更新日:2026年07月30日


この記事の監修
慶應義塾大学医学部卒業。日本形成外科学会認定専門医。 医師免許取得後、外資系経営コンサルティング企業のヘルスケア・IT領域にて従事。 慶應義塾大学医学部助教を経て、美容医療を主としたJSKINクリニック、及びオンライン診療サービス「レバクリ」監修。
<所属学会> 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS)
「AGA治療でうつになる」という情報を見て、治療をためらう方もいるかもしれません。添付文書には抑うつ症状の報告がありますが、薬との因果関係は明確になっていません。AGA治療薬で抑うつ症状の副作用が報告されているのは、フィナステリド(頻度不明)とデュタステリド(1%未満)です。AGA治療薬でうつになると言われる背景には、薄毛の心理的負担や副作用への思い込みなどが考えられます。
AGA(男性型脱毛症)の治療薬と抑うつ症状について、現時点で明確な因果関係は示されていません。たしかにフィナステリドなどの添付文書には抑うつ症状の報告が記載されていますが、これは必ずしも「薬が原因でうつになる」ということではありません。2025年に発表された大規模研究でも、フィナステリドの使用とうつ病発症の有意な関連は確認されませんでした。
フィナステリドの添付文書には、抑うつ症状が「頻度不明」の副作用として記載されています。「頻度不明」とは、報告はあるものの発生する割合がはっきりとわかっていない状態です。 あわせて、本剤との因果関係は明らかではないとしたうえで、自殺念慮や自殺企図などの報告例も記載されています。
添付文書への記載はあくまで「報告された事象を集めたもの」であり、重要なのは薬が直接の原因と証明されたわけではないという点です。「記載がある=必ず起こる」わけではないですが、報告がある以上は注意を払う必要があります。気分変化があれば使用を中止して速やかに医師へ相談するようにしましょう。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」
2025年に行われた英国の医療データベースを使った大規模研究では、フィナステリドの使用とうつ病や自殺リスクとの有意な関連は示されていません。
ただし、一部では精神的な副作用との関連を指摘する報告もあり、現時点では「関連を示す報告」と「関連を否定する報告」が併存している状態です。
参考:National Library of Medicine「Finasteride Use Does Not Lead to Depression or Suicide: Insights From a Large‐Scale Cohort Study and Mendelian Randomization Analysis」
気分の落ち込みが報告される背景には、薬以外の要因も関わっていることがあります。薄毛そのものによる心理的な負担や、生活環境の変化、もともとの精神状態などが影響しているパターンもあるでしょう。 たとえば、薄毛が気になって自信を失い、気分が沈むなどです。これは薬を服用していなくても起こり得ます。
また、「副作用が怖い」という不安が体調に影響することもあります。こうした複数の要因が絡むため、薬だけが原因で気分に変化が現れると断言するのは困難です。変化を感じたときは自分で結論を出さず、医師に相談することが大切です。
AGA治療薬は種類によって、精神面に関する添付文書の記載が異なります。主に使われるフィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルの3つについて、それぞれの記載を以下にまとめました。
| 治療薬 | 主な作用 | 抑うつ症状に関する添付文書の記載 |
|---|---|---|
| フィナステリド | 5αリダクターゼII型の阻害 | 抑うつ症状(頻度不明) |
| デュタステリド | 5αリダクターゼI・II型の阻害 | 抑うつ気分(1%未満) |
| ミノキシジル外用薬 | 血管拡張 | 記載なし |
フィナステリドの添付文書には「抑うつ症状」と記載があり、発現率は頻度不明です。デュタステリドには「抑うつ気分」と記載があり、発現率は1%未満です。ミノキシジル外用薬には、抑うつ症状を含む精神症状の記載そのものがありません。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠 添付文書」
フィナステリドの添付文書には、抑うつ症状が頻度不明の副作用として記載されています。フィナステリドは5αリダクターゼII型を阻害し、テストステロンからDHT(ジヒドロテストステロン)への変換を抑えることで、AGAの進行を遅らせます。DHTはAGAの原因物質です。
添付文書では、抑うつ症状のほか、本剤との因果関係は明らかではないとしたうえで自殺念慮・自殺企図・自殺既遂の報告が記載されています。
また、注意が必要な患者として、うつ病やうつ状態、その既往歴がある人が挙げられています。該当する場合は、診察時に医師へ伝えておきましょう。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」
デュタステリドの添付文書では、抑うつ気分が「1%未満」の副作用として記載されています。デュタステリドは5αリダクターゼI型とII型の両方を阻害し、フィナステリドより広い範囲でDHTの産生を抑える薬です。 フィナステリドの「頻度不明」とは異なり、1%未満という頻度の目安が示されています。しかし、フィナステリドのように自殺念慮などに関する記載やうつ病患者に対する注意もありません。服用中に気になる症状があれば、医師に相談することが大切です。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠 添付文書」
ミノキシジル外用薬の添付文書では、精神症状に関する記載は見られません。ミノキシジルは血管を広げて毛包を刺激し、発毛をサポートする成分で、5αリダクターゼを阻害する薬とは作用の仕組みが異なります。
ミノキシジル外用薬で報告される主な副作用は、かゆみや赤み、ふけといった頭皮の症状です。なお、ミノキシジルの内服薬は国内未承認薬であり、めまいや動悸、多毛症などの副作用が生じることがあります。内服薬を使う場合は、医療機関の管理のもとで処方を受けることが前提です。
AGA治療薬と抑うつ症状の関係には、まだわかっていないことが多くあります。ただし、なぜ気分の落ち込みが報告されるのかについて、以下のような説が考えられています。
いずれも確立した結論ではありませんが、背景を知ることで不安を整理しやすくなります。
