男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)の影響を受ける場合があり、スピロノラクトンを服用すれば、DHTの働きを抑えられる可能性があります。
スピロノラクトンは女性の薄毛治療で使用されることがありますが、妊娠中は使用できません。
なお、スピロノラクトンは高血圧の治療薬として厚生労働省に承認されていますが、薄毛治療薬としては承認されていません。薄毛治療に使用される際は、保険適応外処方となります。
LEDおよび低出力レーザー照射は、医学的根拠のある薄毛改善の治療法です。特定の波長の光を照射することで毛包細胞へ作用し、発毛や毛髪成長を促進する可能性があると考えられています。
副作用には、皮膚の赤みやかゆみなどが挙げられます。AGA治療薬などと比べて、副作用が少ないのが特徴です。
日本皮膚科学会のガイドラインでも「行うよう勧める(推奨度B)」とされています。性別に関係なく使用できる治療法なので、女性の薄毛治療の貴重な選択肢の一つです。
| 疾患名 | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 円形脱毛症 | 体内の免疫反応が毛包を攻撃することで起こる自己免疫疾患 | 境界がはっきりした円形や楕円形の抜け毛 |
| フケ(鱗屑)を伴う抜け毛 | 角質異常やマラセチアなどの常在真菌による頭皮環境の悪化 | 頭皮を覆うほどの大量の乾燥したフケと、頭皮のかゆみや乾燥 |
| 鉄欠乏性貧血 | 鉄分の不足 | めまいや立ちくらみ、疲労感などの全身症状 |
| 牽引性(けんいんせい)脱毛症 | ヘアスタイルによる頭皮への負担 | 髪を結ぶ女性に多くみられ、年齢に関係なく発症 |
| 甲状腺機能の異常 | 新陳代謝などに関連する甲状腺ホルモンの増減 | 橋本病の症状には倦怠感やむくみ、寒がりなど、バセドウ病の症状には動悸や発汗、体重減少など |
女性の薄毛の原因には、ホルモンの影響以外にも以下の可能性があります。
自身の薄毛がホルモンの影響だと決めつけず、ほかの可能性を探ってみるのも良いでしょう。薄毛の原因を自己判断せず、医師の診察を受け、特定したうえで治療を進めることが大切です。
円形脱毛症は、自身の免疫反応が毛包を標的として攻撃する自己免疫性疾患と考えられています。境界がはっきりした円形や楕円形の抜け毛が特徴です。徐々に髪が減っていくのではなく、一気に髪が抜けるため、自分では気づきにくく、誰かに指摘されて気づくケースもあります。痛みなどは伴いません。
抜け毛が1箇所だけ生じる単発型や複数生じる多発型、全体から毛が抜ける全頭型などに分類されることがあります。しかし、それは便宜的な分類であり、症状は連続して変化することがあります。1箇所だけの脱毛だから単発型なのだと判断しても、徐々に多発型、全頭型などに発展していく可能性があるため、初期症状で治療を開始することが大切です。
フケを伴う抜け毛の病態については明確ではなく、脂漏性皮膚炎との関連が指摘されています。一般に粃糠性(ひこう)脱毛症と呼ばれることがありますが、これは国際的な医学文献等で広く認知された病名ではなく、実際には頭皮の慢性炎症に伴う休止期脱毛の一種と考えられています。頭皮を覆うほどの大量の乾燥したフケと、頭皮のかゆみや乾燥が特徴です。部分的な抜け毛ではなく、全体的に髪の量が減っていく傾向があります。
脂漏性皮膚炎による脱毛症と勘違いされることもありますが、フケを伴う抜け毛は乾燥したフケ、脂漏性皮膚炎は脂っぽいフケという点に違いがあります。混同しないように注意しましょう。
フケを伴う抜け毛を治療する際は、ステロイドの外用薬や抗真菌薬などが処方されるのが一般的です。
鉄欠乏性貧血は体内で鉄分が不足することで、血液中のヘモグロビンが減少した状態を指します。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ働きがあり、減少すると髪の成長にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
抜け毛を引き起こすだけでなく、めまいや立ちくらみ、疲労感など全身の症状に現れやすいのが特徴です。治療の際は、鉄剤が処方されます。普段から食事で鉄分を摂取できるよう心掛けることが大切です。なお、鉄分を多く含む食材は、レバーや牛肉の赤身、まぐろなどです。
フィナステリドは女性型脱毛症に対して推奨されておらず、特に妊娠中または妊娠の可能性がある女性では禁忌です。強力な男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)を抑制する作用が、妊婦のお腹にいる男子胎児の生殖器の発育を妨げる恐れがあるためです。また、閉経後の女性に対しても、フィナステリドの有効性や安全性は確立されていません。
さらに、フィナステリドは成分が皮膚から吸収される性質をもつため、割れた錠剤に直接触れることも控えるべきです。
女性の薄毛治療には、ミノキシジルやLEDおよび低出力レーザー照射など、フィナステリドとは違う治療法を選びましょう。
女性の薄毛の原因はホルモンの影響だけでなく、多岐にわたります。まずは医師の診察を受け、正しく原因を特定することが大切です。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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牽引性脱毛症とは、ヘアスタイルによる頭皮への負担が原因で、特定の部位の髪が抜け落ちる疾患です。たとえば、強く髪を引っ張ってまとめたポニーテールやお団子ヘア、編み込みなどの髪型を常時行うことで発症する可能性があります。髪を結ぶ機会の多い女性によくみられます。年齢に関係なく発症し、若い女性にも注意が必要です。
牽引性脱毛症は一時的な脱毛症で、初期段階であれば、髪型を変えることで自然治癒する場合があります。予防法として、低めの位置でゆるく髪をまとめたり、髪を結ばない日をつくったりなど、頭皮への負担を減らす工夫が必要です。
甲状腺の異常により、抜け毛が発生する場合があります。甲状腺の役割は、新陳代謝などに関連するホルモンを分泌することです。
甲状腺ホルモンの分泌が不足する橋本病などにかかると、体の代謝が低下し、毛母細胞へのエネルギー供給も減少します。その結果、髪が十分に成長できず、抜け毛を招く恐れがあるのです。抜け毛以外に、倦怠感やむくみ、寒がりなどの症状が考えられます。
一方、甲状腺ホルモンの過剰分泌を引き起こすバセドウ病などは、代謝が過度に活発になる疾患です。代謝の活発化によって、ヘアサイクルが加速し、毛が未熟なまま、本来なら数年かかる成長期を終えます。その結果、抜け毛の増加へと発展することがあります。抜け毛以外に、動悸や発汗、体重減少などの症状が考えられるため、全身症状が出た際はすみやかに検査を行いましょう。