1つ目は、DHT(ジヒドロテストステロン)の抑制で脳内のバランスに影響を与える可能性があるという説です。フィナステリドやデュタステリドが抑制するDHTは、脳内で働く神経に関わる物質の材料にもなると考えられています。そのため、DHTが減ることで気分の安定に関わるバランスが変化し、精神的な影響が出る可能性が指摘されています。ただし、これはあくまで一つの可能性であり、研究で確立された知見ではありません。
2つ目は、薄毛そのものが気分の落ち込みにつながるという考え方です。髪の悩みは見た目に直結するため、自信の低下や対人面でのストレスを感じる人もいます。 こうした心理的な負担は、薬を使っていなくても起こり得るものです。
また、AGA治療を始めると、治療がうまくいくのかという新たな不安が生まれることもあります。焦らずに治療を継続し結果が伴えば、薄毛に対する心理的負担が軽減する可能性があります。
3つ目は、ノセボ効果と呼ばれる現象です。「この薬で副作用が出るかもしれない」という不安が、実際の体調の変化として現れることを指します。 ネットやSNSでは、ネガティブな体験談ほど目に留まりやすい傾向があります。事前に「うつになるらしい」という情報に強く影響されると、気分の落ち込みにつながることもあるでしょう。情報は判断材料の一つとしてとらえ、過度に振り回されないことも、治療を続けるうえで大切です。
うつ病で治療中の場合、AGA治療を受けられるか不安に思うこともあるでしょう。うつ病の治療中だからといって、AGA治療を受けられないわけではありません。ただし、服用中の薬や体調によっては注意が必要なため、医師の判断が必須です。
AGA治療薬と抗うつ薬は、併用可能なものもあります。しかし、薬の種類や体質によっては相互作用の可能性があるため、必ず医師に相談したうえで服用を決めてください。
フィナステリドやデュタステリドは主に肝臓で代謝される薬です。同じく肝臓で代謝される薬と一緒に使う場合は、影響し合う可能性があります。
また、デュタステリドはCYP3A4という酵素の働きを阻害する薬と併用すると、血中濃度が上がるおそれがあります。一部の抗うつ薬にはCYP3A4を阻害する作用が含まれているため、注意が必要です。さらに、ミノキシジル内服薬との併用は、抗うつ薬の種類によって、血圧や心拍数などに影響を与える可能性があります。
そのほかにも日常的に飲んでいる薬があれば、診察時にすべて伝えることが大切です。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠 添付文書」
過去にうつ病などの精神疾患と診断されたことがある方や、現在治療中の方は、AGA治療の初診時に、精神科・心療内科での治療歴や現在の服薬状況を伝えておきましょう。
フィナステリドの添付文書では、うつ病やうつ状態、その既往歴がある人について注意が必要な患者として挙げられています。こうした情報は、医師が治療方針を判断するうえで重要です。正直に伝えることで、より安全に治療を進められます。
AGA治療中に気分の変化を感じたとき、どう対応すれば良いか迷う方もいるでしょう。大切なのは、自分だけで判断せず、医師とともに対応を決めることです。ここでは、気分の落ち込みを感じたときに意識したい2つのポイントを紹介します。
気分の変化を感じても、自己判断で急に服用をやめることは避けましょう。AGA治療薬は、続けることで効果が保たれる薬です。急に中止すると、抜け毛の進行に影響が出る可能性があります。
気分の落ち込みの背景には、薬以外の要因が関わっていることもあります。まずは医師に状況を伝えることが先決です。やめるかどうかも含めて、医師と相談しながら決めていきましょう。
ただし、強い抑うつ症状や自殺念慮などが現れた場合は速やかに服用を中止し、医師へ相談してください。
気分の落ち込みや意欲の低下、眠れないなどの変化が続く場合は、速やかに医師へ連絡してください。早めに相談することで、状態に応じた対応を受けやすくなります。
フィナステリドの添付文書でも、抑うつ症状や自殺念慮が現れた場合は服用を中止し、速やかに医師などに連絡するよう記載されています。小さな変化でも、気になることがあれば遠慮せず報告しましょう。
なお、こころの不調が続く場合は、ほかの医療機関や相談窓口を頼ることも一つの方法です。
参考:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」
AGA治療薬の副作用には、頻度不明や1%未満で抑うつ症状が含まれています。しかし、薬と抑うつ症状の因果関係に関する明確な結論は現時点では出ていません。
気分の落ち込みの背景には、薄毛そのものの心理的負担やノセボ効果など複数の要因が関わっている可能性があります。大切なのは、不安があれば医師へ相談することです。服用中に気になる変化があれば、速やかに医師へ報告しましょう。レバクリを通じたオンライン診療なら自宅にいながら、気軽に医師へ相談が可能です。
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「フィナステリド錠 添付文書」
National Library of Medicine「Finasteride Use Does Not Lead to Depression or Suicide: Insights From a Large‐Scale Cohort Study and Mendelian Randomization Analysis」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠 添付文書」
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AGA治療は、主に内服薬・外用薬で行われます。
| 代表的な成分 | 分類 | 主な効果 |
|---|---|---|
| フィナステリド・デュタステリド | 内服薬 | 抜け毛の進行を食い止める |
| ミノキシジル | 内服薬・外用薬 | 毛包を活性化させ発毛を促す |
治療期間について
効果実感には個人差がありますが、ヘアサイクル改善のため3ヶ月〜半年ほどの継続が推奨されます。
費用について
AGA治療は、保険適用外の「自由診療」です。対面診療では、薬代(1ヶ月数千円ほど)の他に、初診料や診察料がかかる場合もあります。
治療の継続には期間と費用に加え、定期的な通院が必要です。時間や費用、人目などの通院の負担が、忙しい方にとって課題となる場合があります。
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